見出し画像

「茶の本」岡倉天心  ⑰Kindle 本

岡倉天心の「茶の本」、茶道好きには気になる本ですよね。「興味はあるけどまだ読んだことない」方もいますよね。1906年に海外で英語で出版された本と聞くと、堅苦しい、古臭さそうです。楽しそうな気がしません。ところが、読んでびっくり!日本人として元気が出ます。茶道好きは「お茶やっててよかった」と思う本です。よくわからない部分は気せず、読むのがおススメ。岡倉天心オモシロイ!


「武士道」の新渡戸稲造と「茶の本」の岡倉天心

第一章は岡倉天心のこの本で伝えたいパッションがさく裂します。茶の湯の影響を受けた、日本人の生活の中の美意識と平和を愛する性質を誇らしく天心は書いています。

1900年に新渡戸稲造が英語で「武士道」を出版し、西洋諸国で大ヒットしました。この本によって「日本人は死を恐れぬ民族」という一面的なイメージが西洋諸国に広がりました。それに危機感を感じた天心の気持ちがうかがえます。

新渡戸稲造も岡倉天心もとに明治に生まれ、元武士の家に育ち、幼い頃から西洋に興味を持ち、英語も堪能、海外生活の経験もあり、どちらも国際人と呼ばれています。新渡戸は「武士道」で日本の一部の階級の社会思考・倫理観をセンセーショナルに紹介しました。天心は「茶の本」で日本の庶民の生活にまで浸透している茶の湯の美意識や哲学をプライドを持って西洋諸国に紹介しました。

お札の顔で新渡戸稲造のことは知っていましたが、岡倉天心こそをもっと早く知っていたかったです。


歴史の中の茶の湯

茶道の経緯が歴史的な背景の特徴からザックリと知ることができます。なぜ宋代で抹茶の嗜好が途切れたのか、なぜ日本で茶道が続いたのか、時代の雰囲気がわかると、当時の茶への思いを垣間見ることができます。

「徳川幕府政権下で茶室は身分に関係なく自由に芸術と交流できる機会だった」と書いています。明日死ぬかもしれない戦国の時代が終わっても、江戸時代は階級制度に縛れ、贅沢が制限された時代でしたからね。茶室は自由を感じ、かつ神聖な場だったのでしょう。

芸術としてのお茶

お茶の根底には、道教や儒教、そして禅の哲学があります。お茶の美意識は不完全の美、一つを引き立たせるために、全体を調和させ、さらにそこに各自が見つける美の余白があります。

人は一度に多くを鑑賞することは難しく、各自が芸術と対峙してその不完全を埋める想像力や寄り添う感情が大切と言っています。茶室は簡素な中にそれらを体現してます。

天心は、日本と西洋の装飾法の違いを理解した上で、率直に以下のように述べています。「西洋の家ではわれわれから見れば無用の重複と思われるものにしばしば出くわすことがある」

確かに茶室の場合は哲学がベースの美学ですが、家の装飾って時として家人の自慢がベースの陳列かもしれません。

英語でも読んでみたい本

「茶の本」はもともと英語で出版された本です。この英語の原本バーションを読んだ方の感想によると、英文がとても綺麗だそうです。非ネイティブ英語スピーカーが味わい深い英文を書くのは至難の業です。やはり人を感動させる文章には、語彙力やセンス、そして情熱が必要ですから。天心は一体どんな文章でネイティブ達をも感動させたのでしょう。気になりますね。


海外の方に茶道や日本の文化を紹介したいと思う方も増えてきていると思います。この本を読むと、海外の人にお茶や日本の文化を話すことに自信がもてるはずです。そして原本も読んだら、もっと説明しやすくなるでしょう。日本語でも英語でも今こそおススメしたい本です。

この記事が参加している募集

読書感想文

サポート大歓迎!あなたからのコーヒー一杯分のサポートが、未だ悪戦苦闘中のカナダ生活の楽しさと苦悩?の発信の励みになります。😊