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『ゴールデンカムイ』を読んで 2~パオパオ~

前回のゴールデンカムイの記事の続きです。

前記事
https://note.com/viola_candita/n/n6f61f2e13f5c

前回、私は『ゴールデンカムイ』を読む上で二度挫折を経験し、その一度目の挫折について語らせて頂いた。
今回は二度目の挫折について。
(正直、今回の記事は禁止ワードで消されてしまわないか心配している。)

『ゴールデンカムイ』は、2022年1月現在、28巻まで単行本が発売されている。
挫折を引き起こしたのは24巻である。

「28巻中、24巻まで読んでおいて挫折する?」と思われるかもしれない。
私自身も、まさか姉畑先生を乗り越えた自分が再度挫折を味わうとは思わなかった。

もっと細かく言うと、問題となったのは24巻の第238話「好きな人に」の後半からである。
素敵なタイトル通り、前半から中盤は主人公であるアイヌの少女アシㇼパ
もう一人の主人公杉元佐一に対する淡い恋心なんかが描かれていて、「いいね~、こういうの。」とニヤニヤしながら私も読み進めていた。

しかしこんな少女漫画展開の一方、札幌では連続娼婦殺害事件が発生。

ここで未読の人に少し説明をしておきたい。
前回の記事でゴールデンカムイは「アイヌが秘蔵していた金塊を巡り争いを繰り広げるバトル漫画である」と書いた。
この金塊を探すには、金塊の隠し場所が示されている地図が必要となる。
この地図にあたるのが、網走監獄に収監されていた(現在は脱獄)囚人達の刺青である。
アイヌを殺害し金塊を奪った男が、獄中で同房の囚人達に施した刺青であり、「刺青人皮」と呼ばれている。
この「刺青人皮」を杉元は勿論、陸軍の第七師団土方歳三やらが狙っているのである。

では、先の連続娼婦殺害事件に話を戻す。

238話の後半には、この事件の犯人を第七師団の二人の兵士が探しているシーンがある。
警察でもない陸軍兵士がなぜ殺人犯を探しているかと言うと、この犯人が前述の刺青が彫られている「刺青人皮」の持ち主の一人だからである。

二人の兵士のうち一人は特務曹長である菊田 杢太郎 (きくた もくたろう)というキャラである。拳銃マニアという以外は、「変態による変態のための漫画」である本作の中ではかなりの常識人にあたる。渋さが光る中年男性である。普通にカッコいい。

問題はもう一人にある。

上等兵の宇佐美 時重(うさみ ときしげ)というキャラで、第七師団 歩兵第27聯隊所属の中尉:鶴見 篤四郎(つるみ とくしろう)に心酔している。
今回は割愛させて頂くが、その心酔っぷりがヤバい。
ゴールデンカムイの読者はかなり変態に免疫のある猛者ぞろいだと思っているが、もしも❝ 読者が選ぶゴールデンカムイの変態キャラランキング ❞なるものがあったとしたら、宇佐美は必ずBEST3に入る強者であると言える。(無論、姉畑先生もランクイン間違いなしである。)

宇佐美、菊田さんの二人で犯人を捜索中、殺害現場を一日中張り込むという捜査方法に苦言を呈した菊田さんは「娼婦に聞き込みをした方が早いんじゃねぇのか?」と至極真っ当な提案をする。
このセリフの後、読者はページをめくって続きを読むことになるのだが、私は次のページを数秒間凝視した後、いったん単行本を閉じて机に置いた。

えーと、男性には馴染み深い光景…というか…男性限定の大人のソロ活動というか…

もう、さらっと言いますね。
なぜか宇佐美上等兵は、夜の凶悪殺人現場で自 慰 行為を始めたのである。

これが、宇佐美の特殊能力。
この自らの自らを自ら慰める行為によって、なんと犯人を特定できるのである!

もう、宇佐美って言うか作者の野田先生がすごいよ!
このアイデア浮かんでも、実際に書こう!って思う人は少ないのでは?
(まず、思いつかない方が普通かもしれないが…。)
編集部もよくOKだしたよね…。

とりあえずこの特殊能力でまずは「犯人が殺害現場に二日おきに来ている」という事実を暴く。(なぜこの方法でわかるんだろう…)
自らを慰めながら現場をウロウロし、その自分で手にしているイチモツが落ち着きを感じる場所があれば、そこに事件の手がかりが落ちているのである。(なに?この文章)
ちなみに、このときに落ちていた事件の手がかりは「犯人の精〇」。
(犯人は娼婦を断罪の意味を込めて殺害し現場に精○を残して清めるという殺人スタイルである。)
えーーと、えーーーーとですね、言い換えると、
男性の下半身のある特定の器官から製造される体液…である。
(これで伝われ!)

相当に狂った世界である。

しかもこの238話は、宇佐美が今までに見たことないような真剣な顔で自らの自らを慰めまくっている様子が1ページの半分を使って描写されて終わっている。
本紙(週刊誌)で読んでいた読者の、当時の心理状況が知りたい。
どんな気持ちで次週を待っていたのだろうか。

私は238話を読んだ直後、前回同様、姉畑先生の時のようにしばらく本作を放置し、ジョジョの2部(悲しい展開もあるが、ジョジョの中でも主人公が無双する王道少年漫画展開。)を読み返していた。

私はいい年の人間で純情ぶるつもりもないが、露骨な下ネタが苦手である。
一ヶ月ほど放置したが、正直、お気に入りキャラである白石、月島のその後が気になってきた。
そこで、再度読み進める決意を固め、24巻の239話を開いた。

まず、239話のタイトルは「発射」である。

……うぅん。そう来るかぁ…。

タイトルだけでもう脳が理解を拒否し始めそうだが、私の捉え違いでなければ、表紙に描かれているのはタイトル通り
"宇佐美の宇佐美から発射された宇佐美の一部"である。(これで伝われ!)

ここで怯んではいけない。もう次のページから前代未聞の大バトルが展開されるからである。
まず、犯人はマイケル・オストログと言う男性で実在したジャックザリッパーがモデルらしい。

宇佐美に対し、この犯人も自らの自らを慰める行為を始める。
二人の成人男性が、野外で己を慰めつつ対峙しているのである。
深く考えてはいけない。なぜならもう色々とおっぱじまっているからである。

宇佐美が「こいつが犯人です!」と叫び一見、王道な刑事ドラマのようにバトルが始まるのだが、お互いの体液…をタイトル通り発射しまくりながら戦うのである。
宇佐美は拳銃を、犯人はナイフをそれぞれ所持していると思われるが、それらは使わず戦う武器は自分のそれのみである。(武器と言っていいかも謎だが。)
まさに生死を賭けた戦いと言えるが、セイシをかけた戦い…そうか、そっちの意味か…。

映画マトリックスばりのアクションさながらに、お互いに発射を繰り返しながらの真剣勝負を野田先生の高い画力で見せつけられるのだが、私が気になったのは 発射音 である。

「パオ パオ」という音とともに発射が繰り返されるのである。

パオ、パ…オ…………?

自分が知らないだけで、発射時にそんな音がすることがあるのか?
周囲の男性陣に聞きこむわけにもいかないし、自分には兄がいるがこんなことを聞いたら家族の縁を切られたうえで病院に行くことをすすめられそうだし…。
それとも、例えば犬の鳴き声とか日本なら「ワン ワン」だけどアメリカなら「バウ バウ」だし、何かそういう表現の違い?
それともジョジョ1部でツェペリさんが使う波紋カッターの音が「パウ パウ」だったけどそれのオマージュ?

考えても考えてもわからないので、次の結論に達した。

「あ、象🐘さんね」

クレヨンしんちゃんでも「ぞうさん踊り」ってあったし。
(今は教育上、規制されているらしい。)

私は「象さんの鳴き声」ということで理解したが、読まれた方々はどう解釈したのか非常に気になる。

しかし、いつも軍服姿の第七師団であるがこの時の二人はなぜか軍服ではなく、スーツ姿の洋装である。カッコいいので別にいいのだが、犯人がジャックザリッパーだし、菊田さんの宇佐美に向けたセリフに「こいつはとんだ精○探偵だぜ」と言うのがあるが、(なんか上手いこと言った感が逆に悲しい。)まさかとは思うが、シャーロックホームズをも意識しているのか…?(どちらもイギリス絡み。)
ちなみにパオパオ対決の宇佐美は対決終結まで、ずっと無駄にイケメンに描かれている。野田先生のパオパオに賭ける並々ならぬ熱意を感じる。

バトルの行方はというと、宇佐美の奮闘もむなしく犯人を取り逃がしてしまうのだが、最後は主人公がきっちり決めてくれるので是非読んでみて欲しい。

しかし、宇佐美にとって菊田さんは上司。
上司の前でこの特殊能力を発動させることに全く抵抗がないのがすごい。
しかもこの特殊能力が役に立つからと、本件に関し菊田さんへの同行を薦めたのは鶴見中尉である。
ということは、宇佐美は鶴見中尉の前でもこの特殊能力を披露していることになる。どんな職場環境なんだ…。

鶴見中尉もかなり普通ではない人物だが、宇佐美よりはまともなので(だと思いたい。)さすがに初めて見た時は驚かなかったのだろうか。菊田さんは「何なんだこれはッ」と驚いていたが、全読者の心中を代弁してくれたセリフであると思うのと同時に、「まともなキャラがいた!」と読者を安心させた瞬間でもある。

そしてアニメ化(4期)も決定とのことで、このパオパオ対決が映像化するのかとても気になる。
(姉畑先生はアニメ化の本編では放送されず、コミックス第23巻 アニメDVD同梱版
の特典として映像化はしているらしい。私はアニメ版は一切未見である。)

このうえなく長い記事になってしまったが、読んでくださった人がいたら大きな感謝を。

そして興味を以てくださった人がいたら、是非とも挫折せずゴールデンカムイを読んで頂きたい。








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