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#7-1 人材育成のためのコミュニケーション「共通認識」から生む組織作りー岩下宏文さん

今回から番組の構成をリニューアルします

ゲストの方々との貴重な対談を、より深く視聴者の皆様にお届けしたい
という思いから、2週にわたる2部構成に変更いたします。


こんにちは。「ワーク・ライフチャレンジ〜未来をひらく私たちの働き方〜」7話目前編は人事制度コンサルタントとして、人事制度や女性のキャリアアップをワーク・ライフバランスの視点から取り組んでいるエピソードをお届けします。

本日は、一般社団法人LIFEイノベーション/代表理事をはじめとして、様々な活動をされている岩下 宏文(いわした ひろふみ)さんをお迎えし、長野県よりお送りいたします。

>>後編記事 #7-2 「人生100年時代」につながる越境学習。シニアのライフプランを描く新たな可能性

🔽プロフィール
岩下 宏文(いわした ひろふみ)さん
一般社団法人LIFEイノベーション 代表理事
活動拠点:長野県を中心に全国

1988年   八十二銀行入行 営業店・本部・出向(県1年・民間2年)
2013年   軽井沢支店長・伊那支店副支店長・伊那センター長
2019年〜  一般財団法人 長野経済研究所 出向中
2023年〜  長野県立大学大学院 ソーシャル・イノベーション研究科 在学中

人事制度設計コンサルティングおよび関連研修講師 
株式会社ワーク・ライフバランス認定上級コンサルタント
産学連携教育イノベーター育成プログラム(AIBET) 東北大学LAコース修了
生涯学習コーディネーター
八十二銀行では、企業再生支援業務などに従事。
現在は、一般財団法人 長野経済研究所にて人事制度の構築・変更に携わり、人事制度を通じて、「働き方改革」「ワーク・ライフバランス」をサポート。 
2023年4月より、長野県立大学大学院に在学中。合わせて、一般社団法人LIFEイノベーションを設立。働き方・学び方に関する調査・研究・課題解決にも取り組んでいる。


自己紹介

──本日お話しいただく岩下さんのプロフィールをご紹介します。

前川
 岩下さんは、勤務先の一般財団法人 長野経済研究所/主席コンサルタントとして人事制度コンサルティングを手掛けられ、 合わせて一般社団法人LIFEイノベーション/代表理事として働き方改革・学び直し・越境学習などをテーマに長野県を拠点に活動されています。

1988年、長野の八十二(はちじゅうに)銀行に入行し、自治体取引・企業再生支援・部店経営などに従事。途中、長野県庁への行政出向や、民間企業である製造業2社への再建支援を手掛けられました。

2019年より関連会社の長野経済研究所へ出向し、人事制度コンサルタントとして、人事制度構築や関連研修等で活躍されています。2023年より長野県立大学大学院ソーシャル・イノベーション研究科にて、イノベーションや社会課題解決について学びながら、同年9月には、一般社団法人LIFEイノベーションを設立され、大学院での調査・研究、プロボノ活動をされています。

ワーク・ライフバランスとの出会い

──具体的な岩下さんの活動内容を、お伺いできますでしょうか。

岩下さん
 はい、ご紹介ありがとうございます。八十二銀行で企業再生支援に関わっていた経験を生かし、現在は関連会社の一般財団法人 長野経済研究所へ出向して人事制度コンサルタントとして対応しています。

具体的な仕事の内容としては、人事制度の構築、変更に関するご相談に対応しています。人事制度を通じた働き方改革やワーク・ライフバランスの実現に向けて、企業をサポートし、2023年の4月からは長野県立大学の大学院で学びながら、自身で法人を立ち上げて 働き方、学び方に関する研究にも取り組んでおります。


前川
 はい、ありがとうございます。

人事制度改革と「ワーク・ライフバランス」の繋がり

── 一般財団法人 長野経済研究所の人事制度コンサルタントとして、ワーク・ライフバランスに取り組まれたきっかけをお伺いできますでしょうか。

岩下さん 2019年から一般財団法人 長野経済研究所で企業の人事制度のコンサルティングを始めました。 人事制度を整備することは重要ですが、制度だけを直しても、組織はなかなか良くなりません。

組織を変えていくには、社員の働き方自体を変える必要があると感じ、ワーク・ライフバランスの取り組みが重要だと考えました。ちょうどその頃に、小室さんの本を読んで共感しまして、2020年1月にワーク・ライフバランスコンサルタント養成講座を受講したのが転機になっています。


ワーク・ライフバランスの取り組み

人事制度から見る「ジェンダーギャップの理想と現実」

──人事制度の見直しに加え、ワーク・ライフバランスを取り組む背景には、具体的にどのような課題や問題意識があったのでしょうか。

岩下さん 人事制度の現状分析を行うことで、賃金や役職の男女といった ジェンダーギャップに関するデータが可視化できます。

一見、男女の差がないような人事制度に見えても、実際には長時間労働を前提とした制度運用になっているケース運用が多く、結果として、残業や休日出勤にも対応して、長時間働く男性が有利に評価されて管理職になるという傾向があります。

それから、1986年に男女雇用機会均等法が施行されましたが、その後も多くの女性は、正規雇用で働き続けるということができませんでした。

特に、男女雇用機会均等法初期の女性の総合職は、制度自体が不十分であるということに加えて前例がないとか、周囲の理解がないということで、育児との両立が難しく、キャリア自体を中断し非正規雇用へ転換する方が大半でした。これが、現在の女性管理職の比率が低いという要因の1つになっています。


前川
 そういった要因があるのですね。


岩下さん
 そうですね。現在、定年前後の女性は、パートや契約社員は非正規雇用で働く割合が高く、正社員の方も、役職のないポジションについている方が大半です。元々の賃金が低いので、定年後の再雇用でも賃金が低くなるという傾向にあります。

女性が出産、育児を経験しても正社員で働き続けて、キャリアアップしていけるという環境や仕組みを整備することが重要だという風に考えています。育児休業制度の拡充といったものだけではなく、 柔軟な働き方の導入や、男女の性別役割分担意識の転換といった、社会全体で 女性が働きやすい環境を整備していく必要があります。


2023年ノーベル経済学賞受賞【なぜ男女の賃金に格差があるのか】 女性の生き方の経済学 
クラウディア・ゴールディン   岩下さん読書記録Instagram @h.iwasanより


松本
 ありがとうございます。2016年から女性活躍推進法が施行されて、 随分環境が良くなってきたかと思っておりますが、女性がキャリアアップしていくにはまだ厳しさを感じます。私も、初めての育休は「どのように取得したらキャリアアップへの影響が最小限になるだろうか」と考えたりもしました。

結局、出産するとキャリアアップを考える暇などなく、日々の育児で精一杯でした。それと、元職場には数名の女性管理職の先輩方がおり、憧れを持ったのと同時に、私には管理職のような働き方は無理だと思いました。

先輩方は出産、育児をご経験の方や介護と両立されている方もいらっしゃいましたが、 大変なご苦労と努力があったのだろうと、岩下さんのお話から感じました。


前川
 ありがとうございます。松本さん、4人の育休を経て復帰されているので、仕事と育児の両立は本当に大変だったと想像します。

人事制度は運用がカギ。そのポイント

──人事制度を見直した中で、持続的な効果を維持するために、どのような取り組みが必要なのでしょうか。

岩下さん ワーク・ライフバランスの取り組みにも繋がりますが、人事制度や人事の仕組みは、その運用が最も重要だという風に考えております。どんなに素晴らしい制度を導入しても、運用できなければ効果を発揮することはできません。

評価制度を例に取ると、 100社あれば100通りの評価制度があると言われるように、制度の良し悪しよりも、実際どのように運用していくが重要になります。多くの企業では、仕組みに問題があると安易に結論づけて、制度の改正に手を付けます。

しかし、必ずしも、制度が原因とは限りません。むしろ、既存の制度やルールの運用を見直すことで、人事制度もワーク・ライフバランスも成果を上げられるといったケースもあると感じています。


前川
 ありがとうございます。一般財団法人 長野経済研究所のホームページから人事制度のコラムを拝見しまして、とてもわかりやすいと思って拝見しておりました。

人事制度は、制度を定着させ、組織に根付かせることが難しいという課題があるのだなという風に、今のお話伺って感じました。 やはり女性が働きやすい環境を整えるためにも、「制度の定着が重要」ということを、ワーク・ライフバランスという視点からもアプローチされているなという風に感じました。


岩下さん
 そうですね。人事制度の導入や改定は、企業の成長、それから社員のモチベーション向上、 組織の活性化といったことを目的として行われています。具体的には、既存制度の問題点を解消したり、公平な評価制度を作ったり、それから多様な働き方の実現のための取り組みです。

これを実現するには、経営者自らが制度の運用を徹底し、社員の一人一人の働き方や意識改革を促すことが重要です。ワーク・ライフバランスの取り組みは、人事制度の見直しを促し、より多様な人材が活躍できる組織へと変革を促します。

人事制度構築をサポートする仕事をしておりますが、制度設計だけではなく、社員の働き方改革といった、より広範な視点から企業を支援していきたいと考えております。


松本
 ありがとうございます。私も行政での経験をしましたが、人事制度の見直しは必要ではないかと感じたことが多々ありました。1番身近に感じたのは評価制度です。 今でいう1 on 1、個人面談を上司と行ったりしましたが、その結果がどのように反映していたかは正直わかりませんでした。

そこは私もきちんと制度を理解していく姿勢が必要だったと思いました。その面談で話し合うことにより、管理する側の「人事制度に対する考え方」についても理解する機会だったなと思い返しました。


前川
 ありがとうございます。 岩下さんの人事制度設計が、その組織に合った運用によって、働き方や意識改革につながって、ワーク・ライフバランスの実現につながるという内容は、 大変わかりやすかったです。やはり松本さんの現場サイドのお話も、面談によって意見がどう反映されていたかという、フィードバックの仕組みがあれば、運用するにあたって、より機能していくのではないかと感じました。


【人材育成・人事の教科書】 Harvard Business Review
⚫︎シニア世代を競争優位に変える ⚫︎ピープルアナリティクスで 人事戦略が変わる ⚫︎終身雇用を捨てよう  岩下さん読書記録Instagram @h.iwasanより


効果が上がる!1on1の進め方

──フィードバックの仕組みについてポイントをお伺いしたいです。

岩下さん 今、面談とか、1 on 1という話が出てきましたが、やはり上司と部下でよく話をする、共通認識を持つということが大事で、目標設定の段階から途中の管理、 それから最後の評価のところまで、話し合いを頻繁に持って、共通認識を2人で醸成していくということが一番大事だという風に思います。

前川 ありがとうございます。当時、松本さんの時は、共通認識を持つということはされておりましたか。

松本 なかったと思います。私の中では「やらないといけないからやる。進める。」といったようなところもあったのではないかなと思います。

前川 そういったやらされ感で進めている現場はやはり多いのでしょうか。

岩下さん そうですね。仕組みとして、ここで面談をするようになっているから、しょうがなくやる。 準備も不十分で、上司の側も、なんとなくやっているというようなところがあって、そういうものはやはり効果が乏しいです。

前川 そこで、共通認識を持てるように、コンサルティングに入られて、お話されているような感じなのですね。


岩下さん
 はい、そうですね。コンサルティングでは、お伝えはしますけれど、実際の運用はそれぞれの職場で行っていくので、やはり会社それぞれの組織で、運用していくことが大事だということになります。

共通認識を持つ、確認するのは、期末と年度の始めと終わりでもいいです。年度の終わりにどうなっていたいかとういう状態を、上司と部下で、同じイメージにしていくということが大事です。「この業務はこの時までに、こういう状態にしてほしい。」と、上司の思っていることと部下が思っていることが同じでないと、当然結果が出ないです。

そういうことを目標設定の時と、中間での面談を通じて、すり合わせをし、同じ共通認識で共通のゴールのイメージがあれば、結果はそんなに違わないはずです。しかし、考えているものが違い、共通認識がないと、全然、違う結果になるということになります。


松本
 面談では、フィードバックはやりますが、今、仰っていた共通認識の部分がないままフィードバックだけやっていたと感じなので、やらされ感を持ちつつ、「どうだったか。」を話しておりました。

評価するための表があったのですが、それを元に、読み合わせているという感じがあったので、やっぱり、最初の共通認識、共通の目標のすり合わせは、大事だったなと思いました。岩下さん、ありがとうございます。


岩下さん
 フィードバックで結果だけ伝えることはよくあると思いますが、その時にできなかったもの、できたものも、来期はどうしようか、 次期はどうしようという話を一緒にしないと、共通認識ができません。

結果を伝えるだけではなく、 「この先は、どういう風にしようか。次は何に取り組もうか。」ということをお互いに持つということが大事だという風に思います。


前川
 会社の皆さん、是非、共通認識を持つということをやっていただきたいなと思います。

──岩下さんは大学院にも通われているかと思いますが、それもワーク・ライフバランスの取り組みにつながっているのでしょうか。

岩下さん はい、ありがとうございます。私のワーク・ライフバランスについての捉え方ですが、 女性の活躍といった視点だけではなくて、シニア層の働き方、それから通常の業務以外での学び、そういったものの領域まで広げて考えています。

勤務先で通常の業務は、人事制度構築やアドバイスが中心です。働き方改革そのものを専門とするコンサルティングというよりも、むしろシニア人材の活用やキャリア自立の支援といった、より広義のワーク・ライフバランスの実現に向けた活動に力を入れています。それから、大学院では、越境学習や越境体験といった組織の枠を超えた学び、そういったものに関しても取り組んでおります。

あと、多くの金融機関と同じですけれど、私の勤務先でも副業、 兼業といったものが禁止になっているということもありますので、個人での対外的な活動は基本的には無償で行っています。週末や有休などを活用して、知人や経営者との勉強会、そういった場で自分の知識や経験を共有する機会を設けております。


前川
 ありがとうございます。 このシニア層の働き方というところに関して活動されているということですが、「人生100年時代」と言われている今、やはり多くの方々が自分らしいライフプランに興味を持っているのかなっていう風に思います。はい、私もすごく興味があります。

次週、「人生100年時代」につながる、大学院で学んでいる「越境学習」「越境体験」について、お話を伺っていきたいと思います。


松本
 私も越境学習、越境体験については大変興味があるので、楽しみです。


前川
 ありがとうございます。岩下さん、来週もぜひよろしくお願いいたします。


岩下さん
 ありがとうございます。来週もよろしくお願いします。

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株式会社ワーク・ライフバランス 
経営戦略としてのワーク・ライフバランス福利厚生の一環ではなく、企業業績向上のために。 現代の社会構造に適応し人材が結果を出し続ける環境を構築する「サスティナブルな働き方改革」のプロフェッショナル集団です。


🔽似顔絵イラスト
大家 三佳
東京在住、京都造形芸術大学卒。子育てをしながら、水彩画、ドローイングを中心に人、食べ物、動物を描くイラストレーター。パッケージやポスター、グッズなど幅広い分野で活躍中。透明感のある優しいタッチで、日常の風景や人物を描く。ペーターズギャラリーコンペ2014 宮古美智代さん賞受賞など。


編集、プロデュース、インタビュー:前川美紀(ワーク・ライフチャレンジ プロジェクト代表/ブランディングディレクター)
note編集:松本美奈子(次世代こども教育コンサルタント/認定ワーク・ライフバランスコンサルタント)


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