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台湾の特別な1日

 4年前の1月のある日、京都の銭湯で風呂上がりにぼーっとテレビを見ていた。そこで、たまたま見ていた番組で特集されていたのが、台湾の総統選挙だった。

 日本のように期日前投票もなければ、もちろんインターネット投票もない。それだけでなく、戸籍があるところでしか投票ができないのだという。そのため、都会に出てきた学生らは、深夜バスなどでわざわざ投票のために帰省しなければならない。海外で生活している人ももちろん同じ。それにもかかわらず、投票率は、日本と比べても相当高い。台湾は、1980〜90年台にかけて、それまでの一党支配体制から民主化を勝ち取った(事実上の)国家だ。それだけに、自分の国に真剣に向き合っているのかもしれない。

 蔡英文が初めて総統に選出された1カ月後、僕は台湾を訪れた。その後は、特に何をするというわけでもないものの(写真は撮っているが…)、台湾が気に入り、たびたび訪れている。


 あれから4年後の今年1月11日(土)。台湾の総統を決める選挙があったこの日、台湾の選挙の雰囲気を体験したいと思って台北を再訪した。

 というものの、選挙前日に台湾に着くと、普段とあまり変わらないような印象を受けた。むしろ昨年10月に訪れた時のほうが、各地で選挙の準備が始まった頃でにぎやかに思えたものだった…。夜になってようやく、選挙カーが走り、街中では投票に関するアナウンスが流れた。また、台北駅周辺は、おそらく帰省しようとする若者だろうが、人でごった返していた。駅構内にあるコンビニにも行列ができていた。ようやく選挙の熱狂の一端を垣間見た気がした。


 選挙日当日は、宿を出るのが少し遅かったせいか、僕が街に出た頃には、多くの人々は投票を終えていたのか、思っていたよりも選挙の雰囲気を感じられなかった。だが、少し注意深く歩いていると、何気なく通り過ぎた学校や幼稚園、廟などが投票所になっており、門の前には警官の姿もあった(カメラを向けると、警官によって静止された)。また、小さな商店や食堂だけでなく、カフェのようなところでも朝から選挙番組が放送されているのが見られた。開票が始まると、客も店員も釘付けになっていた。電車に乗っていても、スマートフォンで選挙番組を見ている人の姿があった。

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 夜、滋賀から旅行中の友人と食事をとり、22時頃に宿に戻ると、スタッフがロビーで選挙番組を見ていた。どうやら彼らは民進党の支持者だったようで、開票速報に喜んでいる様子だった。

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 民進党の選挙対策本部前にはステージが設置されていて、会場は支持者で大盛り上がりだ。その様子がテレビで映し出されるのを見て、僕は居ても立ってもいられず、その場所に足を運ぶことにした。といっても、22時過ぎてはもう祭りの後だろうが…。

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 案の定、テレビに映っていた群衆の多くはすでに帰路についていたが、まだ残っている人もいて、少しばかり残り香のようなものを味わうことができた。

 投票率は74.9%に上ったという。2期連続の当選を果たした蔡英文氏は、史上最多の817万票もの支持を得た。正直、このようなリーダーがトップに立つ台湾がうらやましい(もちろん良し悪しはあるだろうが…)。それ以上に、民衆がきちんとリーダーを選んでいるという事実がうらやましかった。


 翌日、台湾在住の知人、呉さんに家鴨の鍋に連れていってもらった。それはとても美味しかった(ただ、酒がベースなので、アルコールにやられたが)。

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 呉さんは、口にははっきりと出さないものの、国民党の支持者だ。我々の隣の席では民進党支持者が祝杯を上げていて、呉さんはそれが気になっている様子だった。立場によって違う意見があるのは当然のことだ。また、指導者が全員の意見に寄り添うことはできないのも事実。それでも、民意を示すことは大事だと改めて感じた。


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