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VisualComic「聖なる堕天使-GODHELL-」脚本公開

こんにちは
そしてお待たせしました、久しぶりの脚本公開
なかなか脚本はアクセスが上がらないんだけど、そんなことは関係ない
楽しんでくれる人がいる限り、挙げ続けます
そして今日公開するのは昨年上演された
「聖なる堕天使GODHELL」
いかにもなタイトルで
内容はやっぱりいかにもな、遊び心満載です
木田の好きなパロディをふんだんに盛り込んだ作品です
色んな俳優さんがふざけながら上演している所を見てみたいですね

作品情報
■ジャンル コメディ・ソフトSF・パロディ
■上演時間 15分(episode1のみの場合)
■出演者  5名(黒子含む)
■転換   無(episode1のみの場合)
■上演難易度 低

Episode1 「舞い降りた漆黒の翼」

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   そこはとある街の路地裏
   雰囲気はこの世界の米国
   しかしこの世界とは似て非なる世界である
   時間は深夜
   人影のない通りに一人の男がやってくる
   男はペペと呼ばれている
   ぺぺ、ゆっくりと語り始める

ペペ   
「俺がそいつと初めて会ったのは、まだ少し寒さが残る春の夜。その日、そいつは俺の前に現れた、何の前触れもなく、だ。おっと、自己紹介が遅れちまったな。俺の名前は『ペペロンチーノ・ペロペッティ』気の知れた奴らからは『ペペ』と呼ばれている。この辺り一帯を仕切っている小粋なギャング『パスタ・ザ・スパゲッティ』の一員さ。主な仕事は売人の統括だ。売人たちの縄張り争いが起きないようにバランスを取るのが俺の役目って訳だ。何事もバランスが大切だからな。パスタも焦らず、それでいて茹ですぎちゃダメだ。アルデンテを心がけるのさ。バランスがアルデンテにならない時は勿論不味いパスタが出来上がる。売人たちも同じさ。奴ら、血の気が多くていけねえ、今日も売人同士の喧嘩に巻き込まれてこの様さ。
大丈夫なのかって?おいおい、俺を誰だと思ってるんだ?危険は承知の上さ。何しろ上等なブツを扱ってるからな、ウチのシマは。一度味わったらおしまいさ、みんなジャンキーになっちまって、有り金全部使っちまう奴も少なくねえ。何だ?あんたも味わってみたいのか。ヘイヘイ、怖いもの知らずな奴だ。ほら、持っていきな、ウチのホットドッグだ。(ポケットからホットドッグを取り出して渡す)うん?クスリじゃないのかって?おいおい、バカ言っちゃいけないぜ。クスリは犯罪だぜ?ダメ、絶対。俺たちは殴り合いだってしない、クリーンなギャングさ。これか?これはケチャップさ。奴ら怒るとケチャップを飛ばしてくるのさ。スペインのトマト祭りか何かと勘違いしてるのさ。Hahahahaha!
まあ、そんな事はいいか。ここからが本題だ。その日、俺はそいつに出会ったんだ。夜道、俺は集金を終えて家に帰る途中だった。」

   ペペ、歩く
   その手には携帯電話、誰かと話をしている

ペペ   
「(通話相手に)へい、カルロス。調子はどうだ?タバスコをかけ忘れたピッツァの様な気分だって?それを言うなら、冷たくなったパンにソーセージを挟んだ気分だろう。冷たいのにホットドッグだってな。Hahahahaha!
ところでマイカルボナーラ?この所売り上げが落ちてるみたいだけど、どうしたんだ?・・・常連客が減った?味は変わってないはずだろ?・・・姿そのものを見かけなくなった?どういうことだ、そいつは・・・うん?」

   その時ペペ、隅にうずくまっている人影を見つける

ペペ   
「何だ?酔っ払いか?・・・いや、こっちの話だ。人がうずくまっててな。おい、あんた大丈夫か?・・・うん?噂?人がいなくなる?なんだそりゃ?おい、あんた立てるか。大丈夫か・・・?」

   声を掛けた人影が振り向くと、その顔は馬だった(馬の被り物を被っている)

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ペペ   
「うわっ!ビックリした。何だあんたそんなの被って。まだハロウィンには気が早いぜ。この俺『ぺぺロンチーノ・ペロペッティ』を『パスタ・ザ・スパゲッティ』だと知ってて脅かしてるのか?いい度胸だ、その被り物の下に隠れた顔を見せてもらおうか。」

   ペペ、男の馬を取ろうとする
   しかし、その馬の部分は外れない

ペペ   
「あれ?おかしいな、取れないぞ。おい、どうなってるんだ、これは。あんたまさか、接着剤でくっつけてるのか?おいおい、こんなクレイジーな奴は初めて見たぜ。まるで、ホットドッグにマヨネーズだ。」

   馬、何かを伝えようとしている

ペペ   
「うん?どうした?何か言いたいみたいだな。ちょっと待ってろ?ああ、分かった。」

   馬、一度後ろに下がり、パネルの様なものを持ってくる
   そこには馬の台詞が描いてある

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ペペ   
「(電話に)ヘイ、カルロス。すまないな、何か変な奴に絡まれちまってな。ああ、大丈夫だ。大したことは無いさ。すぐに終わる。パスタを茹でるよりも簡単さ。(馬の準備が終わり)なになに?・・・わたしは神の使い。墜落した・・・あ、堕落?堕落した人間共を滅ぼす。貴様にも裁きを・・・これは・・・つまり・・・ミートスパよりもジェノベーゼが好きだって事なのか?」

   馬、否定する
   そしておもむろに血の付いたナイフを取り出す

ペペ   
「それは・・・あんたホットドッグ食べてたのか。でも、ホットドッグは切って食べちゃダメだ。こうやって手づかみで食べるから美味いのさ。そして指に着いたケチャップを舐めるのが最高さ。」

   馬、ペペにナイフで斬りかかってくる
   ぺぺ、よける

ペペ   
「おいおい、危ないぜ。ヘイ、クレイジーなマカロニ野郎。食べ方一つでそんなにムキになるなんて大人げないぜ。いいか、そいつを大人しくしまうんだ。」

   しかし馬は従う気配はない

ペペ   
「どうしてもやろうっていうのか、マカロニ野郎。あんまり俺を怒らせるなよ。『パスタ・ザ・スパゲッティ』に牙をむくと痛い目を見ることになるぜ。この俺のデル○ンテでな。」

   ペペが取り出したのはただのケチャップだった
   馬、それを取り上げ捨てる、そしてペペを斬りつける

ペペ   
「あ、俺のデル○ンテが・・・いてぇ!やりやがったなこの野郎。畜生、もうただじゃおかねえ。」

   今度はピストルを取り出すペペ
   そして馬に向けて引き金を引く
   馬、銃弾をくらうが倒れない

ペペ   
「そんな・・・こいつは本物だぜ。何で平気なんだこの野郎。」

   ペペ、再度撃つが馬は倒れずに向かってくる

ペペ   
「うわぁ、誰か助けてくれ!
―俺がそう叫んだ時だった。その時、確かに聞こえたんだ、あの声が。」
声    
「下がっていた方が良い、人間は。」
ペペ   
「誰だ?
―俺は辺りを見回した。しかしそこには誰もいなかった。でも俺は確かに聞いたんだ、その声を。」
声    
「神の使いに銃など効かない。」
ペペ   
「そう、その声は頭上から聞こえてきたんだ。上を見上げた俺の眼に入ってきたのは、馬鹿馬鹿しいと思うだろうが、確かに見た。月明かりに照らされて空からゆっくりと降りてきた一人の男を。・・・天使・・・?」

   舞台後方から黒子に支えられながら一人の男が宙を舞い降りてくる
   その姿は黒一色だったが、まるで天使の様だった
   彼(ゴッドヘル)は終始劇的に喋る事が多い

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ペペ   
「そいつは確かに空から舞い降りてきた。誰が何といおうとも、だ。まるで天使のように空から降りてきた。」
ゴッドヘル 
「天使、か・・・懐かしい響きだね。」
ペペ   
「懐かしい?」
ゴッドヘル 
「でも、もう僕がその名前で呼ばれることは無い。何故かって?僕は、その称号にふさわしくない存在だからだ。」
ペペ   
「いきなり語り始めた。」
ゴッドヘル 
「天使とは本来、神に遣わされるものであり、神の御使い。その役割は神々の為に存在している。しかし僕は、僕は、神々を裏切ったんだ。僕たち天使は神々に創られたのに、僕は親を裏切った。もちろん、僕だって好きで裏切ったんじゃない。何故だか分かるかい?」
ペペ   
「いや・・・。」
ゴッドヘル 
「それはね、神々が僕を裏切ったからだよ。彼らが、先に僕を裏切ったんだ。だから僕は、神々を裏切ったんだ。分かるかい?」
ペペ   
「ああ、いや、うん。」
ゴッドヘル 
「ううん、君に分かる訳ないよね。僕の気持ちなんて。」
ペペ   
「じゃあ、何故聞いたの?」
ゴッドヘル 
「誰も分かってくれやしないんだ、僕の気持ちなんて。あの時だってそうさ。」
ペペ   
「どの時?」
ゴッドヘル 
「僕が初めて地上に遣わされた時に決まっているだろう。」
ペペ   
「決まっているの?」
ゴッドヘル 
「僕はあんなことしたくなかった、したくなかったのに。」
ペペ   
「こいつ、何しに来たんだろう?」
ゴッドヘル 
「僕が何をしに来たって?僕が何をしに来たって?そんなこと決まっているじゃないか。君を襲おうとしていた、あいつを倒すために決まってるじゃないか。」
ペペ   
「決まりすぎじゃね?あ、でも助けてくれるんだな?じゃあ助けてくれ。」
ゴッドヘル 
「助けるに。」
二人   
「決まってるじゃないか。」
ペペ   
「は、もういいから。ほら、あの人もあそこでずっと待ってくれてるから。」

   馬、先ほどからずっと敵っぽい動きをしながら、二人のやり取りが終わるのを待っていた

ペペ   
「何か、待たせちゃってごめんね。これから話し戻すから。でも、あいつ銃で撃っても何ともなかったのに、どうにかできるのか?」
ゴッドヘル 
「人間には出来ない。けど、僕には出来る。」
ペペ   
「人間にはって、さっきもあんた天使がどうとか気持ち悪い事言ってたけど、あの馬は一体何なんだ?」
ゴッドヘル 
「神々が人間に裁きを下すために使わせたもの。神々の使者。そして僕はその使者を滅ぼす者。かつて天使でありながら、神々に背き、この地上へと落された、堕天使。天使としての名前はもう捨てた、今の僕は神を天から地の底へと叩き落とす戦士。名付けて『ゴッドヘル』!」
ペペ   
「だせー。」
ゴッドヘル 
「さあ、こい神の僕よ。この僕が相手になってやる。やってやる、やってやるぞ!」

   ゴッドヘル、馬と対峙する
   緊張感が辺りに張り詰める

ゴッドヘル 
「これが、使者・・・くそっ、ダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃ、ダメだ、逃げちゃ、ダメだ逃げちゃ!くらえ、ゴッドヘルパーンチ!」

   しかし馬は避ける

ゴッドヘル 
「(驚愕する)こいつ、動くぞ。」
ペペ   
「そりゃそうだろう。」
ゴッドヘル 
「まさか、僕が負ける・・・?僕はこんなところで死ぬのか・・・。」
ペペ   
「もう少し頑張ろう。」
ゴッドヘル 
「僕は一体今まで何をやって来たんだろう。」
ペペ   
「知らんけど。」
ゴッドヘル 
「(何かに気付く)声?声が聞こえる・・・誰?僕を呼ぶのは誰?」
ペペ   
「ヤバい、こいつヤバい奴だ。」
ゴッドヘル 
「僕を呼ぶ声が聞こえる。(去ろうとする)」
ペペ   
「待て待て待て、どこに行くんだ。」
ゴッドヘル 
「僕を呼ぶ声が聞こえるんだ。」
ペペ   
「絶対逃げるつもりだろ。」
ゴッドヘル 
「・・・僕を呼ぶ声が。」
ペペ   
「聞こえない。はい、頑張れ。(ゴッドヘルを馬に向かわせる)」
ゴッドヘル 
「これ以上僕に戦えって言うのかい。」
ペペ   
「以上って言うか、まだ何もしてないからね。」
ゴッドヘル 
「父さんは僕の事なんか何にも考えていないんだね。」
ペペ   
「父さんじゃないからね。」
ゴッドヘル 
「何で僕なんだよ!僕に誰かを救うなんて出来ないよ。」
ペペ   
「お前が自分から来たんだよ!俺を助けるって言って。」
ゴッドヘル 
「ハッ・・・!そうだ・・・僕にはまだやれることがある。僕にはまだ守りたいものがある。こんなところで負けてたまるかー!」
ペペ   
「何だコイツ。」
ゴッドヘル 
「神々の使者よ。もう許さない。これ以上僕の大切な人たちを傷つけさせない。天界の力を解放する。黙示録23章の名に於いて僕に力を。」
ペペ   
「(黒子が扇風機を持ってくる)何だ、急に強い風が。こいつまさか本当に・・・。」
ゴッドヘル 
「神々に伝えるがいい。人間に罰を下す前に、僕がお前たちに裁きを下すと。くらえ、『ノアの方舟』!」

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   ゴッドヘルが叫び、手を翳すと、激しい音と光が辺りを包み込む
   少しの間
   しかし馬は何ともない

ペペ   
「あれ?何も変わってないけど。え?何今の?何かすごい盛り上がったけど、意味あったの?」
ゴッドヘル 
「・・・。」
ペペ   
「ねえ、今ので倒す雰囲気だったけど、倒せてないよ?どーすんの?ほら、あの人も何か困ってない?絶対倒される気でいたよ、あの人も。ほら、何かやられる準備もしてたみたいだし。どーすんのこれ?」
ゴッドヘル 
「・・・(ペペの銃を奪い、馬に発砲)」

   馬、倒れる

ペペ   
「えー!?」
ゴッドヘル 
「『ノアの方舟』!」
ペペ   
「いやいやいや、違うよね?俺の銃。」
ゴッドヘル 
「『ノアの方舟』!」
ペペ   
「それっぽく言ってもダメだから。てゆうかダサ!必殺技みたいなのダサ!あれ?でもさっきは銃撃ってもあいつ平気だったのに、何で・・・。まさかこれがこいつの力・・・?(ペペ、馬を覗きこむ)あ、俺の一発も当たってなかったのか。」

Episode1 「舞い降りた漆黒の翼」 END

   舞台に浮かびあがるペペ
   音楽

ペペ   
「俺の前に突如現れた『ゴッドヘル』と名乗る男。使者と呼ばれる馬の頭の生き物。何が何だがさっぱりだ。でも、これだけは分かった。俺たちの知らない所で、何かやばいことが始まってる。あいつはきっとそれを俺達に教えに来てくれたんじゃないかと思っている。次回「折れた翼、堕ちる心」。俺のデル○ンテが火を噴くぜ。」

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最後まで読んでいただきありがとうございました
この作品はずっと構想を温めていて、やっと形にした作品で
めちゃくちゃ好きな物を盛り込んでみました
終始お客さんは笑ってみてくれましたね
また後日、地元の大学の学園祭にも招待され、そこでも若い子たちに好評でした
たまにはこんな軽いノリの作品もいかがでしょうか?

episode3まであるので、近々公開しますね

※木田博貴作品を自分たちも上演したいよ!と言う方・団体様は一度ご連絡ください。基本上演は歓迎ですので。なお、無断上演はお断りしています。

※また木田博貴作品を「漫画」や「映像作品」などにしたいよと言う方も大歓迎です。是非一度ご相談ください!コラボレーションしましょう!

気に入っていただけたらサポートも嬉しいです サポートしていただいた分は全て演劇界の発展のために使わせていただきます