続 生物多様性 ― 3

生物多様性 ― 3

数字がやたらとたくさん登場するので、普段から関わりの少ない人たちは苦手意識が多いかもしれないが、数字に強くなると、身近なものが面白く見えてくるので、嫌がらずに読もうね。

さて。
果てしないお話。「生物多様性について」、その続き。

地球上にいる生きものは、3,000万種ともいわれています。それぞれが様々な環境に適応して進化しています。

たくさんの生きものが地球上に存在するそのありさまを、私たちは「生物多様性」と呼びます。それぞれが「個性」を持って、「つながって」います。

私たちはそんなことに気遣いもしないで、地球上に存在しますが、「ごみを出さないで」「リサイクルしよう」「地球温暖化を防がねばいけないよ」などと一生懸命に活動しているのは、生きものである私たちが生きものとして、住まわせてもらっている自然に感謝をするところに還ってくると思うのです。

10月のメールマガジンの巻頭で、先日のイベントのお礼を書きました。その巻頭言を切り取ってきます。

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 10月3日土曜日、松阪市のウッドピア松阪(松阪市木の郷町)にて「三重の森林と木づかいフェア」が開催されました。ご来場いただきました皆様、どうもありがとうございました。

 森林は、おいしい水やきれいな空気を供給し、山崩れを防ぎ、あるいは私たちの心に安らぎを与える一方で、二酸化炭素を吸収し貯蔵し地球温暖化防止にも役だっています。

 このフェアを通して、大切な働きを持つ森林や木に触れて、自然という偉大な環境の中で暮らす私たちのスタイルを見直された方々も多かったのではないでしょうか。

 今回は、三重県の美杉村を舞台とした「神去なあなあ日常」の著者三浦しをんさんを会場へお招きして、1時間余りの森林トークがありました。

―― 山を手入れすることで下流の水がきれいになるなど、環境のためにも林業が果たしている役割が重要なんだということを、もっと知りたいし、自分も伝えたいと思う ――

 三浦さんの言葉がひとりでも多くの人のもとに届き、みんなが自然と仲良く暮らしてゆけることが、私たちの環境を守る一番の近道なのだと感じます。

 フェアでは「マイ箸作り」講座もありました。みなさん、一生懸命にノミを使って自分の指で採寸した長さの箸を削り出していました。最後に名前をサインして出来上がり。

 もしも、日本中のみんながマイ箸を持つようになるまで自然や資源のことに気が使えるようになったならば、そのとき環境問題は「問題」ではなくなっているのかも……、と思いませんか?

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一般に配布する記事に「生物多様性」という言葉をいきなり登場させると引かれてしまう恐れもあるので、かなり我慢をしてますが、今、次のステージは「ごみ」「リサイクル」「地球温暖化対策」から「自然」「森林」そして「生物多様性」へと変化してゆくのだろうな、と思っています。

しかし、やはり、言葉の意味が難しい。

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 自然環境や森、木のことを書きながら西岡常一さんを思い出していました。西岡さんは、法隆寺金堂の大修理、薬師寺金堂や西塔や法輪寺三重塔などの復元を果たした宮大工棟梁として有名な方で、NHKのプロジェクトXにも登場しました。

 素晴らしい語録がいくつも残されています。

――あなたが今造っているものが、五十年もたったらその町の文化になる。そういうものを造らなければいけない

――どの木にもそれぞれクセがあり、右や左にねじれようとする。右にねじれた木は、左にねじれたあの木とくみあわせたい。何百年後の木の性質と相談しながら、それぞれの癖を見抜いて使ってあげたい……

――わたしどもは木のクセのことを木の心やと言うとります。風をよけて、こっちへねじろうとしているのが、神経はないけど心があるということですな

――木のクセを見抜いてうまく組まなくてはなりませんが、木のクセをうまく組むためには人の心を組まなあきません

――(堂塔を建てる際には) 木は山ごと買って、その山の南に生えていた木を南側に使い、北の木は北に使い、西の木は西に、東の木は東に使え

 三浦しをんさんの作品に登場する大勢の人々も、実際に美杉村で出会ったみなさん(先月のこのメルマガ参照)も、自然のなかでほんとうに自然の恵みに感謝をして暮らしているのが伝わってきます。

 文明は輝かしく進化を遂げるものの、長い歴史の間に受け継がれてきた文化の伝承が途絶えるようなことがあると、社会は少しずつ暗くなっていくような気がします。そのためにも、自然とともに暮らして森に種をまかねばならないのですね。

2009年10月17日 (土曜日)