人に教えたくないマーケティングと「いいモノ」の話
これまでいくつかの記事を書いてきたが、そろそろ本職のマーケティングや人材育成、キャリアデザインについても筆を進めていきたい。
今回はマーケティングについて掘り下げていく。
世の中の様々なところにマーケティングの情報や書籍が溢れている。なので今更noteで何を書こうかと少し迷ったが、ここ数日多くのnote記事を読み、フリーランスの人の多さと多様性に驚いたため、フリーランスの方々の多少でも参考になるような個人が行うマーケティングに絞って話を進めたい。
いいモノは必ず売れる、は本当か?
私がマーケティングに興味を持ったきっかけは、私が当時師事していた方から「いいモノ(商品やサービス)は必ず売れるか」という命題を与えられたときだった。
この問いを受けたときにあなたはどう答えるだろうか?
「いいモノなんだから売れるに決まっているでしょ?何を当たり前のことを」と思った方は少し立ち止まって考えてほしい。
どれだけ良い商品やサービスもそれを買うお客様がその存在を知らなければその手に届くことはない。つまり売れることはないのだ。
意外とこの事実に気付いている人は少ない。日本人の多くの人はこの「いいモノは必ず売れる」という概念に縛られすぎている。
「よいモノは口コミで伝わっていずれ売れる」という反論もあるだろうが、これは売れるまで事業を続けられる資金・体力がある場合のみだ。内部留保が潤沢にある企業はまだしも、個人事業主の場合は資金がショートしてしまってはビジネスを続けることができない。よいモノがお客様に広まっていくのをのんびり待っているわけにはいかない。
もちろんこのインターネットの時代、ネット上での口コミは加速的に広がるが、その口コミの波やトレンドに乗せることもマーケティングの手法であり、昔ながらの果報は寝て待て方式の話ではない。
日本の伝統産業や工芸品の中には非常に価値があり、うまくお客様を見つけ出し、告知をすれば売れる品質のものがたくさんある。しかし当事者はそのことに気づいていないことが多い。なのでどんなにいいモノを作っても外に広げるための手段を持っておらず、新しいビジネスチャンスに広がらない。
だからこそ今までと違う人の目に触れるきっかけを作ったり、より多くの人に認知してもらうためにマーケティングが必要になる。
そもそもマーケティングとは何か?
先ほどから当たり前のようにマーケティングという言葉を使っていたが、カタカナ語であるし重要なので定義をはっきりさせたい。
Wikipediaによると、
マーケティング(英: marketing)とは、企業などの組織が行うあらゆる活動のうち、「顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその価値を効果的に得られるようにする」ための概念である。また顧客のニーズを解明し、顧客価値を生み出すための経営哲学、戦略、仕組み、プロセスを指す。
ということだそうだ。なんだかわかったようなわからないような説明に感じる。もう少しかみ砕いた説明が必要だろう。
私に言わせると
マーケティングとはその商品やサービスが欲しい人を目の前まで連れてくる手法である(この表現も多少使い古されているが)
もちろん「目の前に連れてくる」というのは多分に比喩が含まれている。だが、ネット上であれ、実際の店舗であれ自分たちが扱うモノに関心を持っていそうなお客様を商売の場に連れてくることを私はマーケティングと定義したい。
マーケティングの必要性と定義について長い前置きを書いてしまったが、それでは実際にどうやって行うのか?その核心部分に話を進めよう。
マーケティングで重要なことは先ほど述べたように自分たちが扱うモノ(商品であれサービスであれ)に関心がありそうなお客様をどうやって商売の場に連れてくるか?これに尽きる。
ありがたいことにインターネットとネット上での商売の普及、格安な配送手段の充実により、企業でなくても個人が輸出したり、販売できる時代になった。そのため、お客様にあなたのモノを見つけてもらうことができれば、実店舗を持っていなくても商売を行うことは可能だ。ではどうやってお客様に見つけてもらうか?
マーケティングの3Step
マーケティングを行う上で重要なことは、段階に分けて潜在お客様により深いレベルの行動を起こしてもらうことだ。
いきなりお客様にダイレクトな情報を届けたり、あまりにも高いハードルを要求することは返ってお客様の信頼を失うことになる。
段階的の行動のレベルが上がるような仕掛けが必要だ。言うまでもないが、この段階が上がるにつれて潜在購入客の母数は少なくなっていく。しかし戦略としてはそれで間違っていない。
話を簡素化するためにこの深い行動のためのStepを3階層に分けよう。
Step1:信用と認知の拡大
Step1はあなたの事業や個人そのものをSNS等を通じ知ってもらうこと
例えば、新規で今までにないモノを作ったとしてもそのサービスにはブランドがない。またそれを供給しているあなた自身にも信用がない。
ブランドも信用もない中でお客様にモノを買ってもらうのは非常に難しい。
そういう意味であなたを知ってもらうためにnoteやTwitterなどであなたが何者か、どういう考えを持つ人なのかを発信する必要がある。
ここで注意が必要なのが最初のステップではあまり商売の匂いを出しすぎてはいけない。より多くのの潜在的なお客様の目に触れるよう、価値のある情報を発信するのがよい。
例えばあなたが農作物に関するビジネスをしている場合、家庭菜園の方法や新鮮な食材の見分け方、食材のおいしい調理法などをSNSで発信する。一見商売に関係ないような情報に見えるが、これが逆に良いのである。多くの人は最初っから「あなたにこれを売りつけてやる!」というやる気満々の人と関わりたくはないだろうから。
SNS上で興味をもって内容を読んでくれたり、コメントをくれたりフォローしてくれた人はスルーした人よりも関心がある。そうした人たちにStep2でより深いアクションを起こしてもらう。
Step2:事業や商品情報の提供
Step2はTwitterやnoteを読んでくれた人により深い情報を提供する。例えば自分自身のブログやHPのリンクを貼っておく。そのワンクリックをして記事を読んでくれるというのが大きなアクションなのだ。
Step2にいる人とStep1にいる人とでは興味のレベルが圧倒的に違う。
Step2ではもう少しだけ商売っ気を出し、自分のサービスや商品について情報を掲載しておく。その際、潜在購入客の視点でわかりやすい情報の書き方や見やすいページになっているかはとても重要だ。また今後モノを買っていただく上で、HPやブログがあることは、それが何もない人よりも、何倍も信用度が上がる。もちろん定期的に質の高い情報を発信している場合に限るが。
先ほどの農業ビジネスの話でいうと、Twitterにリンクを載せ自分のHPに潜在購入客をいざなう。HP上でどのようなブランドを目指しているか、お客様にどんな価値を提供したいか、商品に関する情報について触れておく。自分たちの農作物が他のものとどういった観点で違いがあり、メリットがあるのかなどを効果的に演出する必要がある。
Step3:ネットからリアルへの接続
Step3ではこうして興味関心を持ってくれた人にネットからリアルにつなぐ。Step2の段階でもごくごく少数の人は購入をしてくれるかもしれないが、それはまぐれだと思ったほうが良い。
このまぐれを現実のお客様につなぐには、リアルに結びつける必要がある。例えば、直接の売り上げにはつながらなくとも無料のイベントを行ったり、セミナーを開催したり、オンライン上でもSkypeなどでやり取りをすることでリアルに実在するモノそしてあなたを感じてもらう。
先の農業のケースでいうと、何かのイベントに相乗りして、試食会を行う(もちろんその情報はHP上に載せておく)。試食会に訪れてくれた方には少しだけお得なクーポンを渡して商品の訴求も行っておく。なるべく参加してくれた人が楽しいと思える雰囲気やコンテンツにするなどである。
このリアルでのコミュニケーションがつながるとお客様はもうあなたの「店」の敷居をまたいでいる。つまり目の前に連れてくることに成功しているのだ。あとはあなたの売り込む腕とモノの品質次第だ。
これまでの話のまとめと参考として、この3つのStepの図を掲載しておく。
相反するように見える品質の重要性
ただし、マーケティングを矢鱈にやって、お客様に知られればそれでよいのかというのも実は違う。お客様の意にそぐわない押し売りは短期的な観点では売り上げや収益は伸びても、次は買ってもらえない。またモノそのものの中身や品質が低ければ、お客様は二度と帰ってくることはない。
良いモノを作ることと、マーケティングをしっかりやることは矛盾しないし、両立すべきことなのだ。
良いモノを作るということにはブランディングも大きくかかわってくるが、その話は別の機会に譲りたいと思う。
マーケティングは奥が深いし、お客様も日々変わる。こうした変化を機敏にとらえ、社会に役立ついいモノを展開してもらうことにこの記事が少しでも役立てればとても嬉しく思う。
私にできることを一歩ずつ。
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