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接客について先輩が教えてこなかったこと その1 神々を細部に宿らせよ

おはようございます。このシリーズでは接客について話します。

レストランに勤めてはみたものの先輩に叱られてばかりで何も身につかない、難しいことばかり言われるけどよくわからずに心が折れながら家に帰っている、何度やっても同じことで注意され嫌気がさしている。
僕がレストランで働いているときに思っていたことです。

僕が飲食店の現場にいたのは正味7年くらいでした。そのうち「自分には能力や素質がないんだ」と思っていた期間は6年ほどです。つまり最後の1年くらいしか「あ、僕でもできるんだ」と思えた期間はありませんでした。

しかし、その時に感じた自信は今、別の仕事についている僕にとってすごく役に立っていて、当時学んだ接客技術を使って周囲の人と仲良くなったり、自分の仕事をうまく回すために他人を巻き込んだり、上司とうまくやったり、時には狙って人の心を揺り動かしたりということができるようになりました。自信は人をさらに成長させるんですよね。

僕がそうやって自信をつけられるのに、6年かかりました。長いんでしょうかね。僕には長かったですね。レストランで働き始めたみなさん、今から一人前になれるのに6年かかると思ってください。…長いですよね。

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このnoteシリーズではその6年間を凝縮したものを書いていきます。
どこかで詳しく書きたいことではありますが、僕が接客について書いているのには主に2つ理由があるんです。

1つは具体的なことを教えてくれる先輩が初期はいなかった&そういう先輩に出会ってからは格段に成長できたことから、僕が皆さんのそういう存在になれたら嬉しいこと。もしそうやって素敵なサービスマンが増えれば今また僕が楽しめる店が増えるわけですし。

もう1つは、本当にその6年間辛かったんですよね。心が折れて店を辞めたことが3回あります。それでもサービスをやりたいって思って、現場に戻ってまた辞めて。そんなことを繰り返しているうちになんとか形になりはしましたが、おんなじように「店を辞めてしまいたい」と接客から離れてしまいそうな人の希望に少しでもなればいいなと思っています。

だからこのシリーズを読んでもらい毎日の中で実践していくうちに皆さんにも「あ、俺でも接客できるじゃん」と思ってもらえるのがこのnoteの目標です。そうなれば接客は楽しくなります。接客は楽しいものなんですよ。

なお、6年間の凝縮とは言いましたが、実際には今の仕事やプライベートで試したことからもアップデートされたこともありますからもう少し膨らんでいくとは思います。接客をする人間にとっては「毎日が現場」ですし。

このシリーズは有料とします。
理由としては、どうしても深く書くためにはある程度僕のプライベートな内容にも関連付けないといけないため読者にフィルターをかけたいこと、またそのフィルターによってある程度意識の揃ったコミュニティを作りたいこと(今後は接客の話題に限定したリアルタイムでの交流を考えています)があります。

有料となると書く側・読む側の双方にとってハードルは上がりますが、現在出版されているサービスや接客にまつわる本以上の価値は提供できるのではないかと考えています。…とはいえ僕の言うその価値に担保はありませんね。しいて言えば僕が書いてきた、これから書いていく記事の内容が担保でしょう。
マガジン形式で有料設定をしますので、一度このマガジンを購入していただければ今後の内容については追加料金なしで読めます。この形は少なくとも2020年のうちは続ける予定です。毎月1つは更新予定でいます。

さて、第1回目。ではどうぞ。

向きを揃える。ただそれだけのこと。

「神々は細部に宿る」という言葉があります。ドイツのモダニズム建築家ミース・ファンデル・ローエが標語として掲げていたものです。もし彼のことは知らなくてもル・コルビュジェなら聞いたことはあるでしょうか。絵画でも有名なコルビュジェと並んで近代建築の三大巨匠と呼ばれる彼が残したその言葉を僕が聞いたのは22歳の時、とある地方都市のバーカウンターで出会った女性からでした。

当時彼女は高級婦人靴の接客をしていて、バーで出会ったその時から不思議な言葉を操る人でした。めったに客同士を紹介しないマスターが「黒ワイン君、彼女、僕と10年来の友達でさ」と話してくれたのが初めでした。そのとき二言三言交わしたあとに彼女が言ったんですよ。

「ねぇ、あなたが今大切にしている言葉を7つ挙げてみて」

22歳の僕はそんな質問されたこともないし、しかもなんで7つかもわからない。僕はそのときたまたま中村天風氏の著作を読んでいたのでそこから一つ言葉を挙げると、結局そこから話を広げられ、7つどころか1つで朝5時まで会話していたんですよね。

その方の会話術というのがまた面白いのですが今回はそれとは別の話。
いつだったか、その方に言われたんですよ。「神々は細部に宿る」と。

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