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Podcastの裏側〜ソフトウェア編〜

 収録機材編で書き忘れたことがあったのでそちらから。
 収録機材といえば、取材の際に使用する機材についても書いておかなければなりませんでした。
 インタビュー取材のときには、マイクはやっぱりBeta58Aを持って行きます。これを2本持って行って、録音するのはZOOMのPodTrak P4。

 これはXLR端子(キャノン端子)を4つ持っていて、最大で4本のマイクを接続することができます。
 またこれ一台でBGMやジングルを入れたりもできるのですが、そのへんはまったく使っていません。とにかく間違いなく、安定して動作してくれることが最優先で、そういう意味では乾電池駆動という点も大きい。
 最近は充電式の内蔵バッテリーを搭載しているものも多いですが、この方式だとバッテリーが切れたらしばらく動いてくれません。外で収録する場合、これはいちばん避けたい事態です。その点、乾電池駆動であれば、バッテリーが切れたらコンビニにでも飛び込んで電池を買ってくればいいので、安心感が違います。
 僕はこれを充電式電池で使っていて、予備バッテリーと予備の予備バッテリーを常に持ち歩いています。入念に準備をするので予備すら必要になったことはありませんが、それでもいざというときにはそこらで売っている乾電池に頼れるというのはありがたいです。
 これと、さらに録音機材の予備としてTASCAMのDR-7Xを使っています。

 もしなんらかのトラブルでP4で収録できていなかった場合に備えて、こちらのDR-7Xでも同時に収録しています。
 これにはせっかくのインタビューが無駄になってしまうことを防ぐのと共に、P4で録れなかった音を録るという目的があります。
 大抵の場合、P4に接続した二本のマイクは対面している僕とゲストの口もとを狙っています。そうするとその直線から外れたところで生じた音はあまり拾えません。そういう音を拾っておくという意味でも、DR-7Xはその直線に対して直角の位置から収録しています。
 これが功を奏したのが、ホテルニューグランドのイタリアンレストラン「イル・ジャルディーノ」さんを取材したときでした。
 テラス席でマネージャーの赤羽さんとお話をしていると、そこを通りかかった宇佐神総料理長が声をかけてくれました。その声はP4の方にはほとんど入っていなかったのですが、DR-7Xの方にはきちんと収録されていたので、あとからその部分だけ音声を混ぜて使っています。興味があれば下のリンクから確かめてみてください。


 また、そんない雑貨店名物「お出かけしてきました」のコーナーや特別版「キニナル観光」でもDR-7Xは活躍しています。というのも、「お出かけしてきました」や「キニナル観光」は基本的に動きながらの収録になるので、マイクケーブルがプランプランしてると邪魔になります。
 DR-7Xは本体にマイクが付いているし、集音範囲も可変なので使い勝手がいいです。あんまり使い勝手がいいので、これを持って崖から飛び降りたり、山道を歩いたりしてかえって危険な目に遭っていますが。
 キャンプでの収録もだいたいこれです。

 さて、本題のソフトウェアですが、下平さんとの通話にDiscordを使っているというのは「収録機材編」で書いた通りです。
 最初の頃はSkypeを使っていましたが、どうにも使い勝手が悪くなってしまったのと、根本的に音質が良くない。というか、Discordの音質が良すぎるのかも知れません。

 この通話を録音しているのは、Audio Hijackというソフトです。
 このソフトで、Discordから入ってくる下平さんの音声と、マイクから入ってくる僕の音声をそれぞれ別チャンネルに録音しています。
 別チャンネルに録音しておくとあとでいろいろな調整をするのに都合がいいのですが、この設定を見つけるのは苦労しました。下の画像がその設定ですので、参考になさってください。
 もっとも、いまでは下平さん側で下平さんの音声だけを収録してもらって、それを僕の音声だけのチャンネルとミックスするということをやっているので、ここでの下平さんの音声はなにかあったときのための保険です。

 こうして収録した音声はAudacityで編集します。これはとても良く出来たフリーソフトで、音声を編集するということにかけてはほぼこれだけで完結します。
 僕はこれを音声の編集のみに使っていて、そのあとBGMをつけたりするのはGarageBandを使っています。

 このソフトではまず、各チャンネルにコンプレッサーをかけます。コンプレッサーというのは音量を一定に揃えてくれるものです。声には抑揚がありますが、その抑揚をある程度揃えないと声を張っている部分と音量差がありすぎて聴き取りにくくなってしまうので、それを一定にする役割を担っています。
 そしてそのあと、ノイズ除去を行います。物の本によるとこの順番は逆の方が良いそうですが、僕はこちらの方がやりやすいのでこの順番でやっています。
 そうして機械的にノイズを除去しますが、それでは取りきれないノイズは実際に音を聴いたり波形を見たりしながら手動でカットしていきます。意図せず入ってしまった音やリップノイズといって唇を開くときに「ピッ」と入ってしまう音などです。だいたい一回の収録で数百か所くらいでしょうか。
 たぶんそんなことをしなくてもBGMをかぶせれば聞こえなくなったり気にならなくなるのでしょうが、できるだけのことはやっておきたい。聴いてくれている人に少しでもいい音で届けたいという思いから、毎回これをやっています。

 Audacityで行うのはこれだけではなく、リバーブやエコーなどもここでかけます。それからときどき電話で話しているような声になるときがあると思いますが、あれもここでフィルターを使ってかけています。
 フィルターといえば、取材時にマスクをつけていた場合、どうしても音声がくぐもってしまうので、それを明確にするのもここでイコライジングをかけています。
 毎度おなじみ小田原鈴廣の広報酒井さんの取材は、最近ではいつもマスクをつけているのですが、できるだけクリアな声になるように調整しています。
 満足いく設定を見つけるまでにかなりの試行錯誤をしましたが、だいぶ追い込んだ設定ができたと思います。

 こうして作った音声ファイルを今度はGarageBandに読み込んでBGMをつけます。とはいえ、BGMをつけるだけではなく、音声ファイルのタイミング調整なども行っています。
 実は話しはじめるタイミングが毎回微妙に違うことにお気づきでしょうか。これは話しはじめの声のトーンとBGMの音程、音量を考えて、BGMとトークが気持ちよくつながるタイミングを探して設定しているからです。
 そしてここでも、音声ファイルの最終的なカットや分割などを行って、問題がないか通して聴きます。
 問題がなければコーディングといって、最終的なファイルへの書き出しを行います。
 その後、書き出したファイルをスマホやパソコンのスピーカーで通して聴いて、OKならそんないプロジェクトのサーバとaudiobook.jpのサーバにアップロードします。
 あとは間違いなく配信されること、聴いてくれた人が楽しんでくれることを祈るのみです。

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