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【疎開日記2021】#22 60日ぶりの買い物

9月27日(月) 疎開生活119日目

朝から大音量で流れていたコロナ撲滅ソングは聞こえなくなり、バイクや車のクラクションが聞こえるようになった。うるさいけれど、日常が戻って来たようで実に嬉しい。

ブンタウは23日から規制が緩和され、通勤を含むバイクでの移動が許可されたのだ。まだまだ不要不急の外出は自粛すべき15号は出されているものの、うちの向かいの封鎖エリアはテープが外され、2ヶ月営業を停止していた八百屋や肉屋が再開した。

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前回の日記から2週間、まさにデリバリーチャレンジの日々だった。

自宅隔離は終わったものの、マンション独自の外出禁止令により出られない。食材はマンションロビーにやってくる移動販売に頼るしかないが、入荷は不定期だし、買いたいものがないことも多い。

ドライバーがなかなか捕まらず、キャンセルの連続だけれど、デリバリーへの挑戦をし続けた。

そして、ついにデリバリーチャレンジに成功した。思わずやったー!と叫んでしまう。少し離れたファミマからのデリバリーは、半分以上の品物が欠品によりキャンセルされたものの、久しぶりに食パンとパックに入った卵、インスタントフォーなどをゲット。

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インスタントフォーですら、2ヶ月ぶりの購入

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こちらはインドネシア人に頼まれていたミーゴレン10袋
困っているのは日本人だけではない


このデリバリー成功をきっかけに、空気が変わった気がする。

前回バナナを買って来てくれたお手伝いさんに再びバナナをお願いしたら、今度はchuoi suという別の種類のバナナを買って来てくれた。

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モンキーバナナより大きく、酸味があって爽やかな味

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双子バナナを2組も発見
いい事がありそうな予感


ずっと閉まっていた大きいスーパー、ロッテマートがデリバリーを再開することになった。朝7時スタートで、わずか数分で受付を終了してしまうというロッテのデリバリー。表示はベトナム語か韓国語のみというハードル高めのこのデリバリーに果敢にチャレンジ。
数日はダメだったが、挑戦三日目にしてなんとか成功!これまた欲しいものの半分以上はキャンセルされたが、お米が5キロ買えたことはとても大きかった。

この辺りから、寝つきが良くなって来た。

実は一番食料が少なかった頃に冷凍庫の扉が閉まりにくくなるという不運にみまわれ、夜に冷凍庫の扉が開きっぱなしで中身が溶けるという恐怖の体験をした。それ以来、冷凍庫のドアはガムテープでしっかり止めてあるのだが、夜中に必ず目が覚め、冷凍庫をチェックするという習慣がついてしまった。

さらにはお腹が空いているせいで目も覚める。運動不足で循環が悪いのか、手足が痺れたり、寒くなったりで目が覚める。お肌がボロボロなのは、単に栄養不足だけではなく、睡眠不足も影響していただろう。


娘の栄養不足が心配で、手に入れようと思い続けていたミロを買うこともできた。運動不足解消のために筋トレをするが、筋肉はつかずに痩せ続ける夫、確実に摂取カロリーが足りない。わたしも貧血気味だ。スーパーにもコンビニにも山積みでベトナムの町に溢れているミロが、まさか1ヶ月以上も買えない日が来るとは思いもしなかった。未だかつてこんなにミロを欲したことはなかった。

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いつの間にか紙ストローに変わっていたミロ


ホーチミンもグリーンゾーンに分類された地域から週1回の買い物を許可したり、区を跨いでのデリバリーが可能になったり、徐々に緩和に向けて動き出していた。
もうこれ以上厳しくなることはない、気持ちがどんどん前向きになる。食べ物さえ困らなければ、部屋から出なくてもヘッチャラだと言い切れる自分がいる。

そんな中で迎えた23日のブンタウ15号への緩和。

感染者ゼロではないのに、急に出歩き始めた人達に多少の不安を感じつつも、やはり嬉しい。どこへも行かなくても、外から聞こえる人々の生活の音に心が弾む。

けれど、マンションから外出してもいいというお達しは出ていない。なし崩し的にいつの間にか解除されてるパターンか?デリバリーを受け取るふりをして、ロビーに出て様子を伺うと、いつもより明らかに人が多い。バイクも出入りしているようだ。

でも、本当に出て大丈夫だろうか?

一応待つこと数日。土曜になり、勇気を出して外に出てみた。最後に出たのは7月末だから…実に60日ぶりの外出(ワクチン接種のための外出を除いて)。歩いて10分弱の輸入品店Q martへ向かう。ずっと封鎖されていて行けなかった地域へと足を運ぶ。


道路にはクシャクシャに丸められたバリケードテープが。このテープ一本で閉じ込められていたかと思うとなんとも言えない気分になった。

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少し歩いただけで大量の汗をかく。しかも、汗がびっくりするほど臭い。今まで嗅いだことのない脇の匂いにクラクラする。これ、本当のわたしの体だろうか?

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Q martも営業を再開。
大量の商品が入荷したところらしく、品出しに大忙しの様子。

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久々に買えたハム、バター、コーン缶。
歩いたご褒美にアイスも少し。

帰り道に隣の果物屋にもよる。最後にやって来た時は、店頭に2、3個のドラゴンフルーツしかなかったのに、いろいろな果物が山積みされている。いつもの光景、愛おしいベトナムの日常。

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これまたお久しぶりのマンゴーを買う。外国人好みのよく熟れた黄色いマンゴーが目に入った。今日食べるのと明日食べるので1個ずつね、とおばちゃんに伝えると、ちょうど良い頃合いのを選んでくれた。

満たされた気分で部屋に戻る。たった10分歩いて買い物に行っただけなのに、ものすごい解放感、充実感。買ってきたものを見てニヤニヤが止まらない。

まだまだ15号発令中。自由に出歩ける身分ではないけれど、買い物に出られる。週1回でもいい、自分で選んで食べ物が買えることの喜びを噛み締める。

ありがとう、ありがとう。
何に感謝しているのかわからないけれど、とにかくありがとう。


この生活に慣れてしまうと、またあれがないだの、これがないだの、わがままを言い出すかもしれないけれど、とにかく今はどんな些細なことでも感謝の気持ちを忘れずにいこう、そう思った。


9月末、今年は一個も月餅を見ずに中秋節が終わった。この部屋からは月も見えなかった。けれど、秋の夜長をそれなりに楽しんでいる。

娘は『ドクターストーン』にはまり出した。疎開生活がなければ、こんなにたくさんのアニメには出逢わなかったし、こんなにも映画を観るチャンスもなかっただろう。

親子のスキンシップも継続中。あまり話さないので、滑舌は悪くなったけれど、たくさん笑うので表情筋は衰えていないはず。

あとは、いつホーチミンと自由に行き来できるか、自宅へ戻れる日を待つだけ。今年中に帰れたらいいな。

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