無形の美術館
白檀の香を焚く
煙が顔に当たって
私は目を瞑る
視界が暗い分
白檀の焦げた匂いを強く感じる
机に置いた腕と
腕に置いた頬が
力無く沈んでいく
開いた目が捉えた
火の高さが低くなっていることから
いかに私が長い時のなか机に沈んでいたかがわかる
音も無い部屋の中には
煙が創る形無いアートが
私の前に展示される
鼻腔も穏やかになる
このアートは私の脳のカチカチとした部分を
揉んでは撫でて暖める
火の高さが机に限りなく近づいたころ
私は黙って寂しさと相対した
白檀の香の姿なき造形物は
美術館にも飾られない
私だけのアートである