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あふれんばかりの今をうらやましく思う

最近、高校生の就職ガイダンスを担当するようになった。
就職ガイダンスの名のとおり、目の前の就職を強く意識した授業だから、参加するのは高校を出たら就職しようという生徒たちだ。

9月に始まる応募・選考に向け、この夏休みが大きな踏ん張りどき。
まさにこれから、暑くも熱い日々を過ごすことになる。

ガイダンスに参加する生徒の目は真剣そのもの。
それもそのはず、いよいよ自らの手で人生を切り拓いていけるかという重大な岐路に立ったのだから。
これまではまるでトロッコのごとく大人の敷いたレールに乗っかってただ転がってきた子供たちも、成長にともなってそのトロッコにブレーキがつき、ハンドルがついて、自ら操縦してよいことを少しずつ理解してきたのだ。
真剣にならないはずがない。

ん?
素朴な疑問が浮かぶ。
大学、専門学校へ進学する子たちは、このガイダンスなし?

冒頭に書いたように、ガイダンスの受講生はみんな来春の就職希望者。
進学を決めている生徒は1人も含まれていない。
しかも、厚労省が用意するこのガイダンスは文科省の正課ではないから、実施するしないは学校に委ねられている。
いきおい、就職希望者の多い高校、商業科や工業科が大半となる。

目前の就職を意識した内容だから、そうなるのは当然かもしれない。
当然だけれど、なにか釈然としない。
進学する生徒に、このガイダンスは無用のものなのだろうか。

僕が出た高校も進学校だった。
35年も前の、大学進学率が30%台だった当時だが、48人のクラスの中で就職希望者は1人だけで、あとはみな進学を選んだ。
今もそうだと思うし、もしかするともっと進学希望率は増しているかも。

そんな高校でも今どきは時代の要請にしたがって、いっぱしのキャリア授業は行うのだろう。
でも、この熱いガイダンスの実施予定校リストにその名はなかった。
就職なんてまだ先のことは考えられない、そんなことに1日費やすなら勉強しとく——
本当にそれでいい?

大学に入ったらそこで終わり?
その先のもっと長く大きな目標は何?
大学出たら10万時間も働くって知ってる?
いやいや、そもそもあなたの人生、どう描くの?

近視眼的に入試をパスすることに躍起となっている進学希望者こそ今、「生き方」を学んでほしい。
進学校こそキャリア教育を。

真剣勝負の講義の合間の休み時間。
ふざけ、じゃれ合う彼ら彼女らを見て、まだまだかわいさも持ち合わせたあふれんばかりの今をうらやましく思う。
みんなに幸あれ。

(2024/7/19記)

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