
全体最適思考を組織に浸透させる方法
こんにちは。
ベトナムアンカーです。
初記事からベトナム関連情報とは全く違う内容ですが、
私の様々な企業を見てきた経験と、それなりの規模の企業組織で揉まれ、
足掻いた経験を元に、突っ込んだ企業運営のお話をと思い、書かせてもらいます。
まずは表題の全体最適というワードですが、経営学や組織論なんかを学んだ方には馴染みのある言葉だと思います。
企業組織全体にとって最適な状態を達成するための考え方で、
企業運営全体やサプライチェーンを一連のシステムや工程と捉えて、全体の流れが最もスムーズになるように各部門・セクションの方針を定める。
...なんとなく聞こえが良くて上手くいきそうですよね(笑)
しかし、実際の企業運営で全体最適の思考を組織に当てはめても大概は上手くいきません。
その要因をまず分析していきましょう。
1.部門別の数値管理が必要だから
企業内組織にはもちろん組織と名が付く以上、課員や班員が存在し、
その人達の日常業務の出来高を把握し、昇給や賞与などの評価指標とするために、生産性や売上管理を必ず行います。
という事は個別のセクションで生産性や売上を月次や週次で管理しなければならず、
当然各セクションの管理者は、自分が管理するセクションの数字の見栄えを良くしようと躍起になります。
一番最悪なパターンは受注量や仕事量の制約があったとしても御構い無しにモノを作り続ける事。
みんな分かってます。作りすぎ在庫持ちすぎ。
ですが、あくまで生産性や売上で判断されてしまう立場なのです。
駄目だとわかっていても、材料や部材がある限り作らなければ評価されません。
経営側も数字で評価する方が楽です。
上がってくる生産実績や売上実績の報告書を眺めるだけで済むからです。
なんか凄い違和感ですよね。
在庫を持ちすぎると、注意される。でも人員を抱えているのでモノを作らないと生産性が下がる。だから評価も下がる。
数字に現れないスキルアップに費やした時間や、後の生産性向上に繋がる改善活動を評価すれば良いのです。
でもそれを評価するなら、従業員1人1人と向き合わなければなりません。
そんな面倒くさい事はしたくないのです。並の経営者は。
2.組織が大きくなれば相性の良し悪しも増える
組織と言っても、人間の集まりです。
ロボットを並べて生産ラインを組むだけなら、大量に同一品質の製品を作る事ができます。
しかし、人間の集団である組織では人どうしの相性の良し悪しが必ずあります。
全体最適といっても組織全員が同じベクトル・同じ事業目標に向かって業務を行わなければならず、
全員が事業方針を詳細に理解し、同じベクトルで業務にあたるなどは実質不可能です。
必ず個人間の軋轢や相性の悪さが露呈し、部分最適に陥ります。
組織内の至る所の小グループ(班・チーム・係)どうしが事業方針を完全に理解し、
全体の流れを意識して業務にあたることがどれだけ難しいか、ある程度の規模の企業で働いた経験がある人なら良く理解できるでしょう。
3.真の全体最適はサプライヤーを含めた製品やサービスに関わる全ての関係者の共通認識が必要
同一企業の各セクションに共通認識を持たせるだけでも困難である事は前項で書きました。
その上に、サプライヤーを巻き込んで全体最適を達成するとなると、どれだけ難しいかは明らかです。
さらに、サプライヤーは1社のみから受注している企業は少なく、リスクヘッジのために数社の収益源を確保しています。
そんなサプライヤーに自社の全体最適のために、無理な納期を守らせるなら、
それは他社にとっては部分最適以外のなにものでもありませんよね。
サプライヤーは目に見える効果、例えば単価アップや受注量増加、定量的な長期受注の保証などのインセンティブがなければ動きません。
並の企業の通常の意思決定なら、特定のサプライヤーにそのような優遇措置をとる承認はおりません。
そういった点でもサプライヤーを全体最適に巻き込むのは困難なのです。
全体最適を達成するには
では、企業運営に対してどのような形で全体最適思考を浸透させ、組織全体のベクトルを同じ方向にむければいいのでしょう。
その答えとしてまずは、個別セクションの数字管理を撤廃する事からです。
それだけで、組織が数字のしがらみから解放され、かなり柔軟に各セクションの調整に対応できるようになります。
そして、数字管理の必要がなくなれば、職長レベルの業務負担がかなり減り、
その余剰時間を個人と向き合った人事評価の時間にあてれば良いのです。
そして、共通認識として、スキルアップや改善活動が適正に人事考課において評価されるとなれば、
各セクションが無駄な偽りの生産性を確保するための無駄な在庫積み増しをしなくなります。
よって在庫減少により、仕掛かりが減り、無駄な材料費が減り、無駄な作業工数が減り、スキルアップや改善活動にあてる時間的余裕が増えます。
上述のような良いスパイラルが回りだすと、全体最適を押し付けずとも、
各セクションに余裕が生まれ、セクション間の調整がスムーズにいくようになり、結果的に全体最適思考の組織となります。
この方法の良いところは、数字で人事考課を行わないという事が担保されているので、
各セクションの担当者が変わろうとも、組織構成が変わろうとも、永続的に全体最適思考を維持できるという点です。
個別セクションの数字管理を撤廃すると、標準原価計算を導入している企業では少し問題となるのですが、
そのあたりに対するアプローチは別記事で書いていきたいと思います。
ある程度の規模の経営者の方で、組織を全体最適思考にしたいという要望があるなら、上述の方法を取り入れる事を推奨します。
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