COVID-19対策における今後のシナリオ



コロナウイルスに関して、シナリオの想定と自分なりのポジションは取るべきだろうと思います。また、周囲では、いつどのような段階で状況が回復し、何が発生するか、タイムラインで想定を立てている人は意外に少ないと感じています。
すべて仮定ですが、この機会に自分なりのシナリオとポジションを明文化しておき、振り返れるようにしておきます。

■コロナウイルス対策の段階

・措置のレベル感により、2段階に分かれると考える。

【第一段階:厳しい行動制限】
・”ハンマー"とも呼ばれている、激しい行動制限による強力な感染者抑制戦略。
・この間で、まず感染拡大を防ぎ、終息がが明確に確認できるまで続く。
・激しい経済機能の損傷をもたらすため、二の足を踏む国が多かったように感じますが、結局皆突入した。

【第二段階:一定の行動制限】
・”ダンス”とも呼ばれる、一定の行動制限による感染再発の抑止期間。
・国境の制限、感染者の追跡、検温や検査の実施、社会的距離の制限などを行う。
・ワクチンの開発か、治療薬の開発、治療法の発見等のいずれかが成功するまで続く。
・現段階では中国のみか。韓国も?

※コロナウィルス : 「ハンマー」と「ダンス」(Coronavirus: The Hammer and the Danceの翻訳) by @kato_
https://link.medium.com/gb92N8nK24


■諸外国における状況

【中国:第二段階への突入】
・中国においては、第一段階(豊富な医療リソースの投入と、すでに存在する社会的なIT基盤を強化した各種施策を用いた強力な閉鎖)を約3ヶ月で解除し、現在は感染の第3波の防止に向けた第二段階へ移行している。
・逆にこのレベルでの施策を行ってもなお3ヶ月を要している。

2019年12月 最初の症例報告(武官保健医療当局)
2020年1月  最初の死者が確認
2020年1月23日 武漢の閉鎖
2020年4月8日 武漢の閉鎖解除 
※依然厳しいsocial distanceを実施中。例えば、
・健康コード ※1
・検温の実施
・都市間の移動制限
・各種娯楽産業等の営業停止


※1 健康コードに関しては、下記がわかりやすい。
理解が追いつかない中国のIT技術 - 寒寒(ハンハン)@武漢生存者
https://note.com/xiaohan1109/n/n32d18c9d32c4

・武漢を中心にした閉鎖のタイムライン
焦点:武漢「封鎖」の内幕、中国はなぜ初動が遅れたのか - ロイター
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-wuhan-scientists-idJPKCN21R1E6

【韓国:第一段階を行わず、第二段階に突入】
・韓国では、検査体制の拡充と軽症者の隔離対策、感染者の動線公開により、現状感染拡大は抑えられている。
・何らかの可能性で再拡大は考えうるものの、現状としては封じ込めに成功し、第二段階にあると言ってもよいだろう。

2020年1月 最初のコロナウイルス感染者が確認
2020年2月 民間の診断キットが承認され一挙に検査開始
2020年2月中旬以降 テグ広域市を中心に感染拡大
2020年2月23日 感染症警報を最高レベルに引き上げ。外出自粛を呼びかけ
2020年3月 2月末を境に新規感染者数は減少をたどる


欧米が称賛する韓国コロナ対策 6つの注目点 - 日経新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57703240W0A400C2000000/

韓国大統領、新型コロナウイルス感染が拡大する大邱市で対策会議を開催 JETRO
https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/02/d8bcb86336e560a7.html

韓国の感染ペース最悪、国民に外出控えるよう呼びかけ
https://jp.reuters.com/article/china-health-southkorea-idJPKBN20N052

【シンガポール:第一段階を回避しようとしたものの、結局突入】
・シンガポールは、感染経路をほぼ完全に可視化することで(※1)、中国のような強力な移動制限を行わずに第1波の封じ込めに成功したものの、4月以降外国人労働者を中心に感染が拡大した第2波の拡大を防ぎきれず(※2)、職場や教育機関の閉鎖、外出禁止に罰則を伴う措置を余儀なくされている(※3)。

・シンガポールの可視化はクラスター対策と若干に類似点があるが(クラスター対策班資料では異なるものと述べられている)、可視化から漏れた感染拡大に対応できなかった点で参考になる。完成経路の不明な例(孤発例と呼ばれている)が増えている日本と似ていると言えるのかもしれない。

※1 COVID-19への対策の概念(厚生省クラスター対策班 押谷教授) P16
https://www.jsph.jp/covid/files/gainen.pdf
※2 新型コロナ対応で明暗分かれる香港とシンガポール-社会的距離に違い Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-04-10/Q8JXNMT0G1KZ01
※3 シンガポール、国民の外出禁止へ時限立法 違反は罰金 日経新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57842020Y0A400C2EAF000/


【アメリカ:第一段階に突入】
・自身の財団を通じて積極的な施策を実行しているビルゲイツによれば、米国では①6月ごろに中間的な閉鎖の解除が可能になるが、②全面的な開放は18ヶ月後と予想されるワクチン流通をまたなければならない。

・Watch CNBC's full interview with Microsoft co-founder Bill Gates on past pandemic warnings
https://www.youtube.com/watch?time_continue=269&v=PKg40HX6oUo&feature=emb_title


■上記を元にした、日本におけるこれからのシナリオ

【第一段階:4ヶ月程度】
・日本国内では、現状の緊急事態宣言に基づく5/6までの外出自粛以降、その後感染者が0に近づく8月頃までは続くのではないか。
・ビルゲイツによる米国での予測(上記、6月頃に感染がある程度収まる)が日本にも一定程度当てはまるとしたら、もう少し早まるのかもしれない。

○現状の施策が機能した場合
・感染者がシミュレーション通り抑制され、0に近づいた場合、各種自粛要請は一定程度緩和される(8月過ぎ?)。

○現状の施策が機能しなかった場合
・感染拡大の抑制ができなかった場合、あるいはそれが明白になった場合は、予測はつかないが、非常に長い時間に渡る措置の延長が考えられる。
・当然に、外出禁止に向けた新たな手段が講じられる可能性は考えうる(※1)。現行の特措法では不可能(※2)だが、追加の法改正や立法、別途法的根拠に基づいた政策は模索されていると思われる。少なくともリスクコミュニケーションは強化されるだろう。

【第二段階:12〜15ヶ月程度】
・上記の期間を18ヶ月(※3)とすれば、接種が行き渡るまでにはプラス2ヶ月程度要するとして20ヶ月、4月現在からカウントすると2021年の年末となる。
・前述のように緊急事態宣言の効果が発揮できなかった場合でも、ワクチン自体の開発が前後するとは考えづらいため、基本的に第二段階のタイムラインは大きくずれないのではないだろうか。
・第二段階のどこかでは、一定の制限下のもと、グローバルな移動も少しづつ回復をするのではないか。この場合は、各国の国々(地域)が、グリーンゾーンとレッドゾーンに塗り分けられ、感染の一定の終息が認められたグリーンゾーンの国同士のみで移動が許される状況となるのではないか(※4)。
・しかしながらこの間、さらなるウイルスの変異や、抑えきれなかったクラスターの再発により、再び第一段階へ逆戻りする可能性もある。


※再掲 コロナウィルス : 「ハンマー」と「ダンス」(Coronavirus: The Hammer and the Danceの翻訳) by @kato_
https://link.medium.com/gb92N8nK24
※1 「一斉休校」を批判して「緊急事態宣言」を褒める日本人の思考停止 - プレジデント
https://president.jp/articles/-/34384?page=3
※2 【法律的な観点から理解する】新型コロナウイルス(COVID-19):「緊急事態宣言」及び「ロックダウン」(都市封鎖)について3分で解説
https://tsl-magazine.com/category06/emergency_declaration-and_lockdown_by_new_coronavirus/
※3 上記ビル・ゲイツの示唆などから。
※4 新型コロナ、今後のシナリオ(サトウヒロシ)
https://medium.com/@bigstone/covid19-world-scenario-cb8889752c65


■シナリオに基づく経済活動への示唆

【ベースとなる状況】
・第一段階では、ビジネスのほぼすべてを直接対面せずに行う必要がある。
・第二段階では、ビジネスの大半を直接対面せずに行うほか、対面する場合も感染リスクをできるだけ回避する必要がある。
・これらの状態においては、今までのような密集状態が許されるまでのあいだ(恐らく2021年末などまで)、新しいスタンダードのもと事業を推進せざるおえない。この点に関しては、例えばGMO社長の熊谷さんも「この状況が2年間続く事前提で全て変える」と仰っており(※1)、おおむね見立ては変わらない。なお、熊谷さんは1月末時点で国内では圧倒的に早いタイミングで全社リモート体制に移行した人物である。

【第二段階までで発生しうること】
・多くの観光業、直接対面の場を収益源とする産業は強烈なビジネスシフトを迫られる。2年間売上なしで耐えうる企業はほとんどない。バーチャルへ軸足を移すか、対面の数を減らし高単価化するか、などのピボットは不可欠。
・できるだけ移動/接触せずに消費を楽しむインフラが整う。
・いち早く復帰し、強大な国内需要とサプライチェーンを維持する中国が一人勝ち。


【第二段階後に発生しうること】
・約2年間ものあいだ行動変容を求められたあと、人々の価値観がどのように変化しているかが重要なポイントになる。個人的には、リアルな体験はより価値が高まり、高単価化する(し、そもそも大量動員せず高単価化できた企業しかその時点で生き残っていない)と思う。例えば旅行の平均単価は少なくとも一時的に上がると思うし、その後は量的にも現時点以上に増えていくのではないか(※2)。
・一方で、今まで大量生産/大量消費的に行われていたことは、多くがバーチャル上ないし今までのような接触なしでも価値があることが認められ、移行する。これはエンドユーザー向けの価値提供だけでなく、働く側のワークフローも、である。

※1 4月12日の熊谷さんのツイート
https://twitter.com/m_kumagai/status/1249225984227721216

※2 訪日外国人観光客が戻るまでのシナリオ 青木優
https://note.com/aokiu/n/nff0c50bd6604

※ 新型コロナ、今後のシナリオ
https://medium.com/@bigstone/covid19-world-scenario-cb8889752c65

※ 海外進出とインバウンドが全滅するーアフターコロナの成長戦略はどこを狙うべきか?
https://medium.com/@bigstone/after-covid-business-83cbdceb6ee5

※そろそろ全体を見た話が聞きたい2 安宅一人
https://kaz-ataka.hatenablog.com/entry/2020/04/04/190643

■現状の日本の感染防止対策について

・今回の議論からは若干外れるものの、どのような対策が打ち出されるかの予測を自分なりに持つことで、次の手を考えやすくしたい。

【焦点1:クラスター戦略の有効か?持続するのか?】

・クラスター戦略自体の説明ははぶく。
・結論、現状のクラスター調査体制と感染拡大状況下では、有効性は限られていると考えてもよいのではないか。
・この戦略は全国の保健所と厚生省クラスター対策班によるクラスター調査能力に依存するものだが、現状でもリソースの逼迫が十分に確認できる(※1)。4月1日の専門家会議でも、尾身先生が「クラスター潰しのサーベイランスをやっている保健所、あるいはクラスター対策班がかなり疲弊している。そのためにクラスター発見が遅れている例がある」と述べている(※2)。

※1 患者対応「追い付かない」 相談殺到、調査や搬送も―疲弊する職員ら・各地の保健所 時事通信
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020040800705&g=soc

※2「感染拡大地域」では一斉休校も選択肢 専門家会議が見解(2020年4月1日) 27:00 頃
https://www.youtube.com/watch?v=50-sux3BdDo

・上記リソース不足や疲弊、感染者の増加により感染経路追跡が困難となり、クラスター戦略が実質的に機能しなくなる可能性もあると思うし、現状その確率が高まっているために緊急事態宣言を出さざる負えなくなったと見るべきなのかもしれない。

・緊急事態宣言に基づく各種施策を政策として行いながら、対策本部の下に設置されたクラスター対策班(※1)が同時並行でクラスター潰しを行っていく、というのが現状の体制と考えられよう。4月7日の閣議決定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策~国民の命と生活を守り抜き、経済再生へ~」では、まん延防止策に関して「足下の感染拡大への対応として、必要な検査が確実に受けられる体制を確保するとともに、いわゆる「3つの密」を避ける行動の徹底等の感染拡大防止に向けた協力をお願いしながら、感染の連鎖を断ち切るためのクラスター対策を抜本的に強化する」と説明されている(※2)。

※1 新型コロナウイルス クラスター対策班の設置について 厚生労働省 添付資料組織図より
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000599837.pdf
※2 「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策~国民の命と生活を守り抜き、経済再生へ~」新型コロナウイルス感染症対策本部 P8
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/th_siryou/200407kinkyukeizaitaisaku.pdf

【焦点2:緊急事態宣言などの外出自粛要請は有効なのか?】

・現状では、西浦先生の目標とする接触8割減にはまだ遠い。
・有効性を図るには、新規感染者数の推移や死亡者数を確認すればよいが、感染から発症までの期間が2週間程度あると言われており、すぐに結論が得られない。そのため、ひとの動きを観測するのが最も早いということになる。
・モバイル空間統計(NTTドコモによる携帯端末位置を利用した人口統計)によれば、東京都の外出自粛要請後の3/28、29日における渋谷・銀座の人口は、3週間前と比較して-50〜60%(※1)。
・Googleによる調査によれば、東京では平均と比較して4月5日の値が小売店では-50%、交通駅では-58%、職場では-27%(※3)。
・体感値としては、まだまだ外出者は多いし、リモートワークなどに切り替えられない業態/会社が多いのではないか。また、都心部への通勤が減っても、今度は地元の商店街などに人が集積する可能性もあると考えらる。「完全に家にいる(ないし、人との接触を極限まで下げる)」という認識が正しいはずであるが、「都心部に出かけない(会社やターミナル駅などに行かない)」という認識にとどまっている人が大半のように感じる。
・今後の対策としては例えば、上記のような地域別の人口動態や外出状況データを確認したうえで、動きの減らない場所に向けてより強力なメッセージの発動や警官等の重点配備を行い、外出の自粛を呼びかけるといった方法で有効性を高めていく、とか。

※1 「モバイル空間統計」を利用した政府等の対応前後の東京都の人口変動分析(NTTドコモ)
https://www.nttdocomo.co.jp/binary/pdf/info/news_release/20200408_mobile_spatial_statistics_tokyo.pdf
※2 下記のデータもあるが、1日の前後で測っているだけなのでもう少し平準化して見ないと、、という気もする。
「モバイル空間統計」を利用した緊急事態宣言前後における7都府県の人口変動分析(NTTドコモ)
https://www.nttdocomo.co.jp/binary/pdf/info/news_release/0409_mss_7area.pdf
※3 Mobility Changes - Google
https://www.gstatic.com/covid19/mobility/2020-04-05_JP_Mobility_Report_en.pdf
この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
にゃん
2
エンタメとか Twitter:https://twitter.com/_momotax