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デザイン思考を学んでみる。

今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
最近何かと「デザイン思考」という言葉を耳にするようになりました。
今週は、デザイン思考初心者である「中の人」がデザイン思考について紹介してみようと思います。

デザイン思考の定義

「デザイン思考」という言葉は「マーケティング」と同じくらい曖昧で抽象的なので、学習を進めるのに難儀します。なので、まずは「デザイン思考」とはなんなのかについて定義を見てみましょう。

『人々が生活の中で何を欲し、何を必要とするか』『製造、包装、マーケティング、販売、アフターサービスの方法について、人々が何を好み、何を嫌うのか』この二項目について直接観察し、徹底的に理解し、それによってイノベーションに活力を与えることである』

ティム・ブラウン『Design Thinking』2008

なんのことやら、よくわかりませんね。ティム・ブラウン氏はさらに簡潔な言葉でもまとめてくれているので、そっちも見てみましょう。

簡単にいうと、デザイナーの感性と手法で、人々のニーズと使用可能な技術をマッチングさせ、事業戦略として実行可能なものを顧客価値や市場機会に変換する学問である。

同上

(これ…簡単にいっているのか……?という疑問はさておき)
要するに、顧客の抱えるニーズから現行製品(またはサービス)の課題を見つけて、解決のための手法を創りましょう。ということのようです。
「あれ?普通のマーケティングと同じですやん。」って思うんですが、「デザイナーの感性と手法で」というところが肝のようです。デザイナー的な思考法を用いて解決していくのがデザイン思考なんだそうですよ。

デザイン思考の要件

デザイン思考をベースにしたイノベーションにはいくつかの条件があるそうです。それが下記です。

・人々が抱える課題が土台にあり、議論の出発点である
・提案される解決策が「人々にとっての有用性」の条件を満たす
・顧客が望んでいるか?妥当なバリュープロボジションが含まれるか?といった共感的な視点がある
・解決策を実施するためのリソースはあるか?などの技術的・経済的実現性

フィリップ・コトラー他『コトラーのH2Hマーケティング』KADOKAWAより
「中の人」による要約

デザイン思考で生み出される新しいアイデアは人間の視点・技術的な視点・経済的な視点という三つの要素の調和が取れていることが大切なのだそうです。コトラー氏曰く「そのアイデアの望ましさ(有用性)をまずチェックすること」だそうです。

マインドセットとしてのデザイン思考

デザイン思考をビジネスに組み込む上で、最も大切なマインドセットが「早期に頻繁に失敗する」ことなのだそう。
早い段階で失敗することで、早期に間違いを発見・修正を行うことができ、結果的にコストを抑えることができるからというのがコトラー氏の主張です。
そのため、デザイン思考に取り組もうとする企業には「失敗に対する許容度」と「開発プロセスの反復性への前向きな姿勢」が求められます。
失敗することを前提に進め、カイゼンを繰り返すというアジャイル型での開発プロセスが適していると言えますね。
また、コトラー氏はデザイン思考をする上で必要な思考パターンを挙げています。

・共感力
他の利害関係者の目で問題を見つめることができる
・統合的な思考力
一般的な分析を越え、問題のあらゆる側面や視点を考慮できる
・楽観的
今より良い解決策が大概あるとあると確信している
・実験的
既知の方法を手放し、斬新な方向で問題を探っていく(発想の転換)
・協働的
一層複雑な問題、商品、サービスを解決するためには、学際的な協力が必要となる

フィリップ・コトラー他『コトラーのH2Hマーケティング』KADOKAWA

デザイン思考の方法

デザイン思考のベースになっているのは、デザイナーの思考法と言われています。デザイナーがデザインを作り出す時にたどる思考プロセスを、ソリューション開発のプロセスに落とし込んだのが、下記のプロセスです。

理解

デザイン思考によるイノベーションのスタート地点は対処する問題を深く理解し、探索することなのだそうです。このステップの最後に、問題を探究した結果を可視化してまとめて、焦点を当てる問題の側面を選定します。

観察

このステップでは、ユーザーを観察して問題の中核だけでなく、広い視野で周りのあらゆる側面に目を向けて改善のヒントを探り出します。ユーザーインタビューや会場調査のような定性調査が適した調査法とされています。

視点の定義

ここでは、理解や観察のステップを通して抽出した問題や対象となるユーザーグループを定義してペルソナの視点を策定します。

アイデア出し

問題の抽出フェーズから、ソリューション開発への橋渡しを行うステップになります。ブレーンストーミングなどの手法を用いてソリューション候補を挙げていきます。その後、先に記している「デザイン思考の要件」を満たしているかの検証を行います。

プロトタイピング

アイデアの検証が終われば、それを具現化する=プロトタイプ(試作品)を作るステップです。このステップは、「最終ソリューションに向けた疑問に答えるための中間生成物を反復的に生成する段階」なのだそうです。アイデアをさらに研ぎ澄ますことが目的であり、失敗が前提です。失敗の中で想定外の疑問や必須要件を洗い出していくことがこのステップの終着点となります。

テスト

最終段階でユーザーにプロトタイプを体験してもらい、新しい洞察やフィードバックを得るステップです。ユーザーからのフィードバックを客観的に受け取るために、プロトタイプへの執着を捨てるべきだとされています。
テストの結果を受けて、これ以前の段階へと戻り、より優れたソリューションへと育てていきます。

まとめ

デザイン思考は、コモディティ化した市場で、技術を活かして、潜在的ニーズに応える新しい価値を創造するための手法です。人が抱える問題を起点に、ソリューションを開発していく思考法がデザイン思考と言えます。
「早期に頻繁に失敗する」という前提のもとで、理解→観察→視点の定義→アイデア出し→プロトタイピング→テストというプロセスを繰り返します。

あとがき

今週も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
デザイン思考、学んでいても抽象的で難しかったです。
ただ、デザイン思考もまた、未来を見通すことが難しくなってきた現代で、正確に課題の本質をおさえて解決に導くための手法として生まれてきたのではないかと感じました。
これからのビジネスにおいては、不確定な未来、予測ができないことを前提とする必要があります。その手法の一つがデザイン思考なのかもしれませんね。

一方で、デザイン思考を「斬新だが浅慮な目先のアイデアばかりにとらわれ、非現実的で根拠のない提案にとどまっている」と批判する声や、「デザイナー(主に代理店内のコーポレートデザインの実践者)を中心にしてきたことで、既存の不平等に挑戦するのではなく、不平等を強化することになった」と主張する声もあるそうです。

デザイン思考だけでなく、フレームワークなども含めて、どんな場面にも対応できる魔法の杖は存在しません。それぞれの特徴を理解し、強みを活かすも殺すも活用する人次第ということですかね。

「中の人」も一層学習を進めて、実践で使うことができるよう精進していきます。
それではまた来週お会いしましょう。

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