ただ好きなアニメを語る 「色づく世界の明日から」

アニメ「色づく世界の明日から」は『凪のあすから』で知られる篠原俊哉監督P.A.WORKSがタッグを組んで作り上げた、人々を幸せにするささやかな魔法が存在する世界を舞台にした青春偶像劇だ。

物語の始まりは数十年後。
日常の中に小さな魔法が残るちょっと不思議な世界。主人公の月白瞳美は長崎の街で「まほう屋」を営む魔法使いの一族に生まれた。幼少期のある時から色覚を失い、感情の乏しい子となった瞳美は灰色の世界で心を閉ざしたまま高校2年生になった。
そんな孫娘を優しく見守ってきた「大魔法使い」の月白琥珀は、祭りの夜に「今から高校2年生の私に会いに行きなさい」と告げると、瞳美を時間旅行の魔法で60年前へと送り出す。突然、見知らぬ場所に現れ戸惑う瞳美の視界に鮮烈な色彩が飛び込んでくる……。

主人公・瞳美は飛ばされた60年前の世界でその時代の人々や自分と同じ年の祖母と同じ時間を過ごすことになる。本来起こり得ることのなかった日々、遠い過去のあるいは未来の人と人が織り成す時間を超えた青春群像劇がこの作品であり。そこに浮かび上がる時間と人の関係性とそれを彩る美しい色彩と風景がこの作品の魅力だと思う。

魔法と時間で作る新しい世界観


時間遡行そのものは使い古されたアイデアではあるが、現実には不可能である物語を描く上でその力はまだ色褪せていないと思える。そしてそれを可能としているのが魔法である。この魔法があるという世界観も一見使い古されたように感じるがこの作品の魔法はあくまで「人々をほんの少しだけ幸せにできる小さな奇跡」であり世界を救ったり、人を傷つけたりが出来るような力ではない。この世界で魔法は星砂という触媒を用いれば誰でも使うことができ、その効果は他愛のないものなのだ。だからこそ魔法使い・魔法という存在が世界観として浮いておらず、テーマの一つである時間旅行というのが強く印象づけられるのだ。

色彩とモノクロの対比

そしてこの作品のもう一つのテーマであり魅力のについてだ。瞳美は幼いころに感情とともに色を失っている。作品の中でも瞳美の見ているモノクロの世界がしばしば描かれるがそれと対比してかまほう屋には鮮やかな星砂の瓶がたくさん並べられている。このモノクロの世界をあえて何度も描くことがこの作品におけるが表すもの「色づく世界」の意味をより強く表現しているのだろう。

凪のあすからを作り上げたタッグがこの世界観と色彩をもって描いた美しい色と光と青春の御伽噺。この機会に是非見てもらいたい。