【小説】永遠の花子さん 前日譚

此方の台本の前日のお前日のお話。

当時、本当は書くつもりはなかったという裏話。笑


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クレジット(瀬尾時雨)の表記をお願いいたします。

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永遠の花子さん 前日譚



     *


「あれ? ここ、どこ?」

 私、花田 優子17歳は、少し前まで確かに何処か別の場所にいたはずだった。
 しかし、気がついてみれば、まったく分からない暗闇にいた。
 よく目を凝らしてみてみると、成るほどたくさんの扉が並び、出口らしい扉の付近には洗面所がある。
「ああ、学校のトイレだ」
 なんだか納得した瞬間、急にシリアスさに欠けた。認めたくはないが、結構怖かったのになんだこれ、酷い仕打ちだな。
 そんな感想に耽って、漸く私は自分の記憶について考え始めることができた。
「名前は花田優子、年は17歳。……学校の名前は、下前小学校、、尾野中学校……あぁ、星北高校。好きなものは……」
 うんうん唸りながら、脳内の手帳に片っ端から書いていく。何処かにペンはないものかと考えてみたけど、残念ここはトイレだ。
 記憶に頼るしかない。なんだか思い出したことも途中から曖昧で、途中で自分では理解できないようなこともあったが、一応口に出してみた。


 
 そうして数分後、思い出せることはだいたいすべて思い出した。
 趣味が漫画本の収集だったり(手塚治虫の漫画、特にアトムが好きだったことも思い出した)、隣の家の白い紀州犬の名前が何故か「ガマ」だったことも思い出した。――なんだ、ガマって。ガマガエルか!
 好き勝手に突っ込んでも誰も何も言わない。ただその代わり、いたずらに、微かに自分の声が反響するだけだったが。
 ただ、どうしても思い出せないこと。
「……じゃなくてね、落ち着け、花田 優子! だから、私はどうしてここにいるんだ!」
 ガマみたいな変な情報は思い出せるのに、重要なことが思い出せない。なんだか、ここにいる空間だけが時空の流れから遮断されているように思い出せない。
 しばらく考えて、私は、とにかくここから出ようと思い当たった。
 今までどうして思いつかなかったんだ、すごいじゃないの優子!と小さく感動してみたけれど、自画自賛していたら気持ち悪くなってきた。
 うだうだ考えても仕方がない。私は若干緊張しながらドアに近づく。
 そして、ゆっくりドアを開けた。

「ん?」
「ぎゃああああああ!!!」
 ドアを開けた瞬間、緑色の何かが目の前にいた。右手にきゅうり、背中に甲羅、頭に皿。
 まごう事なき河童だった。
 わたしは尻子玉を食われる前に何とかしないと、と思いつき、洗面所近くにあった石鹸のトレイで殴打する事と謎の呪文で応戦した。
「悪霊退散、悪霊退散! 会話許せど心は許すな! ええと、へのへのもへじへの河童、臨兵闘者皆陣烈在、前んんんんんんんん!!」
「おちつ、落ち着くさおじょうさ、ちょ、待って! 痛い! 呪文混ざってる、会話許せどってなんさ!?」
「いやあああああ、何すんだ、手を掴むな変態! 戦に勝つまで欲しがるなってああああぬるぬるするよぉぉぉ!!!」
「ぬるぬる!!! って、ああ、オイラの手?」

 結局、この攻防はおよそ15分続き、何とか収まった。


     *


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