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【ワクセル講演会レポート】アフリカのエネルギー問題解決へ転生した男「川口信弘氏」9/9(木)20:00@オンライン開催

ワクセルは9/9(木)20:00に、川口 信弘(かわぐち のぶひろ)氏を招き、オンライン講演会を開催しました。

今回の講演会では、「アフリカのエネルギー問題解決」をテーマに、アフリカに拠点を移した経緯、事業で大事にしていることをお伝えいただきました 。本レポートでは、その講演会の報告をいたします。

16歳で弟子入り。きっかけは「恵まれている」から。

もともと実家の屋根屋を継ぐつもりはなく、目立ちたがり屋で俳優やタレントになりたいと夢見ていました。高度経済成長の真っ只中、社会に反発するのがカッコいいという風潮に影響を受けて、学校が面白くなくなり高校1年生で中退。その後は定時制高校に通いながらヤンチャをしていた過去を持つという川口氏。

しかし、定時制高校には、ペンキ屋で爪や髪の毛までペンキ濡れのおじさんや、ヤクザみたいな人もいて、そんな人ほど真面目に学校に通っていることが衝撃的で「自分は恵まれている」と気づいて、彼らと接するうちに自分の心が磨かれていきました。

16歳のときに屋根屋職人に弟子入りをし、屋根屋としての経験とスキルを磨き、23歳で独立。川口スチール工業を継ぐことを決意します。

初年度は年商が60万円と苦しい状態でしたが、やりがいを持って仕事に取り組んで翌年には売上を2倍・3倍と増やし、従業員の雇用や工場の増設により事業を拡大させていきました。

ある日ゼネコンの下請けをするようになってからは売上が安定していくようになりますが、ゼネコンの下請けは現場の所長が「神様」の世界で、所長の発言がすべてという状況だったそうです。

自分は何のために仕事しているのか?

川口氏は、自分と向き合い「今のままでも良い自分」と「3年後はまずいと思う自分」との葛藤がありました。そこで1年の猶予を持って「下請けをしない」ことを決断。
この決断が、川口氏の人生を大きく変えていくことになります。

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屋根と環境から、超軽量太陽光パネルへ。

「下請け」をしないことを決めましたが、何をするのか、唯一無二な事業は何なのか、決断したときに方向は定まっていませんでした。そこで川口氏は当時話題となっていた京都定義書に注目し、環境問題に取り組むことを考えました。

●屋根×環境=太陽光発電

非常に安直ですが、自分の得意な分野である「屋根」と「環境」をかけ合わせたときに、太陽光発電が浮かんできたのです。

しかし、太陽光パネルを屋根の上に載せることに課題がありました。
当時の設計では、屋根に重いモノを乗せることは日本の設計セオリーではなかったのです。方法を模索しているときにフィルム型の超軽量の太陽光電池に出会い、これだと直感します。

その後、取り付けるためのアタッチメントを開発し、特許を取得しました。
川口氏は、超軽量の太陽光電池の普及に乗り出します。

佐賀県庁の産業エネルギー科に持ちかけたところ、産業用のソーラーパネルが全国的に普及されていない課題があったので、すぐに有識者会議が立ち上がりました。

しかし、屋根のことに詳しくない会議メンバーには、「なぜ、軽量の太陽光パネルが良いのか?」が理解されませんでした。ほかにも、フィルム型の太陽光パネルには量産化やコストダウンに課題があり、普及計画は頓挫して失敗に終わってしまいます。

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2度目の失敗、そして異次元の世界へ

自身の取り組みが福岡放送に取材されたことがきっかけで、ミャンマーの方から太陽光パネルの設置の相談を受けることになった川口氏。根気強くミャンマー大使館に通い続けた結果、入札の票を入手し、成功を勝ち取ったかのように思えました。

しかし、日本の製品は流通コストが掛かるため競合他社より高価格な上、ハイスペックすぎて現地のニーズには合致せず。中国などの安価な製品に太刀打ちができず、”2度目の失敗”を経験することになるのです。

川口氏を迎え入れた次なる世界はアフリカでした。
日本のNGOから紹介を受けて、現地に足を運びます。

そこで感じた赤土の匂い、そして電気のない村。

「異次元の世界のようだった」と感じた一方、同時に「電気がなくても明るくて豊かに見えた」―—川口氏はそう率直に感じました。

しかし、アフリカに通ってビジネスを展開するのは困難だと考えたため、途上国の学校に太陽光パネルを設置するプロジェクトを発足。一般社団法人 GOOD ON ROOFSを立ち上げます。

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図:GOOD ON ROOFSの事業システム
出典:一般社団法人 GOOD ON ROOFS 公式ページ

仕組みはシンプルです。

① 日本全国の企業のオフィスや工場、倉庫などの「産業用屋根」に太陽光パネルを無償で設置
② 再生可能エネルギーをつくり、協賛企業に売電
③ 得た利益の一部、さらに屋根の賃料の一部を還元してもらい、アフリカなどの途上国に太陽光パネルの設置支援を行う

協賛企業は、屋根を貸すだけでCSR活動に貢献できるメリットがあります。

学校に電気を。しかし、それは日本のためでもある?

学校でランタンを充電して、10円程度の少額で貸し出しをするシステムとなっています。
ランタンの貸し出しは学校成績にも成果が現れています。ランタン導入前の定期テストの合格率が80%でした。ランタンを導入してからは、子どもたちは夜にも勉強ができるようになって合格率が100%に向上したのです。

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図:学校を充電ステーションにしたランタンの貸し出しサービス
出典:一般社団法人 GOOD ON ROOFS 公式ページ

ランタンの貸し出しは両親にもメリットがあります。

学校で子どもが借りてきたランタンからは、両親のスマートフォンへの充電が可能になります。充電する場合には、本来であれば4-5時間かけて街に行く必要があるので両親も大助かりです。ランタンを借りることができるのは、子どもだけのため、親が子どもを学校に通わせる後押しにもなったのです。

「アフリカの子どもたちの学習力を上げることは、結果的に日本に貢献する」

アフリカの学校を電化させることに対し、川口氏はそのように意義を見いだしています。

2050年には、世界人口は4人に1人がアフリカ人になると予想されています。
何かの形で日本に干渉されるときに、日本が尊敬される国であってほしい。
そんな思いから学校に電気を普及させることに力を入れているのです。

経営で大事にしていること・困難への乗り越え方とは?

川口氏は「努力」「謙虚」「感謝」を大事にしてきました。

56歳の今になって、努力してきた自負心や謙虚さを感じ、心の底から感謝できるようになってきたのです。

●なぜ、自由に夢を描くことができているのか
●なぜ、事業をさらに進めていこうとするのか

誰のおかげで出来ているのか感謝すること。
川口氏にとっての経営は、努力であり、謙虚さであり、そして感謝なのです。

「誰かのために」

困難を乗り越えるときに、力になるワードで、思い浮かべられる「誰か」が1人でもいると大きな力になります。

そして、「諦めないこと」
Never give up―—「諦めさえしなければ、成功する」
ノーベル賞を受賞した学者たちが口を揃えて言う言葉です。

川口氏は諦めたらそこで失敗。
死んでもいけないと強く語りかけました。

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最後に、参加者へ向けて川口氏より熱いメッセージを頂きました。
これから手掛けていく700校20万人の生徒たちに電気を届けること、ベナン全土の200万人の子どもたちに勉強ができる環境を作ることが目標だと宣言。

「いずれ引退するときには、アフリカの若者に引き継いで、日本人がリスペクトされている状態にするために、アクセルはまだ踏み続けます。皆さんに宣言してしまった以上は負けたくないので、やります。『最後までやりきりましたね』と言われるように頑張ります」
と締めくくりました。

■川口 信弘氏のプロフィール

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産業用金属屋根の設計・施行会社である「株式会社川口スチール工業」3代目の社長に就任。下請けを脱するべく、超軽量の太陽光パネルの開発に取り組みます。数々の失敗を乗り越えて、アフリカおよび発展途上国に太陽光パネルを設置する事業をスタート。アフリカのベナン共和国で学校700校にソーラーパネルを設置し、200万人の子どもたちに電気を届けるべく活躍されています。

【川口氏のプロフィール】
・株式会社川口スチール工業 代表
・Kens.co 株式会社 代表
・一般社団法人GOOD ON ROOFS 専務理事

【川口氏の経歴】
・1965年 佐賀県鳥栖市生まれ
・2010年 太陽光パネル設置フレームを製造(特許取得)
      産業用太陽光発電ビジネスを開始
・2013年 太陽光発電ビジネスをKens.co株式会社として分社化
・2019年 一般社団法人 GOOD ON ROOFS 専務理事
・九州未来アワード2019(企業・団体部門)で大賞を受賞
・Forbes JAPAN SMALL GIANTS AWARD 2019-2020でグランプリ選出

GOOD ON ROOFS 公式HP

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