見出し画像

ちいさな記憶を物語に -Little Stories-

昨日は冬のように寒い一日でした。
雨は、生活する上では憂鬱なことが多いけれど
晴れの日には考えもしないようなことを、ふと考えたり
いつもより五感を刺激されたりしませんか?

空から水滴が落ちてくる。
美しく光り、すぐに溶けてなくなってしまう。
たてる音は、不思議と心地いい音楽のよう…

さて、すでに開催中ではありますが個展のお知らせです。

≪EVENT INFORMATION≫
"Little Stories"  澤田 和香奈 ガラス展
2019.6.4(tue)‐6.15(sat) 12:00‐19:00
※Monday Close

GALLERY RUEVENT ギャラリールヴァン
171-0031 東京都豊島区目白3-12-27
03-6908-3014

なかなかじっくりお話することが出来ずにいた
新作 "Little Stories" についてご紹介させて頂きます。


美しい記憶をそのままに

誰しも、忘れられない思い出があると思います。
それは、場面であったり言葉であったり、気持ちであったり。

私は、自分の思い出を感動的な文学にすることはできません。
ガラスに描くことなら出来るかもしれない、と思って
これまでよりも具体的な物語性をもった作品群を制作することにしました。

以前にも、フリーハンドで植物の模様を描いた作品を
制作してみたことがありました。
しかし、描くのならもっと精密に、自分の画風を確立したい!と感じ
もう一歩踏み込めないままでいました。
                       
                         photo by Eri Kamei さま

パターンとして描く、という事を意識した作品だったとはいえ、
ただの模様を描いているに過ぎなかったのでしょう。


忘れられない思い出、というのは、例えばこんなことです。

自分の部屋の、お気に入りの出窓のこと。
給食のビワの種を、こっそり庭に植えたこと。
小学校の裏山にあった、椅子みたいな木のこと。
貸し切りで通学していた、早朝の電車。

田舎で育った私は、とても狭いところにいたのかもしれないけれど
そんな中で、自分の大切なものを探すように生きていました。

今では全部嘘みたいに思えることばかりです。



一番最初の物語は、夜に部屋の窓から見える白木蓮にしようと決めました。

実家の庭に植えた白木蓮が大きくなり、
ちょうど私の部屋の、窓の位置に花を咲かせるようになりました。
春の夜、外に気配を感じてふと見ると
ランプのように光る白木蓮の花で、それ以来ずっと
春の短い間に咲く白い花を待ちわびるようになりました。

L i t t l e  S t o r i e s  # 1
窓 辺 と 白 木 蓮


その小さな部屋には、お気に入りの窓辺がありました。

緑や空や風を見て、季節が変わっていくのを見ていた。
どこかへ行きたいと思ったことはない。

絵を描くことが楽しかった。
ピアノはうまくならなかった。

薄紫の闇が部屋を包んでいく、春の夜のこと。
窓の外に灯るあかりを見つけた。

そのあかりは、すぐに散ってしまった。

どこか遠くを想うようになった、はじまりの春の記憶。

サンドブラストで絵柄を彫り、着色前。
このままでもきれいで、色をつけるかどうか悩みました。


焼成前。ポイントとなる部分にだけ着色することに。
色数はある程度決めて、シリーズとして調和するといいなと思いました。




L i t t l e  S t o r i e s  # 2
緑 の 小 鳥


庭にやってくる小鳥たちは、いつも同じ。
2羽いっしょにやってきて、木々をくぐって遊んでいく。

今年も桜が咲いた。

枝よりも先に、木の幹に花が咲いているのを見つけた。
こんなところから、花が咲くなんて。

桜がくるくると降ってくる。
遠くまで、桜のパラシュートを飛ばして
遊んでいるのかな。

小鳥のさえずりで目が覚める
あたらしい街。

実家の庭には山茶花の垣根があり、小鳥がたくさんやってきます。
メジロはいつも2羽で飛び回っている。
東京の街中でも、メジロを見かけてうれしかった。
やっぱり2羽で遊んでいるのが、なんだか微笑ましくて。


悲しいことを忘れないように

兵庫の実家や富山に住んでいたころは、
のびのびと自然の中に暮らし、小さな日常を美しいと感じていました。

東京に暮らし、特にここ近年は
工房勤めで忙しく、正直とても苦しかったです。
体力的にも精神的にも余裕がなく、感受性が失われていました。
家に帰って、ひとりで泣いていたこともよくありました。

中学生の時、「スター・ガール」という小説が好きでした。
一風変わった行動をとるために、
ハイスクールの中で淘汰されつつある女の子と
普通であることを守りたいと思う男の子が出会い、
彼女の生き方に感銘を受け、彼の考え方が変わっていく…
というようなお話です。

スターガールという名前も、理想の自分を作るための名前。
彼女の言動はとても魅力的です。
スターガールは、ちいさなワゴン車の置物を持っていました。
いいことがあると小石をひとつ積む…という
しあわせのワゴンなのだと、彼に話します。

小説の中のそのワゴンのことを、たまに考えます。
実際には持っていないけど、私の心のなかにあるような気がして。
悲しいときは、しあわせのワゴンが空っぽになっているように思うのです。

L i t t l e  S t o r i e s  # 3
涙 と し あ わ せ の ワ ゴ ン


冷たい冷たい雨が、降りそそぐ。

雨粒は溶けることなく、星屑になってゆくのです。
それは幼い頃、大切に集めていた
なんでもない欠片のようでした。

夕日にきらきらと輝いている。
切ないほどに美しい風景は、胸をしめつける。

大切だからこそ捨ててしまった、思い出があった。

星屑は小さなワゴンに積まれ、ひとつのせてはこぼれていく。

ぼんやり見つめていると、教えてくれた。
あれは、しあわせのワゴン。

あなたのその涙も、いつしか星屑になるのだと。


もうひとつ、悲しみをテーマにした作品は
毎日見ていたスカイツリーと、いつもの公園と、細い三日月をモチーフに。

真ん中の作品。個展会場で実際にご覧頂いた方に、ご好評を頂いています。

L i t t l e  S t o r i e s  # 5
月 の 奏 で る 公 園


あの日初めて教えてもらった、切ない歌。
くちずさむたびに白い息が漏れた。

橋を渡り、公園まで自転車をこぐ。
あたりまえの日常を、ふと思う。

部屋に帰れば、薄暗くてやさしい空間が
私を満たしてくれて、
月の裏を夢見て、眠りについた。

戻ることのない時を、愛おしくなつかしむことが
今なら出来るかもしれない。

私は生きている、
この街で、この瞬間に。

作品制作のきっかけは、きれいだったり悲しかったりする
私の個人的な思い出なのですが、
モチーフはどれも可愛いものになりました。

これが私なりの表現なのかな?と、気付くことにもなったので
まだまだ発展していきたいシリーズです。



L i t t l e  S t o r i e s  # 4
草 む ら の に ゃ ん こ


こっちに気付いて、じっと見つめあって
数秒間、話をしてみる。

今日は、パトロール中?
そろそろ私のこと覚えてくれた?
ごめん、今日は疲れてる。
ひさしぶり、どこか行ってたの?

そろそろ挨拶くらいしても、いいと思うよ。

近所のコンビニのところにいる、にゃん吉も作りました。



展示会は、15日(土)まで開催中です。
関東にお住まいの方は、ぜび会場にて作品をご覧下さい。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
note.user.nickname || note.user.urlname

最後まで読んで下さりありがとうございます。 これからも応援よろしくお願い致します。

ありがとうございます!
12
宙吹きガラスでハンドメイドテーブルウェアを作っています。1988年 兵庫県生まれ。武蔵野美術大学卒、富山ガラス造形研究所卒。都内のガラス工房に5年勤務し、現在はフリーランスで活動しています。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。