アジアンパンクRPG「サタスペ」で君も亜細亜の虎になれ【システム紹介記事】

はじめに

この記事は「アジアンパンクRPG サタスペ(著:河嶋陶一朗ほか/冒険企画局 発売:新紀元社)」の紹介を目的としています。

本記事は、「冒険支援株式会社」が権利を有する「アジアンパンクRPG サタスペ」の二次創作です。

1. システム概要

アジアンパンクRPG サタスペ(以下、“サタスペ”)とは、冒険企画局制作のTRPG(テーブルトーク・ロールプレイングゲーム)である。
我々の住む現実とは若干異なる歴史を辿った日本の巨大な犯罪都市「大阪」を舞台に、プレイヤーの操るキャラクターである「亜侠」達がクライム・アクションを繰り広げる……というシステムになっている。

このため、“サタスペ”はファンタジー世界の冒険者日常と非日常の狭間で戦う異能力者となって遊ぶ他のルールシステムとは趣を異にしている。
“サタスペ”におけるPCはどこにでもいるごく普通の(裏社会に片足を突っ込んだだけの)人間であり、ルール・世界観ともに「ケチなチンピラ達が巨大犯罪組織犇めく大都市で命懸けのビジネスに右往左往する」といったテイストのゲーム体験を楽しむことに主眼を置いているのだ。

2. 世界観

“サタスペ”の世界観は現代風でありながら、我々のそれとは大きく異なる。
サタスペにおける世界史では、第二次世界大戦勃発時になんとナチスドイツが電撃的勝利を収めている。参戦しなかった日米間には不穏な緊張が走り、遂には1962年に日米間で核戦争が勃発してしまう。
日米核戦争では大阪を除く日本の主要都市が焦土と化し、帝都東京が都市機能を喪失するに至った。

敗戦の後、列強に分割統治された日本はソ連、アメリカ、ドイツ、中国の領土に切り分けられてしまう
そして最後に近畿地方を統治下に置いた国連によって、列強による分割統治の空白地帯――「近畿特別区・大阪」が生まれた。

ゼロに近い税金と市場開放によって、近畿特別区には企業とカネとモノが集まる。戦後の大阪は瞬く間に世界有数の貿易経済都市へと変貌を遂げることになった。
それは同時に、あらゆる国からの出稼ぎ労働者や利権を狙う犯罪組織の流入をも招くことになった。故に、本システムにおける大阪は世界有数の犯罪都市として、表社会からも裏社会からもあらゆる可能性が集まってくる。
列強の軍隊や警察機構が重点的に目を光らせている都市部を離れれば殺人事件や銃撃戦すら日常茶飯事となる、まさに悪徳の都であろう。

あらゆる物資が集まり、巨大な犯罪組織が経済を牛耳る街。
あらゆる国家の文化が集まり、猥雑に混じり合って形成された街。
そしてあらゆる危険が集まり、成り上がりの機会が転がる街。
混沌渦巻く亜細亜最大の犯罪都市が、PC達の冒険の舞台なのだ。

そんな“サタスペ”の大阪は現在、五大盟約と呼ばれる5つの犯罪組織によって牛耳られている。五大盟約は縄張りとするエリアが分かれており、その母体・思想・文化もそれぞれで異なっている。

具体的には
・中華街に根を張る権謀術策のチャイニーズマフィア「大幇
・東淀川の下町エリア、十三を本拠地とする極道「地獄組
・梅田の官庁街、市警本部に拠点を置く「大阪市警
・大阪港の陰鬱な工場街を仕切るロシアンマフィア「コンビナート
・淀川下流に浮かぶ東洋最大のスラムに集う難民連合「沙京流氓
の5つが大阪を実質的に支配している。

大幇は大阪に住む華僑達の互助組織を基盤として発展した「同族・同郷・同業」を旨とする組織であり、血縁社会による強固な結束を誇る。
情報網の広さや精度は五大盟約随一であり、街と結びついて社会の裏表を牛耳っている。

地獄組は昔ながらのヤクザ組織である。構成員達は「仁義」の不文律を守り、「面子」「男」というプライドを重視する傾向にある。
組の看板に泥を塗る者は落とし前をつけなければならないし、組を侮る部外者には容赦のない報復を下すだろう。

大阪市警は警察機構でありながら「犯罪を取り締まるため犯罪者を傭兵として雇う」という顧問刑事制度によって悪徳警官の巣窟と化している。
治安維持は二の次で、適当な事を口実に検挙してくる。逮捕されたが最後、違法な保釈金や法外な罰金を巻き上げられるだろう。

コンビナートはソビエトから流れてきた軍人崩れのギャング団である。人数こそ少ないが全員が戦闘のプロであり、武装のレベルも高い。
彼らの縄張りで暴れる際は、それが軍隊レベルの武力を相手取ることと同義であることを考慮した上で動かなくてはならない。

沙京流氓は東洋最大の貧民窟「沙京」を根城とする犯罪組織である。沙京は大阪の他地域から締め出された無法地帯であり、あらゆる悪徳が罷り通る。失うものの無いならず者の集団である彼らには、面子も建前も存在しない。貧民窟に足を踏み入れる際は、十分に気をつけるべきである。

一筋縄ではいかない犯罪組織が犇めく大阪で、PC達はいずれの盟約にも属していない(属せない)半端者として大阪で冒険を繰り広げる。
大阪におけるプレイヤーの分身・亜侠については次項で述べる。

3. プレイヤーキャラクター・亜侠

ゲームプレイヤーの分身たる、プレイヤーキャラクター(PC)達は大阪で"亜侠"と呼ばれる存在として事件に関わっていく。その意味は判然とせず、亜流の侠だとか亜細亜の侠だとかだと解釈されている。

亜侠の実態は、何らかの「表の顔」を持ちつつ大阪の裏社会でのし上がろうとしている者達である。亜侠とは犯罪組織の幹部や汚職警官に代表されるようなプロの犯罪者になり切れていない、裏社会の半端者なのだ。

そんなPC達は「肉体」「精神」「犯罪」「生活」「恋愛」「教養」「戦闘」の7種類の能力値を持っている。
この内「肉体」「精神」の2種は先天的な素質として「天分値」と呼ばれ、それ以外は環境的な素養として「環境値」と呼ばれている。

肉体」「精神」は文字通り肉体の頑健さや精神の強さを示す。
犯罪」はそのPCの広義の器用さを表す。足を使った情報収集の他、身を隠したり、人を騙したり、不意打ちで攻撃を行う際の判定に使用される。
生活」はそのPCの財力と社会的影響力を表す。主に財力を活かした情報収集やアイテムの調達のための判定などに効果を発揮する。
恋愛」はそのPCの容姿や感性による恋愛力を表す。異性との恋愛を駆使した情報収集の他、「ロマンス」ルールを利用した恋愛判定に使用される。
教養」はそのPCの文化・学術的知識や技術を表す。文献やデータを使った情報収集の他、怪我の治療などの判定に使用される。
戦闘」は他の環境値と異なり、情報収集に使用できない。判定に使うこともあるが、多くは戦闘に関する副能力値の算出元として用いられる。

また、PC達の亜侠としての個性やチーム内での立ち位置は「カルマ」と呼ばれるクラスルールによって表現されている。
初期作成で取得できる「ベーシックカルマ」にはチームを束ねるリーダー、知略を駆使して計画をサポートする参謀、一つの分野に精通したセミプロの技術屋、銃弾飛び交う鉄火場で頼りになる荒事屋、物資調達やスケジューリングを一手に担うマネージャー、何故かチームに居る疫病神の道化師の6種が存在している。

PC達が有する「カルマ」にはプラスの効果を持つ「異能」とマイナスの効果を持つ「代償」という2つのアビリティがセットで設定されている。

例えば、「リーダー」のカルマは「チームのノリが一致した時、判定難易度を大幅に下げる」という異能と「セッション中、ミッションが成功していないとペナルティを受ける」という代償をセットで抱えている。

「異能」を駆使することでプレイヤーは判定を有利に運んだりゲーム的な効果を得ることができる一方、「代償」によってリスクを抱えたり思わぬピンチに叩き落とされることもある。
この「異能」と「代償」を表裏に抱えるクラスシステムは、“サタスペ”が有するゲーム的な特徴の一つと言えるだろう。

7種の能力値とそれらから算出される副能力値、そしてカルマによって齎されるアビリティ、そして後述のアイテムデータ群による装備の3つがサタスペにおけるPCの構成要素となっている。

これらの組み合わせにより、「生活は貧しいが犯罪の素養が高く、言いくるめや足で稼ぐ情報収集が得意なリーダー」や「教養には乏しいが恋愛によるハニートラップを担う道化師」や「戦闘は不得手だが高い教養を活かして情報収集の要となる参謀」といったキャラクターを作ることができる。
カルマと能力値に関連はないため、敢えて「戦闘が得意な参謀」や「犯罪に長けたマネージャー」を作成することも可能だ。

4. 豊富なアイテムデータ

サタスペに登場するアイテムは大きく「武器」「乗物」「その他」の3種に分類される。

武器」は読んで字の如く、戦闘に用いる武器のデータである。
その武器を用いた攻撃を成功させるために必要な命中難易度や攻撃に対するダメージ修正値などで構成されており、多くは近接武器や銃火器として表現されている。

その辺にあるビール瓶や看板などを近接武器に使う「即席武器」やオオサカ中で流通する粗悪な密造拳銃「トヨトミピストル」、小型で携行しやすく咄嗟の抜き打ちによる奇襲が可能な「S&W M36チーフ・スペシャル」など様々な武器がルールブックには記載されており、その種類は基本ルールだけで40種に及ぶ。
武器の調達価格や命中難易度(当てやすさ)を勘案し、適切に用いれば危険なミッションを生き抜く大きな助けとなるだろう。

乗物」はPC達の移動手段として使われるアイテムである。
サタスペにおける冒険の舞台・大阪は幾つかのエリアに分割されている。
当然、乗物に乗らない限りは移動するだけで貴重な時間を消費してしまう。
また、警察や犯罪組織の追手から逃げ切ったり、逆に逃げる対象をPC達が捕まえるための追いかけっこを表現する「ケチャップ」ルールにも重要な役割を果たす。

小型で小回りの効くスクーター「ヴェスパ」や富士重工業の開発した傑作軽自動車「スバル360」、価格は少し高いがスピード・頑丈さ・積載量全てが高水準な「シトロエン2CV」などがルールブックに記載されている。
これら「乗物」は初期作成時の[生活]値によって最初から所持した状態でゲームを始めることができる。
もし自動車を所持しているのであれば、チーム全体のために役立てやすい。時には仲間の分まで他エリアに物資調達に赴き、時には仲間の窮地に車で参上し、時には愛車を駆って敵と熾烈なカーチェイスを繰り広げるようなセッションを体験することも可能だろう。
尤も、治安の悪いエリアでは盗まれないよう注意を忘れてはならない。

その他」は通信手段や雑多な日用品、各種判定に補助的な効果を加えるアイテム、ドラッグ(違法な薬物という意味である)、サービスなど多岐にわたる。価格相応のコストを支払って得られる効果と言い換えても良い。

特にドラッグはサタスペというゲームを(危険に)彩る要素である。
犯罪都市大阪では多種多様な違法ドラッグが流通しており、PC達もそれを使用することができる。
ドラッグの多くはリソースを回復したり肉体の負傷によるペナルティを無視する効果を与える代わりに、セッション中継続のデメリットを負うような代物になっている。更に、ドラッグを使用した場合はセッション終了時に「そのドラッグに応じた難易度の判定を行い、失敗するとそのドラッグの依存症となる」ルールも完備されている。

それらのリスクを自覚した上で、それでも急場を切り抜けるために麻薬の力が必要なシチュエーションが訪れた場合。

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出典:近藤信輔『忍者と極道』第八話

と叫びながら堂々とドラッグをキメることがPCには許されているのも、サタスペの魅力かもしれない。用法・容量を守って計画的に使おう。

5. 判定方式

サタスペにおける判定ロールは他システムと比べると複雑で独特なものとなっている。
詳細なやり方についての言及は避けるが、その最大の特徴は「判定がチキンレース的な性質を持っている」ことにある。

サタスペは「難易度を上回る出目を出せたか」という上方判定方式を採用している。サタスペにおけるファンブルは、判定中に振ったダイスの中に特定の出目が含まれていると発生する。判定のリスクによってはこの「ファンブルを引き起こす出目」の種類が増加し、よりファンブル率の高い判定が発生する。
情報収集や攻撃時など、サタスペにはシチュエーションに合わせた「ファンブル表」というランダムイベント表が用意されている。

判定によっては「難易度を上回る出目を何度出せたか」という「成功度」の概念が加わる。この場合、「ファンブルを警戒して判定をストップする」と「判定を継続して成功度を高める」の2つの選択肢が発生する。
リスクを承知で高い成功度を叩き出すか、ファンブルを避けて安定を取るかの選択が重要なゲームと言えるだろう。

武器を始めとするアイテムや異能/代償全般に言えることであるが、サタスペにおける様々な要素はチキンレースの理念に沿って設計されている
どの能力値や異能も一長一短の性質が強く、従って「結局どれを選んでもリスクがある」ような状況が生まれ、そのような環境が多様性を生むことでビルドや選択の自由度に繋がっている。

6. まとめ

以上、“アジアンパンクRPG サタスペ”について簡単に紹介を行った。
個性を表す能力値、適正を表す異能と代償、冒険を彩る多様なアイテム群を組み合わせることで、プレイヤーは様々なキャラクターを創造できる。

サタスペは異能・アイテム・エネミー・スポットルール・各種ファンブル表などデータの種類が多く、GMですら翻弄されるような処理やイベントが頻発する。どんなに愛着のあるキャラクターもサイコロの出目が悪ければ下らないことに巻き込まれて死ぬし、思い通りにいかなくて格好がつかないことも多い。

しかし、サタスペはそういった部分も含めて「カオスな犯罪都市で繰り広げられる必死のクライムアクション」を楽しむことができるという点において、このシステムは唯一無二の魅力を持っている。

銃、ドラッグ、札束、暴力、そしてチームの絆。
気の合う仲間と盛り上がりたい方には、是非オススメしたい。

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