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リフォームの意義

リフォームすることの意義は、「使えるものは使う」ことだと思う。

既存のものをどこまで再利用するのかによって程度は変わってきますが、少なくとも再利用する分だけ生産コストを下げ、新しく作った場合に必要なエネルギーの使用を抑えることができる。当り前の話で、作るエネルギーと使う資源を減らすことが出来るので、家に限らず、ものを長いこと大切に使う方が地球環境にとっては負担が少ない。

ここで、家が建てられてからどのくらいの期間使われているのかを国別に比べてみると、日本の住宅の利活用期間はアメリカの約半分、イギリスの4割にも満たない。つまり、日本の住宅建築は他国に比べ寿命が短いということになる。

続けて、人口当りの新設住宅着工戸数の比較をみると、先述の利活用期間とは反比例して、アメリカの約2倍、イギリスの約2.5倍となっていて、日本は他の先進国に比べて住宅を激しくスクラップ&ビルドしている。つまり、日本人は家を大切にしていないということがいえる。

一方、住宅への投資額の比較をみてみると、日本人は他国に比べ住宅にお金を掛けていないことがわかる。長く使えないものに掛けられる予算は少ないということなのだろう。

これらの数字は、日本人が安普請の家をどんどん使い捨てている状況を鮮明に表しているといえる。

どんどん使い捨て続けているのには理由があって、その大きな原因の一つは「耐用年数」であろう。耐用年数とは、資産の種類や構造、用途ごとに法律で定めた効用持続年数のことで、資産の価値を明らかにすることを目的としている。資産の減価償却は耐用年数で割って費用分配される。つまり耐用年数=資産の寿命ということになる。
資産である建物の耐用年数は、構造によって以下のように設定されている。

軽量鉄骨プレハブ造(肉厚3㎜以下):19年
軽量鉄骨プレハブ造(肉厚3〜4㎜以下):27年
重量鉄骨造(肉厚4㎜超):34年
鉄筋コンクリート造:47年
木造:22年

そして、これら5つの耐用年数の平均値は29.8年となり、日本の建物の平均寿命32.1年に極めて近い値となっているのです。したがって、耐用年数が、
「耐用年数が過ぎる → 建物の価値がなくなる → 壊す」
というプロセスを助長する大きな要因になっていることは間違いないと考えられる。

不動産取引においては、価値のない建物は壊すのにもお金が掛かるので当然敬遠され、まだ使えるのに壊して更地にするケースは多い。建物が取り壊される理由は、建物そのものの寿命ではなく経済的理由によるところが大きく、事実RC造の耐用年数は47年とされているが、強度的には65年以上〜100年以上ももつと言われている。
欧米諸国では、古くて状態のいい建物の資産価値が上がることは常識。築年数以外による建物に対する評価基準の確立がスクラップアンドビルドの軽減にとって重要であることは間違いないが、同時に、リフォームという選択肢の可能性を広げることも、この勿体ない悪循環への抑止に繋がるのではないだろうか。

住宅金融支援機構による2019年のアンケート結果では、住宅事業社選びで重視するポイントで「建物の性能」を選択した一般消費者が最も重視するポイントは「高耐久性」となっている。つまり世の中は、「丈夫な家」を求めているということになる。ここで言われている耐久性というのは、災害にあっても壊れないような丈夫な家というニュアンスが大きいのかもしれないが、丈夫であるということは同時に長く使えるということでもあり、日本のスクラップアンドビルドな住宅事情は、消費者のニーズから生まれてきているものではないことがわかる。

使えるものは上手く再利用することが環境保護に有効であることに疑う余地はない。地球環境悪化の危機的状況からいってもCO2排出削減は急務であり、国の全エネルギー消費量における建設業の占める割合を考えても、壊さず使うことでゴミの排出とその処分に関わるエネルギーをも減らせることができる、既存住宅のリフォームという手段が環境問題の観点で有効なのは間違いない。

そして、リフォームのもう一つの大きなメリットは時間と共に養われてきた町並みや風景を引き継ぐことができるということではないだろうか。
急速な街並みの均一化が進む中、外観を変えなくても機能を一新することができるというリフォームの特性が果たす役割は大きい。人々に愛される美しい街並みを作っていくことは、そこに住んでいる住民にとってはもちろんのこと、外から訪れる人々にとっても重要なファクターであり、観光的な側面において有益なことは言うまでもない。

したがって、リフォームの本質的な意義はつまり、引き継ぎ大切に長く使うことだと思うわけです。

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