きっと僕はずっとみかんで押し通す
「このみかん、うまいな」
「いや、これは甘平やで」
「このみかん、皮剥きにくいな」
「え、これみかんちゃうやろ」
いちいち息子から指摘が入る。
しかし息子とて、揚げ足を取りたいわけではない。
息子には柑橘系の識別ができていて、僕にはできていない。
ただその違いだ。
でも、僕だって無類の柑橘好きなのだ。
だけど。
昔は、柑橘といえばたぶんこれくらい覚えておけばよかった。
・みかん
・夏みかん
・甘夏
・はっさく
・グレープフルーツ
グレープフルーツさえも僕が小さい頃はまだ一般的ではなかった。
僕の柑橘時計はそこで止まっているのだ。
はれひめ、せとかなど、アイドルのような名前はどうも馴染まない。
それが今はどうだ。
なんと複雑怪奇な。
これでも見やすく再編集し、情報を落とした系譜らしい。
詳しい家系図だとこんなのもある。
うへぇ…
さすがにこれ全部が頭に入っているのは愛媛の人くらいだろうか。
ま、息子も愛媛生まれだから、そのプライドはあるのかも。
神戸に移り住んだ今でも、和歌山産ではいい顔をしないから、彼には愛媛の柑橘に対する特段の思い入れがあるようだ。
今やふだん使いのスーパーでも、
・ポンカン
・清見
・はるみ
・タンカン
・デコポン
・文旦
・河内晩柑
などはもはやあたりまえ。
しかも、同一品種であっても産地や出荷元によって呼び名がさまざま。
たとえば最近人気急上昇の河内晩柑にはこんなにも異名が。
・愛南ゴールド
・美生柑
・宇和ゴールド
・ジューシーフルーツ
・灘オレンジ
・天草晩柑
・サウスオレンジ
・夏文旦
・ハーブ柑
・ジューシーオレンジ
同じみかんだと思って食べても、温州だったり清見だったり。
違うものと思って食べた美生柑とジューシーオレンジが同じものだったり。
いったいどこまで覚えておかねばならないのだろう。
「もういいやん、全部みかんで」
「アカンで」
「はいはい…」
とはいうものの、きっと僕はずっとみかんで押し通す。
これ何やったっけ…と考えるより先に食べてしまっているからだ。
柑橘が好き、みかんが好き。
(2023/4/21記)
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