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東京に住んで変わったこと。

 最近よく服を買うようになった。大学生の頃は、あんまり気にしてなかったが、社会人になってから買うペースがどんどん早くなってきている。単純に使えるお金が増えたってのもあるだろう。ただ一番の理由としては毎日バイクに乗る習慣がなくなり、服装を気にせずよくなったからだとずっと思ってた。(別の意味では気にしてるのだが……。)なぜなら、突然、雨で濡れることも、泥跳ねや油汚れもないし、防風性能もいらない、動きやすくなくていい。

 だけど、久しぶりに地元の駅から家までの道を歩いてて、色んな服を買って楽しみ始めたのは、都会は他者との距離感があり、お互いに興味を示さないからじゃないかと思ってきた。
 どういうことかというと、マンションから派手な格好で出かけるのを見られたら、都会はあんな人住んでたんだと一瞬考えるだけで済む。しかし、地元なら何号室の息子やその他諸々の状況を知られた上であの派手な格好という見方になる。正直、それが井戸端会議のネタに使われるのも癪に障るし、何より外見がパーソナルな情報に直結にしてるのは、いらない評判を呼んで非常に面倒臭いと思うからかもしれない。
 人の印象は見た目が9割と言うが、服装や髪型、顔立ちから体型などの造形で、勝手に評価されカテゴライズされる。それを心の中で考えているだけなら大して影響はないが、そこは人間、隠そうとしても言葉尻や態度などの節々に漏れ出てしまう。

 うろ覚えだが、何かのインタビューでビリーアイリッシュは、サイズの大きな服を着ている理由について、世間に自身のすべてを知られたくないためと語っていた。なんとなくだけど、その感覚は分かるかもしれないと思ったのを覚えている。
 例えば、スーツ、学生服、ユニフォーム、作業着、制服だったりの職業や職種を表す服は好きじゃない。企業や学校などの組織が自社の社員や自校の生徒を表すために作られており、素性を公表してる感がある。
 彼女の場合は、オーバーサイズを好むことから体型などを意図しているかもしれないが、外見から情報をとられたくないという点では似ていると思う。だからこそ、この人普段何の仕事をしてるんだろう?といったどういう人か素性が読めない服装をしてるつもりである。(仕事中と差を大きくしたいので、若干治安が悪い服装かもしれない。)
 それが良い印象を与えるかは置いておいて、人としての輪郭は捉えにくいはずである。ましてや、他者への関心が薄い都会では尚更なはずだ。

 また、底が見えない人の方が魅力的だと考えてる部分もある。ある程度、歳を重ねると、あぁ、この人こんな考え方かもだったり、こういうのが好きかもと人を不粋な目で透かそうとしてしまう。だけど、その時はそう思ったとしても、会う度にこんな面もあるんだと思ってもらえる方が面白いと思う。だからこそ、第一印象が歪に見えた人に惹かれてしまう。この人、隠した何かがあるんじゃないかとワクワクする。そこには、服装のちょっとした遊びから見えてくるものもあるだろう。

 社会人になると同時に、なんの気なしに都内に住み始めて、意外と変わらないように感じてたけど、よくよく考えてみると変わったのかもしれない。そんな自分の意図してない変化がちょっとだけ嬉しいなと飲みすぎた体に水分を補給しながら、またダラダラと家へ歩き始めたわけである。

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