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EMARF3.0ローンチ記念イベント「アフターコロナの建築ものづくり」開催レポート Vol. 1

建築テック系スタートアップVUILD(ヴィルド)株式会社では、5月27日に「EMARF 3.0」のローンチを記念し「アフターコロナの建築ものづくり」をテーマにオンラインイベントを開催しました。第一線で活躍する構造家3名と建築家3社をゲストにお招きし、500名を超える方々にも視聴していただきました。この記事を皮切りに、3部に分けてイベントレポートを公開させていただきます。

建築・設計業界では、図面作成などをはじめとして、ほとんどの打合せが対面(オフライン)で行われてきました。しかし、昨今の新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大防止策のひとつとして、本業界でもリモートをベースとした働き方への早急な移行が求められています。

イベント当日にVUILDがローンチした「EMARF 3.0」は、オフラインでの打合せを一切必要とせず、設計から加工依頼まですべてオンライン上で完結できる仕組みを提供する、日本初のクラウドプレカットサービスです。イベントでは、アフターコロナの時代にあって建築ものづくりはいかに可能か、分散型ものづくりの可能性を模索します。

頭と手を、クラウドで繋ぐ

秋吉 本日はご参加、ご視聴いただきありがとうございます。私は、建築家として活動もしていますが、起業家としてVUILD株式会社というスタートアップの経営もしています。

今日のテーマは「アフターコロナの建築ものづくり」です。よく言われているように、パンデミックは、建築や都市のあり方を変えてきましたが、最も重要なのは人々の価値観を変えてきたことだと考えています。これまでは、経済の拡大・成長を目指して、各々が競い合い、人々を密集させ管理をし、さらには消費と破壊を促進してきた時代だったわけですが、今回のCOVID-19はそれらの価値観を見直す機会になるのではないかと思っています。

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なぜ、人は都市に密集するのでしょうか。それは、生活を豊かにするための最も合理的な手段だと考えられているからです。こうした前提を覆して、生き生きとした社会を実現するためには、各々が思い描いた暮らしを自分たち自身でつくれるようにすることです。なぜそうできないのか。私が思うに、考えることとつくることの間に大きな専門性の溝が存在しているからです。

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特に構想から実現までの間に、様々なプロセスが絡み合っています。設計者と施工者の職能分離が起きて以降、今ではCADなどのソフトウェア自体が複雑化・多様化し、そのプロセスはどんどん冗長化しています。

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元来の頭と手が一緒になっている状態に戻したい、デジタル技術によってプロセスを省略したいと思ってつくったのが「EMARF」という仕組みです。今日(2020年5月27日)の14時頃にリリースしたこのサービスを説明する動画をご覧ください。

通常、平面的に展開した図面を描かなければいけないものも、自動でできます。ボタンひとつでCADからウェブ上のEMARFに飛ぶと、個数や材種を選択でき、金額の見積りが1秒単位で出てきます。そのままオンラインでデータ入稿して発注できるというサービスです。

これまで、図面を引いて、施工者に見積りを依頼し、それを元にまた設計を編集していくという時間のかかる頻繁なやりとりがありました。EMARFは、自らの手で経済性や実現可能性を検証しながら設計を進め、カットされた部品を受け取ってものづくりができるという仕組みです。主に、①設計時点で条件や実現性を判断でき、手戻りがなくなる、②施工者とのやりとりが省け、見積りも自ら出せる、③設計時のイメージと実際の建築物のギャップが少ない、④機械による加工でコストも低く、複雑なデザインにも対応できるという4つのメリットがあります。

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これによって、徹底的に表現を模索できるようになると考えています。設計に用いるCADにプラグインをダウンロードして適用させることで、シミュレーションを見ながら発注することができます。プラグインのなかには、ものづくりを行うための接合部や配置、刃物の逃げとなるフィレットなどを自動で生成してくれる便利な機能があります。

Rhinoceros、AutoCAD、Adobe Illustrator、Vectorworksなどに対応しています。今後は、すべてのCADやBIMソフトに対応し、さらに今後はShopbotだけではなく、5軸の大型加工機にも接続を行っていきたいと考えています。

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現在は全国51拠点ですが、日本中どこにいても、近場で材料を調達して自由にものづくりができます。

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最後に、「デジタルファブリケーション」という領域が出現してから、なぜ今に至るまで社会に浸透しなかったかを考えたいと思います。それは、新しい道具が発生しても人間の創造性がそれに追いついていかないからではないでしょうか。ロボット・エンジニアのホッド・リプソンは、こうした創造性の欠如を「アールグレイ症候群」と呼んでいます。映画『スタートレック』で、なんでもつくることができる「レプリケーター(Replicator)」という機械があっても、毎度アールグレイしか頼まない人に因んでいます。今ご覧になっている皆さんのようなプロは、新しい技術に対して新しい使い方を提示できると考えています。アップルも、元々はプロの表現を加速・促進するためのコンピュータと技術提供を行ってきました。そういった土壌があったからこそ、今、皆さんの手元にスマートフォンがあり、また、人々がコンテンツを生産して共有するという文化が生まれたわけです。同様に、皆さんがEMARFという新しい道具を使って、新しい建築運動、建築文化を生んでいくような旗振り役になってほしいと思っています。

[2020年5月27日YouTube Liveにて開催]
text by millegraph[株式会社ミルグラフ]

▼開催レポート Vol. 2はこちら


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