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分野の壁を超えるボーダレスなものづくり【株式会社竹中工務店×VUILD】

VUILDが2020年4月にローンチした「EMARF」のサービスチームでは、個人のお客様のみならず法人様にも使っていただけるよう、家具設計のみならず内装設計やパビリオン制作などのプロジェクトにおける、協業やアドバイスを行っています。

その中から、株式会社竹中工務店の設計部設備部門でご活躍されている海野玄陽さんに、EMARFを用いた今回のパーソナル空調家具開発プロジェクトについて話を聞きました。

▶︎ 今回製作されたものを教えてください。

空調と一体化した机と椅子を製作しました。コロナ禍の昨今、多くの建物が部屋の換気量を増やす方向に動いており、従来のように部屋全体の空気を暖めたり冷やしたりする空調方式は非効率的です。

今後は人体周りの空気を局所的に冷暖房することがより一層大事になってくるのではないかと考え、今回の製作に至りました。

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▶︎ EMARFを活用していただいた理由を教えてください。

EMARFは、計画している建築空間にマッチした家具を自由に、かつ安価に製作することができます。空調や照明器具の取り付けスペースや配線スペースも製作物に取り入れることができます。そのような展開可能性を見据えて、今回EMARFに取り組んでみました。

▶︎ それを踏まえて、今回製作されたものの狙いを教えてください。

世の中に2つと同じ建築はありませんが、一つ一つの建築空間に対して個別にフィットし、かつ空調や照明とも一体化された家具を作れると思っています。

今回製作した椅子は、窓枠に荷重を乗せることではじめて安定する形態にしており、建築空間とインテグレートされた家具であることをアピールしています。

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更に内部にファンを仕込み、座った人を検知して風が出る仕組みになっています。いずれ空調や照明といった建築設備、椅子などの家具、内装が一体化したインテリアを、実プロジェクトで実現したいと考えています。

そのためには、まずは社内を説得する必要があります。上述した展開可能性を目に見える形で社内的にアピールするため、製作した空調家具をオフィスフロアの目につきやすい位置に設置しました。

201102_送付_ファン・センサ・ツマミ等設置場所(ドラッグされました)

▶︎ VUILDとは、具体的にどのように協業していったのでしょうか?

こちらで作成したRhinocerosのモデルを共有した上で、WEBミーティングにて「首のところが弱いから部材の量を増やした方がいい」というような構造上のアドバイスを頂きました。また、相欠きなど接合部のモデリングをサポートして頂きました。

▶︎ 実際の工程はいかがでしたか?

実際に組み立てる手順からファンを仕込むスペース、配線スペースまで、全て自らモデリングできたということはかなり良い経験になりました。協業しているとはいえ、モデリングした形状がそのまま切削されるため、細かいディテールも含めてデザインの決定権はあくまで設計者にあります。モデリング=完成形というところまでRhinoモデルを詰めていきました。

また、今回製作した椅子は部材を格子状ではなく放射状に組んでいます。私は椅子の奥部に仕込んだファンから出る風が人間の中心に向かって吹くことを意図して放射状に組んだのですが、現地での組立ての際、VUILDの大工さんに「放射状に組むことによって、接着剤を使わずに部材を組み上げられる」ということを教えて頂きました。異なる視点で見てくださったことで、新しい発見がありました。

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▶︎ 組み立てはどのように行ったのでしょうか?

今回組み立てはVUILDさんと一緒に行いました。最初は時間をかけてでも弊社側でやろうと思っていたのですが、組み立てに慣れていない人が組み立てを行うと、望まない箇所に応力がかかって割れてしまう可能性があると指摘していただいたので、ある程度のところまではVUILDさんの工場で組み立てて頂きました。その上で、最終的な仕上げを現地で一緒に行いました。

今回はサポートして頂きましたが、施工業者を介さず自分たちだけで組み立てられるということには非常に可能性を感じました。例えば建築主も一緒に組み立てに参画することで、建築や家具に対する愛着も生まれていくだろうし、完成後に何か不具合が起こったときも、例えば彼ら自身がShopBotで新しいパーツを切り出して補修していく、というような運用プロセスが生まれる展開もあり得ますよね。

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▶︎ 今回の製作を踏まえて、今後どのようなことを期待しますか?

EMARFは、設備機器と組み合わせることで可能性がもっともっと広がっていくのではと思っています。空調が一体化された家具自体は既に市場に出回っていますが、それらの多くは家具自体が熱源を持っていたり、冷媒配管を接続する必要があったりとフレキシビリティに欠けることが多くあります。その解決策として、私が考えてるのは、アンダーフロア空調とEMARFを組み合わせた家具の在り方です。

アンダーフロア空調とは、二重床の中に空気を送り込み、床面に設置された小型のファンから室内に空調空気を供給する方式です。アンダーフロア空調とファンを組み込んだ家具を組み合わせ、床内空気を家具を通して直接人体に当てることで、こたつのようなウォームスポットができあがります。これまで人が集まる場所は基本的に建築側が主導して計画してきましたが、今後は設備を起点にした場所作りを計画していけると感じました。

▶︎ 今回のプロジェクトは、海野さんにとってどのような経験になりましたか?

ShopBotを使った製作自体初めてでしたし、モデリングしたものがそのまま形になるという体験は、3Dプリンター以外では初めての経験でした。

201102_送付_ファン・センサ・ツマミ等設置場所

今回製作したものは、社内のエレベーターを降りるとすぐ目に入るところに展示しています。興味を持った他部門の設計者が近づいてくる度に突発的にプレゼンテーションを行い、「次のプロジェクトでこういうことを一緒にやろう」と話しています。みんな乗り気になってくれますね。

▶︎ 製作の中で、「初心に戻れた」と感じた場面もあったとか。

そうなんです!ゼネコンに就職すると作図指示を出したり図面をチェックしたりと、管理の立場にまわることが業務の大半を占めてしまい、自分でデザインしたものが形になる実感を得られるのはプロジェクトの竣工時くらいのものです。また、就職してから学生時代の模型作成のように自分で手を動かしてものをつくることは殆ど無くなりました。

元々ものづくりが好きで建築業界に入ったので、自分の頭で考え、手を動かしてものを作る今回の経験は、初心を思い出して心にきました(笑)。

▶︎ 社内からはどのような反響がありましたか?

社内のSNSでは、沢山の人から「面白い」「わくわくする」「自分もやってみたい」などの感想を頂きました。

私が作ったものを見た人たちが、何かしらの可能性を感じ、社内からもどんどん新しいアイディアが出てきたらいいなと思っています。

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企画・製作 :竹中工務店設計部設備部門 海野玄陽
協力 :同社 上杉崇、牧野幸太郎、正田智樹

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