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あと少し大人にならなければならないな

感染症の隙をぬって、これまで政府のGoToキャンペーンや自治体の地元宿泊キャンペーンがたびたび実施されてきた。
宿泊業や飲食業など、感染症による打撃を大きく受けたとされる業界を応援するためのキャンペーンだ。

僕もこれまでに、GoToトラベルを利用して有馬温泉のホテルに半額で宿泊したり、神戸市の宿泊キャンペーンに当選してポートピアホテルのフルコースを半額で堪能したりした。
ふだん指をくわえて見送るしかない水準の宿泊や飲食が、これらのキャンペーンのおかげでたっぷり楽しめた。

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しかし、島で小さな民宿の主人と話した時に、キャンペーンに対する思いが一変する。

結局みんな、ふだん手が出ぇへん豪勢なとこ行ってばっかりやん。
自分らぁみたいな体力ない風前の灯火んとこには誰も来ぇへん。
このキャンペーン、いったい誰を救うためのもんなんや。

半額キャンペーン。
浮いた半額は国民の血税で埋められる。
その貴重な共有財産を使って、僕らはいったい何をしたいのか。
ふだんできない贅沢?

まだ余力のある大手に皆が群がって至福の時間を過ごしている間に、打つ手なく支援もない中小が一つ、また一つと潰れていく。

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半額で泊まれるなら――
で僕の頭に浮かぶのは、高級で贅沢なところばかりだった。
わぁこんなラッキーチャンスまたとない! みたいな。

これらのキャンペーンはいわば、人様のお金で遊び、また人様が遊ぶ時に自分のお金を差し出すことで成り立っている。
それを分かったうえでさらに、使ったお金が誰を助け、その先どう循環していくのか、想像を逞しくせねばなるまい。

半額で泊まれるなら――
いつもの宿に泊まってちょっといい料理でも頼むか、と身近なプチ贅沢を選択できるようになるには、あと少し大人にならなければならないな。

(2022/1/19記)

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