COVID-19 続・今後のシナリオ

再びコロナウイルス感染者の増加が顕著となっている。4月時点で、タイムラインを併せた予測をいくつか示したが、その多くが現実となった。

一方でワクチン開発にも進展がみられ、フェーズが変化している。改めて現状と今後を予測する。

■①現在地 - 感染の再拡大とまらず

A.感染の状況
・陽性者数(新規感染者数)は過去最多を更新(1600人超)
・入院治療を要する人数、重症者数共にピーク時の数値へ接近
・実行再生産数が上昇(直近1.42)出典:東洋経済

スクリーンショット 2020-11-14 15.32.39

スクリーンショット 2020-11-14 19.29.47

 なお、数値の示すタイミングに注意が必要である。症状発症のタイミングで陽性検査が行われ、陽性者であればその後入院。そこから重症化し、程度に応じて各種治療が行われるまでに一定期間を要する。上記グラフからも、新規感染者の増加から1-2週間の間隔を空けて入院/重症や数が増えていくことが分かる。
 さらに、そもそもコロナウイルスの発症は感染の約2週間後と考えられるため、実際の感染はさらに2週間前に発生している。そう考えると、ここ1-2週間の感染者数増加トレンドは、10月下旬の感染増加の反映である。
 また、1人の感染者が平均して何人に感染させるかを表す実行再生産数(R0)がじわじわと上昇しており、感染の拡大が分かる。

B.対応の状況
・医療機関では重症者用の病床使用率が急増(11%強)、特に東京/愛知/大阪/沖縄の使用率は20%以上。一方で病床数自体も増加(出典:厚生労働省
・重症者に対する人工呼吸治療・ECMO治療も比較的高い数値で推移(出典:日本集中医療医学会
・重症化率/死亡率は低下
 重症化率は1〜4月:9.8%→6~8月:約1.6%
 死亡率:1〜4月:約5.6%→6〜8月:約1%
(出典:国立国際医療研究センター
 病床使用率は増加しているが、病床の絶対数も増えており、キャパシティが増えている。また、PCR検査拡充等により感染の早期発見が容易になったほか、治療方法のノウハウも蓄積されたことで、重症化や死亡への対応が進んでいる。

スクリーンショット 2020-11-14 16.29.11

 C.ワクチンの状況
 現在、日本政府としては国内5、海外6を主なワクチン開発パイプラインとして認識している。国内企業に対しては生産体制の構築に補助金を、海外企業に関しては各種供給契約を結んでいるほか、国内での生産体制の構築には一部補助金の拠出を決定している。
 ワクチンは、創薬したあとに3つの試験フェーズ(人体での治験)を経て各国規制当局の承認を経て上市される。国内企業のパイプラインのうち、試験フェーズに入っているのはアンジェス社のみである。一方海外企業では、サノフィーを除く4社がフェーズ3を開始しており、国内勢にくらべると1年近く先行している。
 現状数値が公表されている国内ワクチン供給状況は以下の通り。なお、全てあくまで承認されれば、である。

・ファイザー:2021年6月末までに6000万人分
・アストラゼネカ:2021年3月までに1500万人分、合計6000万人分
・モデルナ:2021年6月までに2000万人分、6〜9月間に500万人分
 (製造は武田薬品工業)
・ノババックス:年間2.5億回分相当の生産体制構築予定
 (製造は武田薬品工業)
・塩野義製薬:2021年末までに3000万人分

 さらに、これらが製造されてから実際に配備され、接種が行われるまでには数ヶ月のディレイが発生すると思われる。そのため国内で本格的にワクチン接種が始まるのは強気に見積もっても2021年中旬からであり、国民全体に行き渡るには2022年になりそうだ。
 リスクとして、試験フェーズを短縮しているため後遺症や副作用を計り切れていないことが指摘されているほか、コロナウイルス自体がその特性を変異させた場合、ワクチンが機能しなくなる可能性がある。加えて、一部のワクチンは-80度の超低温で輸送保管する必要があり、そのためのインフラや接種会場/手順の確保に手間取るかもしれない。

■②対策 - 対症療法メニューはそれなりに充実

 日本政府は幅広く支援メニューを展開、経済的なダメージのコントロールと対策につとめている。主に下記の通り。
・経済系の施策は、GO TO系の需要促進施策、家賃支援や持続化給付金、雇用の助成金、貸付条件の緩和された各種融資といった雇用維持・事業継続施策など、26兆円におよぶ「100年に1度の危機と呼ばれる状況を乗り越えるための空前絶後の規模」(出典:財務省)。菅首相が編成に着手する第3次補正予算案でも、十数兆円〜30兆円規模のコロナ対策が組まれる予定である。
・最も重要なコロナ対策においては、診療報酬の特例対応や医療機器調達支援、医療機関への融資、病床確保や医療従事者向け支援、PCR検査の拡充、新型インフルエンザへの対応強化など総額2兆円弱にわたる施策が展開されている。

■③評価 - 強硬手段が取りにくく根本解決に遅れ

 政府は相当なリソースを注ぎ込んで対策をしている。倒産件数、失業率等の各種経済指標を見れば、危機の一歩手前でなんとか食い止められているという評価は可能なのではないだろうか。しかしその根底に流れる思想はあくまで対症療法に留まる。
 4月〜5月に行われた緊急事態宣言以降、自治体レベルで散発的に実施された警報や移動制限等はあり、8月中旬〜10月頃までは一定の効果を出したものの、現在状況は再び悪化し続けている。
 医療崩壊にならない感染者数に抑えられるレベルの経済活動を維持・支援しながら、ワクチンの到着を待つ。それが現在の全体戦略と言えよう。
  一方で早くもアフターコロナに切り返した中国・台湾・香港・シンガポール といった国々のコンセプトは、そもそも感染者を撲滅し、元の経済活動に戻すことである。中国は、全回復といかないまでも、先進国で唯一プラス成長が予想される

スクリーンショット 2020-11-14 18.51.47


■④今後 - ワクチンの前に年末をやり抜かなければいけない

 ワクチンは早くとも来年中旬から、行き渡るのは2022年に達すると先ほど確認した。現在はまず感染を抑え、医療崩壊を食い止めなければならない。
 現在地から考えてみる。もし感染増加トレンドが現在(11月中旬)時点まで継続していれば、新規感染者数の増加は今月11月末まで続き、それを追いかけるように入院者数/重症者数の増加が12月上〜中旬程度まで続くことになる。現時点に至るまで特段の行動制限や自粛は行われていないため、恐らくこれはかなり角度の高い未来だろう。
 4月の緊急事態宣言時にくらべ重症化率/死亡率は抑えられている。感染者数が過去最多を更新したからといって、その危険度の質は以前とは異なる。
 しかし、何もせず実行再生産数が1.5、2と推移していけば感染者数は指数関数的に増え、新規感染者数が数千人/日へ上昇する可能性は決して低くない。現在の重症化率1.6%台だとしても1日数十人単位で病床が埋まっていき、都市部では相当厳しい医療機関も出てくるだろう。そうなれば、すでに20%以上の重症者用病床が埋まっている大都市では、過半を超え100%に近づいてしまう。東京の重症患者用病床は500床だが、すでに150は埋まっている。残り350に対して、例えば重症化率2%で感染者数1000人/日が継続すると、1日20人づつ病床が埋まっていく。一定数退院があったとしても、2週間も経てば病床の70-80%近くが埋まってしまう。人工呼吸器やECMOの台数、医療従事者のリソース、クラスター追跡を行う保健所の体制を考えれば、ほとんど限界ではないか。
 時期的なリスクはどうか? 年末年始になれば忘年会や新年会、帰省・旅行も増え、感染拡大の機会は増加する。また、寒いとコロナがしぶとくなるとの研究もある。香港大研究チームの報告によると、コロナウイルスの感染力は37度で2日持つが、4度では14日以上も持つ(出典:人民網)。
 総合するに、年内の感染爆発、それに伴う医療崩壊というのは、すくなくとも一部都市において、そこまで非現実的な予測ではないと考えられる。
 医療崩壊が発生すると、医療キャパシティを上回るコロナウイルス患者を救えなくなるだけでなく、コロナ以外の患者へのケアが逼迫していく。

 ここで重要なのは、対策メニューの充実にも増して、市民の行動変容をより強力に促すことである。すなわち、上記の未来を回避し、無事に2021年を迎えるためには、改めた外出自粛/不用意な往来を防ぐ措置は必要不可欠である。一方で、最大のかき入れ時である年末シーズンが吹き飛ぶと、経済的なダメージは取り返しがつかないという考えもあろう。

 しかし、来年7月にはオリンピックも控える。ワクチンを待たずして、可能な限り感染状況を抑え、できれば中国や台湾のように、限りなくゼロに近い数値で推移してくれるのが望ましい。少しづつ内出血のように傷つきながら、成功の確率も、安全性・有効性もまだわからないワクチンを待つよりも、もう一度一気に感染を抑え込み、そのうえで経済活動を再開したほうが、後々よかったということになるのではないか。。

 
 
 
 
 


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
もう一回!!
1
エンタメとか Twitter:https://twitter.com/_momotax