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『基礎からのIT担当者リテラシー』発刊に寄せて

2020年11月20日に技術評論社から発売される『基礎からのIT担当者リテラシー』という本を、情シスSlack管理人のひとりである横山さんと共著で執筆させていただきました。
監修は『IT用語図鑑』『図解まるわかり セキュリティのしくみ』など多数の技術書の著者として有名な増井敏克さんです。

本書の発売にあたり、
・どのような想いでこの本を書いたのか
・どのような経緯で執筆に至ったのか
・どのように執筆を進めてきたのか
をnoteにまとめておきます。

どんな本?

監修の増井さんが執筆された、『基礎からのプログラミングリテラシー』というプログラミング未経験者向けの技術書と同じシリーズの続編で、情シス未経験者向けの技術書です。

実際の章構成や目次は以下の公式ページをご覧ください。

デバイス、社内インフラ、セキュリティ、システムなど、IT担当者として最低限必要になる基礎知識を、非エンジニアの未経験者でも理解できるように解説しています。
なお、あえて「情シス」という言葉を使っていないのは、まだ「情シス」という言葉にもたどり着いておらず、社内のIT管理を任せられた人を読者として想定としているためです。
また、IT担当者だけでなく、「会社が大きくなりはじめてIT管理の必要性が高まってきたが、具体的にどのようなことをすればいいかわからない経営者」といった方も読者として想定しています。

技術的にひとつひとつ深堀りをしている訳ではなく、まずは全体感を把握して「どのようなことを学んでいけばいいのか」を知ってもらうための、「IT担当者(情シス)としての最初の一歩」のような一冊を想定しています。
ベテラン情シスの方々には既知の内容がほとんどかもしれませんが、未経験の新人情シスの教育などにもご活用いただけるかと思います。

執筆に至った経緯

企画自体は技術評論社の担当編集者の方と増井さんで立ち上げていただいており、実際の情シス経験者で執筆できる人を探していたそうです。
情シスSlackの存在を把握されていたので、管理人である横山さんに声がかかり、領域・ボリューム的にひとりで執筆するのが厳しそうだったので、一緒に執筆ができそうな人として横山さんからお声掛けをいただきました。
執筆未経験にも関わらずお声掛けをいただいて、本当に感謝しかありません。

情シスSlackについての詳細はこちらの横山さんのnoteをご覧ください。

なぜ執筆しようと思ったのか

実は本書の執筆の話をいただく前から、漠然と「情シスに関する本を書きたい」と考えていました。
というのも、世に出ている「情シス」と名のつく本を一通り読んでみたものの、開発メインの社内SEの話だったり、レガシーなオンプレ環境がメインで近年の実状とあまりに剥離がある内容だったり、しっくりくる本に出会えていませんでした。

また、情シスはシステムだけでなくインフラやセキュリティなど幅広い領域の知識が万遍なく必要になり、実務経験だけでそれを習得していくのは未経験者にはかなりハードルが高いため、その手助けになるような本があればいいなと考えていました。
私が1年半前からnoteなどでアウトプットをはじめたのも、「世の中の情シスのスキルを底上げしたい」という想いがあったため、それとマッチした本書の企画の内容を聞いて直ぐに快諾させていただきました。
「最初は技術書典あたりから始めてみようかな」と考えていたのが、まさかいきなりこのようなきちんとした形での執筆になるとは思っていなかったので驚きです。

執筆の流れ

私が実際に経験した執筆の流れについて解説します。

1.キックオフ
2020年1月中旬に、まずは編集者・執筆者全員が集まって顔合わせと企画内容の説明のキックオフミーティングを行いました。
本書は増井さんと編集者の方で章構成を組んでくれていたので企画内容自体はほぼ出来上がっており、私と横山さんがどの章を書くか分担を決めるのがメインでした。
実際に執筆を進める過程で、話の流れや実務を想定して「こう変えた方が良さそう」と案を出し合いながら章構成は当初のものから少し変えさせてもらったものの、大枠はそこまで変わっていません。

2.ツール
コロナ禍ということもあり、オフラインでの打ち合わせは最初の一度だけで、それ以降はすべてオンラインで完結しました。
コミュニケーションツールはSlackを使用し、質問や相談は随時Slackでやり取りをしていました。

原稿作成とレビューはGoogleドキュメント、スケジュール管理はスプレッドシート、進捗確認の打ち合わせはZoomと、すべてクラウドで完結する環境だったのでスムーズに進められました。
このあたりのツールは出版社や担当者によっても変わってくると思います。

3.執筆
私も横山さんも、本業がフルタイムだったので、執筆はプライベートや隙間時間を使って少しずつ進めていました。
コロナにより在宅勤務になったことで通勤時間がなくなり、執筆の時間を確保しやすかったのはタイミング的にラッキーだったかもしれません。

2020年1月中旬から少しずつ原稿を書き始め、初稿が上がったのが5月末なので、約90ページ分の初稿を書き終えるのに4ヶ月。
この頃はまだ執筆時間をアプリにメモっていたので、見返してみると合計40時間ほどかかっていたようです。平均すると週に10時間ほどでしょうか。
ちなみにこの時間は純粋に執筆にかかった時間のみなので、執筆を進める過程での調査や参考文献の読み込みも含めると、もう少し時間はかかっています。

4.レビュー
初稿があがったらほぼ完成かというと、そんなことはありません。
むしろレビューに入ってからの方が大変でした。
各自が担当する章ごとに原稿を書き、原稿を書き終えた段階で他のメンバーのレビューを受け、「原稿修正→レビュー」を繰り返していきます。

想像以上に大量の赤入れが返ってきます。
誤字脱字はもちろん、
・説明として間違っていないか
・話の流れとしておかしくないか
・想定読者の前提知識として理解可能な内容か
など、様々なコメントが飛び交います。
話の流れを考慮して、章の構成自体を組み直すこともあります。
これらを修正し、再度レビューしてもらう、というラリーをひたすら繰り返します。
私も横山さんも執筆未経験だったので、執筆経験豊富な増井さんにレビューしていただけて大変助かりました。
とにかく隙間時間を駆使してこなしたので、このあたりで私は執筆時間をメモすることを諦めました…

また、自身がレビューする際も細かい部分までチェックします。
今回は共著なので、
「この単語、ここで初めて出てくるんだっけ?」
「この説明、前の章でもしてなかった?」
「文体が変わりすぎでは?」
など、全体の整合を取るのがなかなか大変でした。
決して妥協はできないので、自分も「横山さん、ごめん…」と心の中で謝りながら容赦なく赤入れをさせてもらいました。

5.校正
原稿がある程度仕上がってくると、それらを取りまとめて書籍としての体裁に出版社がゲラとして起こしてくれます。
今回はオンラインで制作を進めているので、ゲラは紙ではなくPDFでやり取りをしていました。

また、書籍に使用するイラストもイラストレーターの方に発注をかけてもらっていたので、それらの仕上がりもチェックします。今回は初心者向け書籍ということで、イラストもほんわかしていてとても可愛らしいです。
Googleスライドの図形描画で作成したラフ図がきちんとしたイラストになって返ってくるありがたさ。
テキストだけの無機質だった原稿が、ゲラではイラストや装飾が付いて一気に書籍っぽくなり、「デザインの力ってすごい…!」と感動しました。
ゲラも一字一句内容を確認し、修正事項があればまた赤入れをして返す、という校正を繰り返していきます。

校了が10月の末頃だったので、初稿を書き終えるのに5ヶ月、そこからレビューと校正で5ヶ月と、同じくらいの期間がかかりました。
校正段階の方が実働時間が多かったので、感覚的には原稿作成の倍以上の時間がかかったように感じます。

校了後は出版社に原稿データを渡して入稿となり、執筆者としてはあとは無事に出版されるのを祈るばかりです。

執筆を経験して得たもの

初の執筆を実際に経験してみて想像以上に大変でしたが、得たものも沢山ありました。

1.知識の裏付け
書籍として世に出る以上、
「間違ったことは書けない」
「Webと違って後から修正できない」
というプレッシャーが大きかったです。

そのため、今まで実務を通して何となく知っていた知識でも、きちんと裏付けを取るために、インプットにもかなりの時間を割きました。
参考文献に適した本を探すために、いろんな書籍も読みました。
基礎的な知識を改めて学び直す良い機会になりました。

2.文章力
自分が書いた原稿を複数名にレビューしてもらえるので、自分の文章の癖や誤用に気付くことができました。
たとえば私は「~が必要になります」といった表現を多用する癖があったのですが、それらがすべて「~が必要です」に赤入れされていたり、他にも細かな文章の修正は数え切れないほどありました。

また、読者が読みやすいように全体の流れを意識したり、章や節の構成や粒度に違和感がないか考えたり、文章の構成力も上がりました。
1年前と比べて明らかに文章力が向上したので、これは今後のblog等の執筆にも大いに役立つように思います。

おわりに

2020年はほぼ1年間、この本の執筆に携わってきました。
本を書き進めるにつれ、「もっと良い本にしたい!」という気持ちが燃え上がってきて結果的にとても良い本になりましたし、全国のIT担当者や新人情シスの方々の役に立てば幸いです。

また、「自分も執筆をしてみたい!」という声も自分の周りでお聞きするので、ぜひ情シス関連の書籍執筆が今後盛り上がっていってほしいと思います。
自分自身もまた本を書いてみたいと考えているので、何かしら形にできるようにがんばります。

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電子書籍版も同日発売の予定です。



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