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キャンプの火と光

キャンプであれほど焚火がもてはやされるのは、火を見たい、愛でたいという根源的な欲求があるからだろう。気温が低いときに暖を取るという意味はもちろんあるが、夏場だってキャンパーは焚火をする。

キャンプにおける照明もまた、火と縁のあるものに人気がある。今日び、LEDは長足の進歩を遂げたので、乾電池数個でけっこうな明るさを実現するものが出ているのにも関わらず、キャンプの愛好者はホワイトガソリンやガスを燃料とする、燃焼式のランタンを好む。

私もその一人だ。特にホワイトガソリンのランタンが好きなのだが、今回のような車中泊系のライトなキャンプ(「かるキャン」とでも言おうか)ではどうしても一式がかさばるので、ガス式のものを使った。ホワイトガソリンの大容量タンクにはかなわないが、カセットガス1本で4時間くらいは持つので、充分と言えば充分だ(当然だが、ランタンは屋外でのみ使う)。

やっぱり火はいい。燃焼式のランタンの光は明らかにLEDの冷たい光とは異なる。タングステンの電気ランプ以上に熱を感じる色温度なのだろう。

焚火のように揺らめく光ではないし、実際にはかなり眩しいくらいなので、じっと見ているわけにもいかないが、何かが燃えている光というのは、やはり違う。心臓のある光、という感じなのだ。

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キャンプを始めたばかりの頃は、夜寝る前には、屋外に置いたホワイトガソリンのランタンのバルブを絞って常夜灯のようにしていたことも懐かしい。今ではもちろん消してから寝る。

「かるキャン」ではなかなかそうもいかないけれど、ランタンはできれば二つ欲しい。ひとつはテーブルの上に起き、ひとつは目の高さくらいに吊るす。

そうやって多少工夫しても、ライティングは家にいるときとはずいぶん違う。屋内では光源はたいがい天井のあたりにある。寝る前になって使うようなスタンドやベッドサイドのライトだけが低い位置にある。

もしかすると、低い位置の照明というのは、人を癒すのかもしれない。そういう感覚がDNAの中に刷り込まれているのかもしれない。

電気が普及する前の人工的な光源というものは、ほとんど皆低いところにあった。暖炉の光も、囲炉裏も、行灯も、ろうそくの光も、手の届きやすいところにあったのだ。

キャンプやアウトドアというものは、だから、そうとは意識せずにやっている過去へ向かう旅なのかもしれない。

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