【台本】思いの欠片を抱き締めて
タイムアタック的な感じで昔書いた台本。
自分の通っていた保育園が合併無くなった時に書いた記憶!
配信アプリ等での使用・改変等はご自由に。
転載・自作発言・再配布はご遠慮ください。
クレジット(瀬尾時雨)は任意です。
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思いの欠片を抱き締めて
弦木 舞
尚希
夕奈
翔太
弦木 志穂
*金曜日の昼休み 食堂
舞 え、あかね保育園、閉園しちゃうの?
尚希 ああ。少子化が著しいからなー、田舎って。
夕奈 あ、わかる! 東京の友達、クラスの数も人数も多いって言ってた。
翔太 それなー。知ってるかー? あかね保育園に通ってたほとんどが県外に進路決めててさ、地元の大学に進むの俺らだけなんだって。
夕奈 そーなんだ、しょーちゃん物知りだね!
翔太 へへっ、そう褒めんなよ。
尚希 どうせ里沙さんから聞いたんだろ?
翔太 う・・・・・・そ、そうだよ。
舞 里沙さんってお姉さんだよね。今なにしてるの?
翔太 大阪で音楽の先生してるよ。
舞 そうなんだ!
夕奈 この間大阪行ったときに会ったけど、やっぱり美人だったよ!
尚希 俺も年始めに神社で会ったよ。
舞 えー、夕奈も尚くんもずるい!
尚希 丁度、初詣の時間が合ったんだよ。
夕奈 わたし、写真撮ってもらったんだ。ほら!
舞 わ、本当だ! 美人~。
翔太 ・・・・・・でさ、何話してたんだっけ!
尚希 あかね保育園が閉園するって話。
舞 あ、そうだったね!
夕奈 おお! やだ、寂しいね・・・・・・。
翔太 一回くらい遊びにいっときゃ良かったな~。
尚希 そう、その一回なんだけどさ、日曜に一般に向けて解放されるんだって。最後のチャンスらしいんだけど、それ行かないか?
舞 え、本当に?
尚希 ああ。
夕奈 行きたい!
翔太 俺も!
尚希 舞は?
舞 うん、行く!
尚希 オーケー。じゃあ日曜日の10時頃、一番近い人の家に集まろうか。この中だと・・・・・・。
舞 私の家かな? うん、大丈夫。
夕奈 おっけー!
翔太 おう!
尚希 そうだな。ーーと、昼休み終わるな。戻るか。
舞・夕奈・翔太 はーい。
*土曜日の夜 舞の家のリビング
お風呂上がりの舞と母・志穂
舞 お風呂あがったよー。
志穂 はーい。あ、ちょっと来て、舞!
舞 何?
志穂 この広告見てごらん。ほら、あかね保育園、閉園するんだって。知ってる?
舞 あ、うん。それでね、明日この一般解放、いつもの3人と行くつもり。
志穂 ふふ、そっか。あー、懐かしいわねぇ。あなたが保育園に入ったのは15年くらい前か。ねえ舞、覚えてる? あなた最初の日ね、「やだ、行きたくない、ママといるんだ」ってごねて!
舞 やだ、なにそれ覚えてない!
志穂 ふふ、そうよね。でもその日の帰り、あんなに嫌がってたあなたが満面の笑顔で「友達ができたよ」ってきらきらした目で話してくれて、本当に嬉しかったわ。
舞 それが、尚くんと、夕奈と、しょーちゃん?
志穂 ええ、そうよ! あのね舞、初めての友達とずっと仲が良いって、本当にすごいことなのよ。だから明日は、「はしゃいだら大人げないかも」なんて変な意地を張らずに、存分に楽しんでいらっしゃい!
舞 うん、楽しんでくる。ねえ、アルバムとか、ちょっと恥ずかしいけど絵とかないの?
志穂 ん~・・・・・・多分、押入の奥にしまい込んじゃってると思うの。明日、舞が帰ってくるまでに探しておくわね。
舞 うん、ありがとう!
志穂 さて、たまにはお母さんが髪を乾かしてあげるわ! こっちにいらっしゃい!
舞 え、恥ずかしいって。
志穂 もう、変な意地を張らないで、舞~。
舞 ええー。もう、しょうがないなぁ。今日だけだよ?
志穂 ふふ、やった! お母さん、ううん、ママ張り切るわね!
舞・志穂 あはは!
*日曜日の朝 舞の家の前
舞 あ、来た来た。 おはよう!
夕奈 やっぱりしょーちゃんが一番遅かったね!
翔太 なんだよ、時間ぴったりだろ?
尚希 5分前行動しようぜ。本当にぴったりすぎてさ。
翔太 そんな細かいこというなよ、もう今はグローバル社会だぜ? 海外だとちょっとくらいの誤差は普通だろ!
尚希 それ、この前丁度授業でやった知識だろ。それにここは日本だから。
翔太 ーーへへへ。
尚希 はあ。よし、揃ったところで行くか。
舞 うん。
志穂 みんな、おはよう。
尚希・夕奈・翔太 おはようございます!
志穂 あらあら、みんな大きくなって。翔太くんにも尚希くんにも身長抜かれちゃったわね。夕奈ちゃんは可愛くなって!
舞 あはは。お母さん、そろそろ行くね。
志穂 あら、そうね、時間だったわね! 気を付けて行ってらっしゃいね。
舞 うん!
夕奈 行ってきまーす!
翔太 よっしゃ、競争しようぜ!
尚希 しないしない。
*保育園 園内をみて回る4人
舞 そういえば、「しょくいんしつ」って、音の響きだけでいやな場所だなって覚えたなぁ。
夕奈 わかる! でも「せんせい」は好きだったなあ。そう思うと、音の響きで覚えてるって、逆に頭良さそう!
尚希 確かに。何年か経って「ああいう意味だったのか」とか思ったよな。「プールびらき」とか、「ゆうすずみかい」とか。
翔太 ゆうすずみかい、ってなんだったっけ? 花火を打ち上げたやつ?
尚希 そうそう。
舞 わ、懐かしい!
夕奈 ポン菓子、おいしかったよね!
舞・尚希・翔太 あ~!
尚希 っと、この部屋が端だったよな。
夕奈 あ、覚えてるよ。ここで確か、すみれ先生のピアノで歌って卒業式したよね。あとおゆうぎ会とか!
舞 そうそう、吉田すみれ先生!
翔太 ああそういや、その吉田先生なんだけど、先生になる前の姉貴の担当講師だったんだって!
舞・尚希・夕奈 へえー!
舞 わ、思ったより狭い・・・・・・!
尚希 成長したってことだなぁ。
夕奈 あ、何か置いてある!
翔太 マジかみようぜ!
舞 ・・・・・・あ、これ。写真とか、絵だ! うわぁ、こんな風に私も描いてたのかなぁ。
夕奈 懐かしいね、クレヨン! こっちは、折り紙!
尚希 手裏剣に、花に、風船?
舞 うん、そうだね! 他にも鶴とかカブト! あ、これ、授業で飾り付けた鏡じゃない? ずっと後の学年もやってたんだね。
翔太 縁の方にヒーロートムが描いてある!
尚希 はは、本当だ。不格好だけどがんばってる。
翔太 お、「ご自由にお食べください」・・・・・・これ何だ?
夕奈 あ、ポン菓子! 食べちゃえ! もぐもぐ・・・・・・、うわぁ、美味しいー!
舞 これ、学級日誌?
夕奈 そうそう! あったことを一言書くんだよね!
舞 「きょうはおはなのめがでました」「きょうはかれーでうれしかった」
夕奈 「すきなおんなのことはなしたよ」「おうたをがんばりました」
舞・夕奈 可愛い~!
翔太 うわー、これ制服か? ちっせえな~! 良く入ってたよな!
舞 しょーちゃんは本当に背が伸びたよね!
夕奈 ちょっと分けてほしいなぁ。
尚希 ーー確かに。
夕奈 尚くんはちょっと小さいもんね?
尚希 小さくない! 170cm、平均だ!
翔太 何ムキになってんだよ尚~、ちょっと分けてやろうか、ほれ!
尚希 くっそ、本当に高いよな、翔太、お前は。
翔太 180.5cmだぜ!
舞 高っ! ーーあれ、これなんだろ。
尚希 「来てくれたみなさんへ」、だって。
夕奈 なになに? 「今回、長らく愛してくださったこのあかね保育園は、閉園することになりました」
翔太 うわ、こんなの見てたら寂しくなるな!
夕奈 そうだね! うう、わたし泣きそう・・・・・・。
舞 あ、これ、お母さんの字、かも。
尚希 え、本当か?
夕奈 あ、このひらがなの書き方、そうかも! おばさんの字っぽい。
翔太 マジか!
舞 えっと、とりあえず読むね。
舞(→志穂)「そこで、今日の日のために多くの方々に協力して頂き、知恵を出し合い、貴重な品をお借りし、時間をかけて、卒園したみなさんやその家族のみなさんが共に歩んできたたくさんの奇跡の瞬間を心に刻んでもらえるようにと、このスペースを設けました。わたしも、ここで娘との時間をたくさん育んだ一人の母親です。わたしの娘は昔、かなり引っ込み思案で、入園してすぐは、行きたくない、ママといるんだとごねたものです。でもそんな娘が、友達ができたよと、きらきらした顔で報告してくれたあの瞬間は、本当に嬉しく、母として涙なくしてはいられないものでした。その後もその友達とはずっと仲良く、その子たちは今、高校を巣立つ準備をしているんですよ。時が過ぎるのは早いものですね。娘の誕生はつい昨日のことのようなのに、改めて思い返せば、数え切れない思い出がそこにはあります。ーーどうでしょう、厚かましいかもしれませんが、今、せっかくの機会ですから、一緒に、素直に、その思い出を振り返ってみましょう。そうして振り返った思い出の中に、このあかね保育園がわずかでもあり続けることでしょう。これから先の未来、ここを巣立った、またその巣立ちを見守ってきたみなさんの幸福をお祈りして 保護者代表 ツルキ」
夕奈 ツルキって、舞の名字のツルキと同じだよね?
舞 やっぱり、お母さんだ。
夕奈 え、本当?
舞 うん。昨日おんなじような話、ちょっとしたの。
尚希 ここか? 『かなり引っ込み思案で、入園してすぐは、行きたくない、ママといるんだとごねたものです。』
舞 うん。友達ができたよと、きらきらした顔でお母さんに話してくれたのよ、って。
翔太 そのみんなって。
舞 そうだよ。尚くんと、夕奈と、しょーちゃんのこと。
尚希 そうなんだ。
夕奈 うわー、嬉しい!
尚希 あれ、翔太泣いてる?
翔太 うるさいー! 尚、お前も目赤いし泣いてるぞ!
尚希 これはあれだ、寝不足だ。お、俺より夕奈の方が泣きそうだろ。
夕奈 わたし、目にまつげが入っちゃっただけだもん! ね、舞? ーー舞?
舞 あのね、昨日お母さんが言ったの。「初めての友達とずっと仲が良いことは、本当にすごいことだから、変な意地を張らずに、存分に楽しんでいらっしゃい!」って。だからわたし、本当に嬉しい。だから、今、涙、止まらない・・・・・・えへへ、かっこわるい。
夕奈 そだね、じゃあわたしもかっこわるいでいいや!
翔太 じゃ、俺もそれでいい! 尚希は寝不足なんだろ!
尚希 ち、がう! 昨日は7時間、健康的に寝た。
夕奈 え~、何それ!
尚希 なんだよ。
翔太 ばっかみてえ!
尚希 何だと?
翔太 なんだよ!
舞 あはは!!
夕奈 変な顔でケンカして変なの~!
4人 (笑い合う)
*日曜の夕方 舞の家
舞 ただいま!
志穂 おかえりなさい・・・・・・あらあら、どうしたのその顔! 何かあったの?
舞 お母さん、あのね、いろいろ聞いてほしいことがあるの! いっぱい!
志穂 うふふ、わかったわ。さ、手を洗っていらっしゃいな! ご飯、できてるわよ。
舞 うん。ーーありがとう!
志穂 ! ・・・・・・ふふ、どういたしまして。
舞・志穂 (笑い合う)
END
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