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一人、夜闇の底で聴く音楽 ─Digitonal

今が夜で、あなたが一人で過ごしているなら、まずはこれを聴いてほしい。

晴れた冬の夜空、その一面に燦然と、しかし気配なく冷え冷えと煌く星々の下にいるような、高く奥深い空間感と、遠く隔絶された美しさに聴き入る。
私はこの『Digitonal』というアーティストがとても好きだ。とにかく美しい曲作りをする。ストリングスやピアノなどによるどこかクラシカルなメロディー、現代的で落ち着きのある電子音、適切で心地良いパーカッションのリズム、多くの作品でそういった要素が高度に融け合っている。徒らに感動を煽るようなことはしない。緻密に抑制された音楽は、そこに自ら沈みこむことで静かに感動を味わえる。まさに、人々が寝静まった後、一人夜闇の底で愉しむのにふさわしい音楽性だ。
ポピュラーな音楽性ではないし、あるいはAphex Twinのような、その音楽を知っていることがある種の教養とみなされるような天才的な存在でもない。しかし確かな才能と、自身の美意識に根差した音楽世界を築き上げている素晴らしいアーティストだ。
と、ここまで語ったことはすべて私の勝手な感想だ。私はアーティストの本名だとか、どこの出身だとか、どんな経歴だとか、そういったことに全然興味がない。今聴いてる作品だけでいい。一方で、音楽に限らず作品というものは、作者の人生や人間性とは切っても切れないものであり、もし正しく批評をしようとするなら、作品だけでなく作者についてもよく知るのが大事だろう。しかしここにあるのは「私の楽しみ方」だ。私が好きな音楽についての私の感想を、私の言葉で素直に語り、誰にこの音楽を聴いてもらいたい。ここはそういう場所だ。
ということで『Digitonal』の素晴らしい音楽世界を知る人が一人でも増えることを願いつつ。


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