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ぼんちゃん ❶

緊張を寝かしつけた恐怖心

高校2年生6月、人生2度目の経験、私は「誰かの彼女」になりました。
お相手は2つ歳上の大学生ぼんちゃん、前略プロフィールに載っていた横顔と、そして数時間の電話から始まった、マッチングアプリも驚きのスピードゴールインでした。

そして私たちは、初めての電話から対面を果たすまでに、2週間ほどを要します。

私はどこにでもいる、ヤングコーンよろしいウブで暇な高校生でしたが、ぼんちゃんは柔道のスポーツ推薦で大学へ進んだ男。
毎日過酷な練習と、ほぼ毎週末に行われる練習試合とで忙しなく過ごしているようでした。

それでも毎晩の電話は、欠かさずの日課となっており、日に日にぼんちゃんという人間の理解と、自分にとって大きな存在になるという確信を深めていた私。

「今週末、日曜日の午後なんだけど、会える?」

初めての電話から1週間ほど経ち、ついにぼんちゃんから、お誘いを受けました。
たしか、月曜日か火曜日か、週の初め頃に繋いでいた電話だったと思います。
二つ返事で了承し、楽しみだねドキドキするねなんて言い合いながらその日の電話が終わり、私は、ドキドキなんてものよりもまず恐怖心に襲われました。

背が高いことも、太っていないのに華奢でもない身体の線も、二重じゃない瞼も、小さくない手のひらも。
全てがコンプレックスだった当時の私は、日に日に大きくなっていく「ぼんちゃん」という存在が、いざ私という存在を目の当たりにして、失望していなくなる可能性を、対面の約束を果たしたことで、やっと鮮明に想像することができました。

ぼんちゃんがいなくなる、ということに対する恐怖よりも、これでぼんちゃんがいなくなったら、私のコンプレックスはもっと根を深く張り巡らせ、きっと取り返しのつかないものになるだろうと、そちらに対する恐怖が強かったと思います。そして、もう2度とこんな恋の始め方はしない、と思いました。

そんな恐怖心との戦闘中も、毎日毎夜の電話は欠かさず、ついに対面の時がやってきます。




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