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知られざるコンピューターの思想史 | 小山虎

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インターネットや人工知能など、現代の情報テクノロジーを築いた知の根幹には、アメリカに流れ着いた意外な哲学的潮流の開花があった…? 二度の大戦をまたぐ20世紀社会の激動を背景に、そ… もっと読む
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#知られざるコンピューターの思想史

ウィーンからニュージャージーへ〜分析哲学へと向かうアメリカ哲学の道のり|小山虎

明けましておめでとうございます。今年もPLANETSをよろしくお願いいたします。新年最初の配信は、分析哲学研究者・小山虎さんによる、現代のコンピューター・サイエンスの知られざる思想史的ルーツを辿る連載の第19回。 ついに最終回となる今回は、1984年に米ラトガース大学で開催されたアメリカ哲学の重要会議「デイヴィドソン会議」の背景をめぐり、そこに流れ着いたドイツやオーストリアの知のバトンがどのように受け継がれてきたのかを辿ります。なぜアメリカが今日のコンピューター技術の隆

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コンピューター史に名を残すもう一人の「ノイマン」〜イギリスのコンピューター黎明期 |小山虎

分析哲学研究者・小山虎さんによる、現代のコンピューター・サイエンスの知られざる思想史的ルーツを辿る連載の第18回。 今回は、英国で活躍した「もう一人のノイマン」の生涯について。ポーランドにルーツを持つユダヤ系イギリス人数学者マクスウェル・ニューマン。ウィーン留学で最先端の記号論理学を学んだ彼が、オーストリア的な知をケンブリッジに播種したことでアラン・チューリングらに薫陶を与え、いかにコンピューター科学の黎明に貢献したかを辿ります。 小山虎 知られざるコンピューターの思

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「西海岸のハーバード」を目指したスタンフォード大学の歩み |小山虎

分析哲学研究者・小山虎さんによる、現代のコンピューター・サイエンスの知られざる思想史的ルーツを辿る連載の第17回。 東海岸のMITにならぶ存在として、第二次世界大戦後の西海岸にコンピューター・サイエンスの一大研究拠点を築き上げたスタンフォード大学。もともとは研究大学ですらなかった小さな私立大学がMITと同様に「アメリカン・ドリーム」を成し遂げ、シリコンバレーの礎を築いていく過程と、その波の中で科学哲学・分析哲学が果たした役割について光を当てていきます。 小山虎 知られ

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「大学」でない大学MIT〜戦争によってもたらされたアメリカン・ドリーム |小山虎

分析哲学研究者・小山虎さんによる、現代のコンピューター・サイエンスの知られざる思想史的ルーツを辿る連載の第16回。 今日では、コンピューター・サイエンスをはじめ世界の科学技術研究を牽引するエリート大学として名高いMIT(マサチューセッツ工科大学)。19世紀後半の開学以来、ドイツ型の研究大学を目指した創立者ウィリアム・ロジャースの理念はなかなか実現の契機に恵まれず、「大学」としては二流以下の地位に甘んじてきました。しかし2度の世界大戦による軍学複合の波をとらえた工学者ヴァ

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プリンストンで出会った3名が再会した会議と再会しなかった会議〜人工知能の誕生|小山虎

分析哲学研究者・小山虎さんによる、現代のコンピューター・サイエンスの知られざる思想史的ルーツを辿る連載の第15回。 今ある情報社会の欠かせないインフラになっている人工知能(AI)技術。その確立の立役者となったアメリカ生まれの3名の科学者、ジョン・マッカーシー、マーヴィン・ミンスキー、アレン・ニューウェルもまた、中欧から落ちのびてきたフォン・ノイマン、ゲーデル、タルスキと同じく、1949年にプリンストンで出会っていました。第二次世界大戦後、軍産学複合体制によるコンピュータ

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アナログからデジタルへ〜「ノイマン型」コンピューターの誕生|小山虎

分析哲学研究者・小山虎さんによる、現代のコンピューター・サイエンスの知られざる思想史的ルーツを辿る連載の第14回。 現在では「コンピューターの父」として知られるジョン・フォン・ノイマン。ただし、最初期の電子計算機であるENIACやEDVACの開発への関与は限定的で、ノイマン一人が名声を受けることへの疑義や軋轢は当初からありました。そうしたなか、ノイマン自身が果たしたコンピューター黎明期における功績の本質とは何だったのかを改めて探ります。 小山虎 知られざるコンピュータ

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どうしてフォン・ノイマンとゲーデルはアメリカにやってきたのか──アメリカ学問の中心地プリンストンの誕生|小山虎

分析哲学研究者・小山虎さんによる、現代のコンピューター・サイエンスの知られざる思想史的ルーツを辿る連載の第13回。 ヒトラーのナチス総統への就任がせまる1930年代、いち早く渡米してアメリカの学術研究の中心地になるプリンストン高等研究所に所属することになったフォン・ノイマンとゲーデル。二人をこの地に招き寄せ、結果的にのちのコンピューター技術発展の立役者になった先達の数学者らの足跡を追いかけます。 小山虎 知られざるコンピューターの思想史──アメリカン・アイデアリズムから分析

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アメリカでのタルスキ〜幻の「タルスキ型」コンピューター|小山虎

分析哲学研究者・小山虎さんによる、現代のコンピューター・サイエンスの知られざる思想史的ルーツを辿る連載の第12回。 ナチス・ドイツのポーランド侵攻で第二次世界大戦が勃発する直前、統一科学国際会議への出席のために渡米したタルスキ。もはや帰国もかなわず、アメリカの研究機関に職を求めて東西海岸を流転した大数学者の足跡が、分析哲学という知の端緒になったほか、フォン・ノイマンのそれと競うかたちで、「幻のコンピューター構想」を生み落とします。 小山虎 知られざるコンピューターの思

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ニューヨークの大学とユダヤ人哲学者の系譜|小山虎

分析哲学研究者・小山虎さんによる、現代のコンピューター・サイエンスの知られざる思想史的ルーツを辿る連載の第11回。 19世紀後半の中東欧の動乱を受け、新大陸に殺到したユダヤ系移民たち。その中の一人に、のちにアメリカを代表するSF作家となるアイザック・アシモフの姿もありました。彼が直面したニューヨーク近郊の大学での「ユダヤ人問題」を背景に、科学と哲学を架橋する知的土壌が築かれていくさまを活写します。 小山虎 知られざるコンピューターの思想史──アメリカン・アイデアリズム

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新世界より〜オーストリアからアメリカへと渡った移民たち | 小山虎

分析哲学研究者・小山虎さんによる、現代のコンピューター・サイエンスの知られざる思想史的ルーツを辿る連載の第10回。前回までに辿ったアメリカにおけるドイツ的な知の風土の移植に対し、いよいよオーストリア的な知の流転にスポットを当てます。故国の動乱を追われたオーストリア帝国諸邦の移民たち、とりわけ最も「オーストリア的」な民としてのユダヤ系移民は、新世界に何を求めたのか? 小山虎 知られざるコンピューターの思想史──アメリカン・アイデアリズムから分析哲学へ 第10回 新世界より〜オ

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アメリカにとって大学とは何か〜アメリカにおける大学観の変遷 | 小山虎

分析哲学研究者・小山虎さんによる、現代のコンピューター・サイエンスの知られざる思想史的ルーツを辿る連載の第9回。これまで中欧からアメリカに渡った学問や思想の潮流や担い手たちを辿ってきましたが、今回は知の生産を担う「大学」制度に光を当てます。宗主国イギリスのカレッジ制度を範に出発したアメリカの大学は、南北戦争後の「ドイツ化」の波を経て、次第に独自の発展を遂げていきます。 小山虎 知られざるコンピューターの思想史──アメリカン・アイデアリズムから分析哲学へ 第9回 アメリカにと

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理想主義、観念論、そしてヘーゲル〜19世紀のアメリカ哲学 | 小山虎

分析哲学研究者・小山虎さんによる、現代のコンピューター・サイエンスの知られざる思想史的ルーツを辿る連載の第8回。いよいよ今回からは舞台を新大陸に移し、コンピューターの開発を可能にした知的風土に迫っていきます。すべての始まりは、19世紀革命期のリベラル派ドイツ移民が流れ着いたアメリカ中西部、「セントルイスのヘーゲル主義者たち」の出会いにありました。 小山虎 知られざるコンピューターの思想史──アメリカン・アイデアリズムから分析哲学へ  第8回 理想主義、観念論、そしてヘーゲル

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インタールード〜年表と人物相関図から | 小山虎

分析哲学研究者・小山虎さんによる、現代のコンピューター・サイエンスの知られざる思想史的ルーツを辿る連載の第7回。 今回はインタールードとして、世界大戦期のオーストリア諸邦とドイツを中心に、中欧における科学と哲学の交錯を追ってきたこれまでの流れを図解で振り返ります。 知られざるコンピューターの思想史──アメリカン・アイデアリズムから分析哲学へ 第7回 インタールード〜年表と人物相関図から | 小山虎  前回をもって中欧圏を主舞台にした本連載の「第1部」も一区切りとなり、次回か

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国際政治に振り回されたポーランドの論理学 | 小山虎

分析哲学研究者・小山虎さんによる、現代のコンピューター・サイエンスの知られざる思想史的ルーツを辿る連載の第6回。周囲の大国によって領土割譲を繰り返されてきたポーランドの不運な歴史が、アメリカに落ち延びた数学者アルフレッド・タルスキら、オーストリア的な知の継承者たちの運命をいかに変えたのか。戦間期に花咲いた「ルヴフ・ワルシャワ学派」の足跡を中心に辿ります。 知られざるコンピューターの思想史──アメリカン・アイデアリズムから分析哲学へ 第6回 国際政治に振り回されたポーランド

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