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実話クライムサスペンスの最高峰「アメリカン・アニマルズ」

(思いっきりネタバレあるのでご注意を)

つまらない人生で終わりたくないという思いを抱えた大学生のウォーレンとスペンサーは、大学図書館にある稀少な本を盗み出して売りさばこうという計画を立て仲間を集めて実行する…という実際に起きた事件を題材にしたクライムサスペンス。

…と、ここまでは特に珍しくもない実話を基にした作品の一つと言えそうなんだけど、この映画の凄いところは強奪事件を起こした犯人とその家族、そして事件の被害者が出演してること。
俳優が演じてる部分が再現ドラマで、実際の事件関係者がコメントしてる部分がドキュメンタリー、そして時々その両者が一つの場面で交錯するという斬新な手法と構成にやられた…

主要な事件関係者全員が出演して、それぞれが当時抱えていた思いや考えを語りながら再現ドラマを補完していくというのは他の作品ではまず実現不可能だと思うし、今まで観た実話系映画の中には無かったスタイルで衝撃的だった。

そして事件を起こした側それぞれが語るストーリーが微妙に食い違っていて、どれが真相に近いのかハッキリわからないようになってるのも人間的で良かったと思う。「人は自分が信じたいものを真実として記憶しがち」だし、「それぞれの立場によって見える真実は異なる」から…

緻密に計画を立てたはずなのに、一線を越えるのに躊躇したり不測の事態で滑稽なほど歯車が狂っていくドタバタ劇も人間臭いリアル感が前面に出ていて思わず同情してしまいたくなった(笑)盗んだ本を売りさばくプランも実際ズサンとしか言いようがないし、あの行き当たりばったり感や無軌道さはお金というよりスリルを味わいたかった部分も大きいのかなと思ったり…

もちろん犯罪はダメなんだけど(笑)たぶん犯行の動機となった「つまらない人生で終わりたくない」というのは多かれ少なかれ誰しも抱えてる(過去に抱えてた)思いなんだと思う。
自分自身も今は何となく「まあ、こんなもんか」と諦めて納得して流されて生きてる部分が大きいけど、根拠のない自信や「このままでいいのか…?」的な焦燥感が強かった頃を思い出して胸が痛くなるセリフやシーンが多かった。

もちろん犯罪はダメなんだけど(笑)生きていく中で「自分は特別な存在ではない」と思い知らされたり、怒りや焦燥感を諦めで覆い隠したりする経験が多くなってくると、失くしてしまったものに対するノスタルジー?的な思いから犯人たちに強く感情移入してしまいそうになる、そういう危険な作品でもあります…

#映画 #映画レビュー #アメリカンアニマルズ #AmericanAnimals

映画の内容はもちろんだけど、パンフレットも凝ったデザインで素晴らしいです。
ポスターは買えなかったけど、思わず欲しくなるグッズも魅力的。
いろんな意味でシャレオツに仕上がってる作品です。

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