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田川に濁人

窓の向こうに流れる川は

どれくらいの水温なのだろうか

触ってみればわかることだが

生憎私はここから出れない


魚は泳いでいるのだろうか

行く年考えていたが

逸れた鷺の狩をみて

魚がいることを認識した


流れる速度はどれくらいのものなのか

知りたいもんだから

だれか溺れてはくれないであろうか

などどいう暴力思想を自家発電できない為


私は今夜眠ったら

窓の外の川に挨拶にいこうと企んだ


いつもみてます

いつもきいています

いつか触りたかったです



川はこたえてくれるだろうか

私を弾き出し小石を投げてはこないだろうか

不安だけども

数年お世話になりましたもんで

ひとこと私の声に耳を傾ける時間を

頂きたく存ず


枕や布団がついてきたら

邪魔になってしまうから

今夜は畳のうえで裸で寝ます



暗くに近くで見る川は

窓越しとは気魄が違う

裸の私なんか無かったかのように荒々しく

水流を前に

脅威と驚怖を覚え

挨拶するのにも月が何歩も歩いた後だった

絞り出した声は掠れ

自然の創る荒く微細な音に呑み込まれていった


私は今夜などなかったことにしようと

背を向け目を覚ます準備をしたら

小石がバシバシ飛んできた

川に嫌われたと涙を落としたが

小石には小さな言葉が書いてあり

私は川に感謝した

川は私を見限らなかった

私もこの川にふさわしい人間になりたいと


服を着込んで

逢いに行こうと胸を叩いた

田川濁らぬ晴天に


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