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意味を知る

大阪府堺市・真宗佛光寺派報恩寺様に納品しました


こんにちは、製作部S川です。
梅雨入りした6月中頃、大阪府堺市・真宗佛光寺派報恩寺様に納品してきました。

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本堂改修工事に伴う仏具修復事業で、1年半前長年お使いになった仏具一式を引き取りさせて頂きました。お預かりした仏具は、木地直し・漆塗り・金箔押しなどの工程を経て、新品同様(上卓・前卓新調品)に修復できました。

▼ 修復前 ▼

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▼ 修復後 ▼

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御宮殿修復の場合は、まず傷んでいる木地はすべて取り替え、50年後・100年後と代々受け継がれる様しっかりと補強します。

その後、漆塗りや金箔押し、彩色や蒔絵などの加飾を経て修復は完成します。木地直しの工程は、すべての工程の土台となるため一番重要かもしれません。

▼ 納品の様子 ▼

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その御宮殿ですが、天井丈ピッタリに納まりました。本堂の有効寸法と仏具の修復後寸法を少しでも間違うと天井に当たります。まさに“紙一重‼”。何度も実測したおかげですよね。営業部長のH川さん、流石です‼

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欄間の題材は『二十四孝図』


御宮殿も立派なのですが、欄間の方にも目が行きます。鮮やかに極彩色(※1)で仕上げられています。

(※1)極彩色とは…木地に、貝殻の粉と膠(にかわ)を練り合わせた胡粉(ごふん)を塗り、その上に岩絵の具を塗り重ね、色鮮やかに施すこと

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ここで疑問が??
一般的に本願寺派は素牡丹欄間・大谷派は天人欄間。
佛光寺派の報恩寺様の欄間、何か意味あるの?名前は?

▼天人欄間

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▼素牡丹欄間

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恥ずかしながら知らない私。。。詳しい人に聞くのが手っ取り早い!
「工芸舎のF倉さん~!ご教示願えますでしょうか?」

F倉:はい、S川さん。ご教示というほどではないのですが、私の知っていることをお伝えします。この欄間の題材は『二十四孝図』だと思います。中国の人たちを描いていて、特に“孝行”に優れた人たちが描かれています。

3枚の欄間がありますが、『楊香(ようこう)』『孟宗(もうそう)』『郭巨(かくきょ)』と思われます。

『楊香』の逸話は、父親とともに山に行ったときに虎と出遭い、「自分だけを食べて、父親は助けてほしい」と願ったところ、虎が逃げていったという話です。

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『孟宗』は、病に侵された母親が「筍が食べたい」と言ったのを聞いて筍を探しに行った話で、この話は冬の話です。雪の積もる竹林を必死に掘っていると春野菜の筍が見つかり、母親に食べさせてあげられたという結末です。

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『郭巨』は、実母と郭巨夫婦、子供一人で暮らしていましたが、貧乏で食べるのにも困っていました。実母は自分の食べ物を孫に分け与えていたのですが、このままでは実母も子供も飢えてしまいます。
そこで郭巨は、子供はまた授かる可能性があるけど、母親は授かることはできないと考え、食い扶持を減らすため子供を山に埋めに行ったところ、黄金の釜を見つけて食難をしのいだという話です。(※ウィキペディア先生にもご協力いただきました)

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この『二十四孝図』は、真宗佛光寺派に限ったものではなく、お寺の欄間などに広く用いられる題材です。お寺の欄間に限らず仏壇の欄間にも用いられていて、特に大阪仏壇と呼ばれる形状の仏壇にはよく取り入れられています。お寺の仏具も、一般家庭の仏壇も代々受け継がれていくように、『二十四孝図』の“孝行”の心も受け継がれることを願って取り入れられているのではないでしょうか。

学生時代はほんの少し“親不孝”だったF倉がお伝えしました。“卯兵衛館(※2)”のS川さんにお返しします。

(※2)卯兵衛館とは…若林佛具の京都本店にある仏壇仏具の総合組立所。S川さんがいる建屋で、若林工芸舎も入っている若林佛具本店ビルとは別棟です。

S川:「なるほど‼」、“意味を知る”ことは世界を広げる。一つ賢くなり、改めて京都の職人さんの素晴らしさを実感しました。

製作部S川・工芸舎F倉




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