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「笑う犬」ショートショート



村には、一匹のとても奇妙な犬がいた。その犬は、笑うのだ。どんなときでも、いつでも笑顔を絶やさなかった。村の人々は最初はその犬を恐れたが、やがてその笑顔に魅了され、犬は村の人気者になった。

犬の名は「ポチ」だった。ポチはどんなことがあっても笑い続け、どんなに悲しいことがあっても、ポチの笑顔を見ると、みんなの心は和んだ。ポチは村の守り神のように大切にされ、誰もがポチに食べ物を与え、撫でてやった。

ある日、村に旅人がやってきた。彼はポチの噂を聞いて興味を持ち、ぜひその犬を見たいと言った。村人たちは旅人を連れてポチのところへ行った。旅人はポチを見て驚いた。「こんなに笑っている犬を見たことがない!」と彼は言った。

しかし、その旅人は動物の言葉がわかる特別な力を持っていた。彼はポチに尋ねた。「なぜ君はいつも笑っているのか?」

ポチはしばらく考えた後、こう答えた。「笑うことしかできないんだよ。実は、僕はもともと人間だったんだ。ある日、魔法使いに悪ふざけをしたら、罰として犬にされてしまったんだ。でも、その時の顔が笑顔のまま固まってしまって、それ以来ずっとこの顔なんだよ。」

旅人は驚いて「そんなことがあるのか!」と言ったが、ポチはさらにこう続けた。「でも、悪くないよ。村の人たちは僕を愛してくれるし、僕もみんなが大好きだ。この笑顔のおかげで、たくさんの友達ができたからね。」

旅人はポチの話を聞いて感心し、「確かに、どんな状況でも笑顔を絶やさないことは素晴らしいことだ」と言って村を去った。

それ以来、ポチはさらに人気者になり、村中に笑顔を広げ続けた。


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