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『アイデア』について

アイデアの正体

そもそも『アイデア』とは何か。アイデアの正体について、ジェームズ・W・ヤングが著した『アイデアの作り方』にて見事な言語化がされている。ヤングはこの本で、「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」と断定している。

広告代理店で勤務していたヤングは、上記の定義を、広告アイデアの創出プロセスを説明するために言い換えている。

"広告のアイデアは、製品と消費者に関する特殊知識と、人生とこの世の種々様々な出来事についての一般的知識との新しい組み合わせから生まれてくるものなのである"

上記言い換えにより、広告対象である「製品」と広告を伝えたい「消費者」という直接向き合うべき課題に関する要素(特殊知識)と課題に直接関係しない(と思われる)一般的知識に関する要素を組み合わせることで広告アイデアが生まれると主張している。

アイデアは何のために存在するか

次に、何故アイデアが必要とされているのか検討しよう。「アイデア」の単語それ自体が良いイメージを持つこともあり、アイデアを探し求めている状況であっても、何故それを必要としていたかについて考えることを見落としがちだ。

アイデアが何故必要とされているか。アイデアがもたらす効用について、任天堂のゲームプロデューサーである宮本茂氏の「アイデアとは複数の問題を一気に解決するもの」という説明が簡潔だろう。

(宮本氏が直面したゲーム開発に限らず)解こうとする課題について、通常、複数の問題が有機複合的に生じている。それぞれの問題は1つずつ解こうとすると解決策は浮かぶものの、それぞれの問題と問題がトレードオフの関係にあることにより、「あちらを立てればこちらが立たず」の状態となっていることが多い。それらのトレードオフの関係に見える課題をまとめて解決できる、そのような解決方法をアイデアと呼ぶ

なお、参照した宮田氏の言葉は、故・岩田聡氏により知られるようになった言葉であり、以下の書籍で解説がされている

「アイデア」の出し方

ヤングは『アイデアのつくり方』にて、アイデアを生み出すプロセスを以下5つの段階に分けて具体的に提案している。

① データ(資料)集め
② データの咀嚼
③ データの組み合わせ
④ ユーレカ!(発見した!)の瞬間
⑤ アイデアのチェック

5段階のうち「①データ(資料)集め」が、アイデアを構成する「要素」を洗い出す作業に該当する。上記で確認したアイデアの効用とは、複数の問題を一気に解決することだった。

これを踏まえると検討対象についてデータ(資料)集めを行なう段階において、検討に際して生じる問題とそれを一般的な解法で解決した場合生じる新たな問題について言語化を行っておく必要があるだろう。これらが言語化されていないと、解くべき対象がわからないままにアイデアを考えることになる。

特に、向き合っている課題が組織課題である場合、そもそも解決対象である課題そのものが検討開始時に言語化されていないケースが大半であるため注意が必要だろう。

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