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「赤を啜り、終焉は虚無と知る」中前篇脚本公開

前回に続き、「赤を啜り、終焉は虚無と知る」の中篇の前半部分です
後2回に分けてお送りしたいと思います
是非、前篇からご覧ください


第七章「鮮血の将軍」

   場面変わり戦場
   兵士が二人走りこんでくる
   そこへバーミリオンがやってくる

兵士1    
「バーミリオン様!報告です。やはり敵はバンパイア。多数のドライと複数のツヴァイが確認できました。」
バーミリオン 
「アインスはいないのか。」
兵士1    
「確認できていません。」
バーミリオン 
「よし、では私が先行する。続け。」
兵士1    
「は!」
兵士2    
「しかし、将軍自ら・・・。」
兵士1
「お前知らないのか、バーミリオン将軍がかつて何て呼ばれていたのかを。」
兵士2
「え?」」
兵士1
「あの方が通った後には化け物どもの血の海が出来上がるんだ。ついた呼び名が、鮮血のバーミリオン。」

   バーミリオンとバンパイアの立ち回り
   バーミリオンがバンパイアを蹴散らす

バーミリオン 
「こんなものか、やはりアインスがいなければ敵では無いな。全軍、このまま敵を押し込む。遅れるな。」」

   歓声が起こり、バーミリオン去る

第八章「過去」

   場面変わり、オーカーとニールがいる
   そして二人の前には一人の女性が横たわっている

ニール  
「おい、これは一体どう言うことだよ。」
オーカー 
「俺に聞かれても分からないよ。」
ニール  
「カーマイン様に教えてもらった場所に来てみたら、何で人が死んでるんだよ。ここには、エカルラート様に仕えてた使用人がいるんじゃなかったのか?本当にここで合ってたのか?ここに来る途中もおかしいと思ってたんだ、やけに人気のない路地に入って行くし。」
オーカー 
「確かにこの番地が書いてあった。つまりこの人がきっと・・・。」
ニール  
「誰がこんなことをしたんだ?俺達、ひょっとして騙されたんじゃ。」
オーカー 
「俺たちがここに来ることを知っているのは・・・」

   二人顔を見合わせる
   しかし次の瞬間、女性起き上がる
   そしてオーカーたち襲い掛かる

二人   
「うわー!」
モモコ  
「はっはっはっはっ!引っ掛かった引っ掛かった!あんたたち若いのにだらしないねえ。」
オーカー 
「え?生きてる?」
モモコ  
「生きてるに決まってるだろう。勝手に人を殺すんじゃないよ。」
ニール  
「違う、きっとこのババアバンパイアだよ。ババアパイアだ。」
モモコ  
「誰がババアパイアだ。このくそガキ。誰かがウチに近づいてくる気配がしたから驚かしてやろうと思っただけさ。」
ニール  
「このババア。」
オーカー 
「ニール。でも、何ともなくて良かったです。あなたがモモコさんですね?昔エカルラート様に仕えていた。」
モモコ  
「(怪訝そうな顔で)あんたたちは?」
オーカー 
「僕たちはカーマイン様の紹介で来ました。あなたにお話を聞きたくて。」
モモコ  
「エカルラート様の事かい?」
オーカー 
「はい。」
モモコ  
「話すことは無いよ。帰ってくれるかい。」
ニール  
「何だとババア、せっかく人が訪ねてきたってのに。」
オーカー 
「何故ですか?」
モモコ  
「どうせ何を話したところで無駄だからさ。今さら何になるって言うんだい、エカルラート様は帰ってこない、クリムゾン様も死罪になった。これ以上何があるって言うんだ。」
オーカー 
「僕はクリムゾンに命を救われました。あなたは今クリムゾン様と言いましたね。自分の主人を殺害した人間をそんな呼び方する訳ない。あなたはクリムゾンが犯人じゃないと信じているんですね?」
モモコ  
「・・・そうさ。あの方がエカルラート様を殺害するわけないじゃないか。あのお二人は親友だったんだよ。」
オーカー 
「しかし二人は決闘をしたと聞きましたが。」
モモコ  
「ああ、したよ。決闘状とは知らなかったとはいえ、それをクリムゾン様に届けたのはあたしだからね。」
ニール  
「あんたが?」
モモコ  
「クリムゾン様は驚いていたよ。まさかエカルラート様に決闘を申し込まれるなんて思ってもいなかったんだろうね。すぐに屋敷を飛び出していったよ。次に見た時は公開処刑の時さ。」
オーカー 
「何故あなたはクリムゾンを信じているんですか?」
モモコ  
「自分の親しい人間を信じちゃいけないってのかい?二人とも小さい頃から見てきたんだ、信じて当然だろう。」
オーカー 
「真犯人が別にいると考えているんですね。
モモコ  
「そう言うことになるのかね。」
オーカー 
「例えば、シナバー将軍とか。」
モモコ  
「・・・事件からしばらくしてからさ。どうしても納得できなかったあたしは自分で調べたのさ。そんな時たまたま聞いてしまったのさ。シナバーが話している事を。」
ニール  
「何を?」
モモコ  
「あの男は・・・。」

   その時、部屋に一人の女が入ってくる
   その姿、シャドである

シャド  
「こんばんは。お元気ですか、人間の皆さん。」
ニール  
「こいつ!あの時のバンパイア。」
シャド  
「こんばんは。アインスのシャドです。」
オーカー 
「何でここに。」
シャド  
「君たちには用は無いんだ。用があるのは、そこの婆さん。一緒に来てもらえるかな?もちろん嫌とは言わせないし、断るなら殺します。て言うか殺したいから断っていいよ。」
オーカー 
「ニール。」
ニール  
「アインスに俺達だけで勝てるのかよ。」
オーカー 
「やるしかないだろ。モモコさんは逃げて下さい。早く。」

   モモコ、走り去る
   二人、シャドに斬りかかる
   しかしシャド、二人を簡単にいなしてしまう

シャド  
「邪魔だなぁ。あれ、でも邪魔するなら殺しても良いのか?よーし、殺しちゃうぞ。楽しみだな、どんな風にやろうかな。」

   そんなシャドの背後からソルフェリノが走りこんできて剣を突き刺す

シャド    
「あれれ?」
ソルフェリノ 
「ダメだよ、オーカー君はあたしのお気に入りなんだから。」
ニール    
「俺は?」
オーカー   
「ソルフェリノ将軍。」
シャド    
「ゾル、フェリ、ノォォ。まぁた会ったねぇ。」
ニール    
「げっ、まだ生きてる。」
ソルフェリノ 
「ホント、ゴキブリみたいな奴だな。嫌いなんだよね、ゴキブリ。」
シャド    
「痛い、痛い、痛いイタイイタイ!今すぐ殺したい、ソルフェリノ。握りつぶして、指の隙間から血を滴らせてやる。その顔をグチャグッチャにしてやる。でも、でも、でもぉぉぉぉ!今はあのババアだ。覚えていろ!」

   シャド、去る

ソルフェリノ 
「二人はさっきのお婆さんを。あたしはあいつを追うよ。」
オーカー   
「はい。お気をつけて。」
ソルフェリノ 
「誰に言ってるの?」

   ソルフェリノ笑顔で去る
   オーカー、ニールも反対へ去る
   別の空間にモモコが走ってくる

モモコ    
「はぁ、はぁ。ここまでくれば大丈夫だろう。しかし何だってバンパイアがあたしなんかを・・・。それに何であたしのところに・・・。」
ソルフェリノ 
「あれ?お婆さん?何でこんなところに?」
モモコ    
「あんたは・・・ソルフェリノ。」
ソルフェリノ 
「こら、駄目だよ。私これでも将軍なんだからね。ちゃんとソルフェリノ将軍って呼ばないと。ねえ、さっきのバンパイア来なかった?」
モモコ    
「い、いや。」
ソルフェリノ 
「そっか、でも何であのバンパイアはお婆さんを狙ってたんだろうね?心当たりある?」
モモコ    
「ある訳ないだろう。」
ソルフェリノ 「そっかぁ、でもおかしいよね。ただのお婆さんを何でバンパイアが狙うのか。もしかして狙われたんじゃなくて、バンパイアを手引きしていた、とか?」
モモコ    
「な、な、な、何を。何で私がバンパイアと。」
ソルフェリノ 
「クリムゾン「様」。国の反逆者をそんな風に呼ぶなんて、国に背く疑いがあるってことだよね。」
モモコ    
「違う、私はただ。」

   ソルフェリノ、持っていた剣でモモコを斬る
   モモコ倒れる

ソルフェリノ 
「余計なことを喋りすぎたら困るんだ。オーカー君は私のお気に入りなの。」

   そこへオーカー、ニールがやってくる

オーカー   
「モモコさん!大丈夫ですか?ソルフェリノ将軍、何が?」
ソルフェリノ 
「私が来た時にはもう遅かったよ。でも、このお婆さんバンパイアと内通してたみたいだね。」
オーカー   
「そんな、モモコさんが?」
ニール    
「だからバンパイアが来たのか。」
オーカー   
「!モモコさん、大丈夫ですか?」
モモコ    
「気をつけな・・・。」
オーカー   
「喋らないでください。今医者の所へ。」
モモコ    
「気を付けるんだ、将軍に。」
ニール    
「将軍?将軍ってシナバー将軍の事か?」

   モモコ、息絶える


第九章「邂逅」


   場面変わり、東部平原
   バーミリオンが剣を収めながらやってくる
   そこへ兵士がやってくる

兵士   
「バーミリオン将軍。敵は敗走を始めた様です。我が軍の勝利です。」
バーミリオン 
「撤退?バンパイアどもが?」
兵士   
「は。奴ら将軍に恐れをなした模様です。さすがは鮮血のバーミリオン様。」
バーミリオン 
「・・・。」
兵士   
「将軍、どうかいたしましたか?」
バーミリオン 
「バンパイアが何故退く?奴らは本能のままに動く化物だぞ。これではまるで人間の軍の様だ。嫌な予感がする。アインスがどこかにいるのか?もしくは・・・。」
兵士   
「もしくは?」
男の声  
「さすがは鮮血のバーミリオンだ。勘が鋭い。」
兵士   
「誰だ?」

   そこへ姿を現したのはクリムゾンだった

バーミリオン 
「お前は・・・」
クリムゾン  
「こんなところで会えるとはな。」
バーミリオン 
「馬鹿な・・・生きていたのか。こんなところで何をしている。」
クリムゾン  
「マゼンタ王国は随分と大きくなったそうじゃないか。」
バーミリオン 
「何をしているかと聞いている。」
クリムゾン  
「お前なら分かるだろう。」
バーミリオン 
「貴様、バンパイアに魂を売ったのか。エカルラート様だけでは飽き足らず、今度は王国そのものをその手にかけようと言うのか。」
兵士     
「エカルラート様を?では、この男。」
バーミリオン 
「ああ、真紅の将軍、クリムゾンだ。」
クリムゾン  
「ハハハハハハ!エカルラートか、そうだな、足りないな。それでは足りない。俺が望むのはお前たち全ての命だ。お前たちは全て死ね、それがお前たちの罪だ。」
バーミリオン 
「性根までも化け物に成り下がったか。ならその首、ここで斬り落としてやろう。」
クリムゾン  
「焦るな。こちらもお前に兵を殺され過ぎた。今日は引き揚げてやる。」
バーミリオン 
「待て、貴様何を企んでいる。」
クリムゾン  
「逆の立場なら、お前は教えてくれたのか?安心しろ、すぐに分かる。」

   クリムゾン去る
   兵士たち追おうとするが

バーミリオン 
「やめろ、命を無駄にすることになるぞ。急ぎ、マゼンタ城に戻る。全軍に知らせろ。」
兵士     
「は!」

   次の瞬間、そこはマゼンタ城になる

シナバー   
「つまり、あの男が生きていたと言う訳か。」
バーミリオン 
「ああ。それもバンパイアどもの指揮官だ。」
バーガンディ 
「真紅の将軍とも呼ばれた男がとことん落ちぶれた物ですね。」
ソルフェリノ 
「で、どうするの?みんなに知らせるの?」
バーガンディ 
「隠していてもいずれは知る事だ。なら早いに越したことは無い。」
バーミリオン 
「エカルラート様を殺害した男が次は化け物どもを率いて攻めてきた、か。士気に影響がなければいいが。」
シナバー   
「問題ない。国民は奴を憎んでいる。士気を上げるいい機会になるだろう。」
マゼンタ   
「うむ。あの男が指揮を執っているということは、化け物どもも烏合の衆では無いと言うことだ。」
シナバー   
「は、落ちぶれても真紅の将軍。戦場では負けなしの男が敵にいるということは、それなりの対策が必要になるでしょう。」
バーミリオン 
「何か策がありそうだなシナバー将軍。」
シナバー   
「もちろんだ。おい。」

   部屋に数人の兵が入ってくる
   その手にはライフル

バーガンディ 
「それは?」
シナバー   
「最新式のライフルだ。我がマゼンタ王国の粋を結集して、従来では敵わなかった命中率と貫通力を持たせた。実戦で投入できるだろう。これも産業の発展の賜物だ。」
バーミリオン 
「数に質で対抗すると言う訳か。」
マゼンタ   
「見事だ、シナバー。指揮はお前に任せる。化け物どもを殲滅しろ。」
シナバー   
「は!」

   シナバー、マゼンタ、バーミリオン去る

バーガンディ 
「どうした、ソルフェリノ。オーカーのことか。」
ソルフェリノ 
「うん。クリムゾンが生きていたなんて知ったら、どう思うんだろ。」
バーガンディ 
「大丈夫だ、あいつはそれほど弱い男じゃない。」

   バーガンディ去る

ソルフェリノ 
「違うよ、バーガンディ。私は心配なんてしてないよ。ただ、オーカー君がどんな顔になるのか楽しみなだけだよ。でも、クリムゾンか・・・そろそろ遊びもおしまいかな。残念。」

   ソルフェリノ去る

第十章「始まりのバンパイア」

   舞台上には数人の影が現れる、そこにはリサージもいる
   その前にクリムゾンが立つ

クリムゾン 
「お待たせしました、各国代表の皆様。この度はマゼンタ王国侵攻作戦並びに、連合国家への加盟ありがとうございます。我らが主スカーレット様に代わりお礼申し上げます。これより我が軍は総力を挙げてマゼンタ王国への進軍を開始、皆様にも各方面からマゼンタ王国中央、マゼンタ城に向けて進軍するようお願いします。」
リサージ  
「つまりはマゼンタ包囲網と言う訳ですね。しかしあの大国に我々寄せ集めの軍が勝てるのでしょうか?」

   そこへ声が聞こえてくる
   その声の主は、バンパイアの主「スカーレット」

スカーレット 
「勝っていただきます。」
リサージ   
「あなたは・・・スカーレット様。」

   全員ひざまずく

スカーレット 
「マゼンタ王国はこの世界を滅ぼす。彼らは目的の為なら手段は選ばない。かつて私たちの里は、彼らの手に寄って川に毒を流され、森を燃やされ、奪われた。この世界を彼らに渡す訳には行かない。この戦いは世界を取り戻す戦い。必ず勝っていただきます。」
リサージ   
「もちろんです。そして我々の手で新たなる世界を築きましょう。みなさん、私たちにはスカーレット様がついている。永遠の命もすぐそこです。さあ、行きましょう。」
代表たち   
「おお!」

   リサージ、代表たちを引き連れて去る

セキ     
「面白いねあいつら、ついこないだまでマゼンタの味方だった奴らもいるのに。」
ギュールズ  
「それが人間と言うものだ。自らの欲望の為なら他者の不幸などお構いなしと言うことだ。」
シャド    
「僕はそう言う正直な奴らの方が好きだけどね、嘘つきよりは。」
ギュールズ  
「なるほどな。」
クリムゾン  
「待たせたな、お前たち。準備に時間がかかったが、それももう終わりだ。ここからは好きにしていい。」
コウ     
「いよいよだね。」
クリムゾン  
「ああ、始めよう。マゼンタ王国の人間は一人も生かしておく必要はない。これは戦争では無い。殺戮だ、虐殺だ、殲滅だ。全てを滅ぼせ、何もかも奪え、奴らがそうしてきたように。文句は無いな、スカーレット。
スカーレット 
「ええ、それがあなたとの約束だから。」
シャド    
「スカーレット様の命令なら何でも従うよ。それがこいつの命令でもね。」
スカーレット 
「シャド、ギュールズ、セキ、コウ。無理はしないでね。」
ギュールズ  
「我らの命はスカーレット様のために。」
シャド    
「それにしても随分とらしくなってきたね、真紅の将軍様。」
ギュールズ  
「無理もない。この日の為に生きてきたんだからな。」
クリムゾン  
「ああ、無くなったはずの心が躍る。とうとう人間の終焉が始まる。」

   暗転

第十一章「襲撃」

   場面切り替わる
   そこにはオーカーとシンシャがいる

シンシャ 
「それで?今日は一体何の用?私はあなたと違って忙しいんだからね。手短に頼むわよ。」
オーカー 
「ああ、ありがとう。」
シンシャ 
「ところであなたお茶は好き?用意してあげても良いわよ。」
オーカー 
「いや、大丈夫だよ。」
シンシャ 
「何よ、人がせっかくもてなしてやろうって言うのに。これだから庶民は。」
オーカー 
「忙しいんだろう?」
シンシャ 
「もちろんよ。多忙よ、一分一秒も無駄にしたくないわ。で、お茶は飲むの?」
オーカー 
「シンシャに聞きたいことがあるんだ。」
シンシャ 
「何よ、改まって。」
オーカー 
「エカルラート様ってどんな方だったんだい?」
シンシャ 
「どんなって言われても、直接面識があった訳じゃないから、噂程度しか知らないわよ。病弱で、戦場に出ることも出来ない臆病者だって、お兄様は良く言っていたわね。ああ、それと国民はよくこう言ってたわね。「エカルラートじゃなくて、クリムゾンがカーマイン様の許嫁だったらよかったのに」って。」
オーカー 
「どういうこと?」
シンシャ 
「3人とも仲が良かったから、病弱のエカルラートより、国民の英雄だったクリムゾンに次期国王になってほしかったんじゃない。それにカーマイン様も本当はクリムゾンの方が好きだったんじゃないの?女って生き者は分からないものよ。そう言う私だって、いろいろな殿方と逢瀬を重ねてはいるけれど・・・。」

   そこへニールがやってくる

ニール  
「オーカー。やっぱりここにいたのか、大変だ。」
オーカー 
「どうしたんだ?」
ニール  
「お前こそ、何でシンシャと一緒に。まさか、お前が好きな女って。」
シンシャ 
「何よ、どう言うことよ。」
オーカー 
「違うよ。絶対にそんな話をしに来たんじゃないだろう。」
ニール  
「ああ、そうだった。それが大変なんだ。バンパイアどもを指揮しているのが、あのエカルラート様を殺した、クリムゾンだって。」
シンシャ 
「どういうこと?クリムゾンは死罪になったんでしょ?それがなんで。」
ニール  
「詳しい事は知らない。ただ、バンパイアとの戦争が始まるって知らせが来て、敵の指揮官はクリムゾンだと。」
シンシャ 
「望む所よ。反逆者と化け物ども。今度はシナバー将軍を兄に持つ、この私が倒してやるわ。」
ニール  
「どうしたんだ、オーカー。」
オーカー 
「俺は、クリムゾンと話がしてみたい。」
シンシャ 
「は?何言ってるのよあんた。相手は国を裏切って、化け物どもを率いているのよ。そんな相手と何を話すって言うのよ。」
オーカー 
「分かってる。でも、もしかしたらこの戦争を止められるかもしれない。」
ニール  
「どういうことだ。」
オーカー 
「あれから色々と調べた。当時の事、クリムゾンの家族の事。エカルラート様の事、シナバー将軍の事も。もし、俺の考えが間違ってなければ、クリムゾンを止めることが出来るかもしれない。」
ニール  
「そんなこと言っても、敵の指揮官がどこにいるかなんて。」
オーカー 
「いくらバンパイアだってそう簡単にマゼンタ王国に勝てるとは思っていないはずだ。正攻法で攻めてくるはずが無い。覚えているだろう、モモコさんと会った時の事を。」
ニール  
「そうか、何故かアインスが城下にいた。」
オーカー 
「そう。奴らはこの街に入り込むことができる。恐らく手引きしてる奴がいるはずだ。」
ニール  
「じゃあ、クリムゾンもここに来るってことか?」
オーカー 
「恐らく。」

   その時、町中から悲鳴が聞こえる

オーカー 
「遅かったか。」

   三人、顔を合わせて走り去る

            続く

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ありがとうございました
いよいよマゼンタ王国とバンパイアの全面戦争が始まります
果たしてオーカーはクリムゾンと邂逅するのか?

次回12章「宣戦布告」

気に入っていただけたらサポートも嬉しいです サポートしていただいた分は全て演劇界の発展のために使わせていただきます