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図書館

暫く書いてなかったし読んでなかったんだけど、文字を目にしたらなんか泣きそうになって、やっぱりこれだ、って思った。

くどうれいんさんの最新エッセイ『コーヒーにミルクを入れるような愛』が素晴らしい。おこがましいけどすこし似たとらえ方をしている気がする、日常全般について。感覚がつながる感じ。特に「夕陽を見せる」が良かった。綺麗な夕陽を眺めながら美しさに涙が出そうになるところとか、みんなに幸せになってほしいという気持ちが流れ出てしばらくしみじみと浸る感覚とか、自分のからだに漠然と思いを馳せるところとか、ぜんぶ好きだし、わかるし、表現がうまい。
小説的な語り口でエッセイを書いているの新鮮だし良いなと思った。こんなに人物名が出てくるのってあまり読んだことがなかった。私もそういうの書いてみたい。
「コーヒーと結婚」も良かった。そうだよね、って思う。わたしは恋じゃなくて愛がしてたい、とずっと思ってるけど。ずっと思ってたけど。

親知らずを抜いた。診察台に横たわって待っているとき、緊張して、横隔膜が引きつって、笑いそうになっていたんだけど、いざ抜かれはじめると何が起こってるのか全然わからなくて、恐る恐る感覚を研ぎ澄ませてみてもよくわからなくて、今度はどういう演劇しようかな、演劇いっぱいみたいな、新入生いっぱい入ってくれてうれしいな、とか考えてたら「おわったよー」って言われて、みたら血だらけのめちゃくちゃ大きな歯があった。持って帰る?って聞かれて、呆けた顔でうまくしゃべれないまま、三回くらい迷って結局持って帰ることにした。抜けた歯って特に思い入れもないし、どういう気持ちで持ってたらいいか一番微妙だ。なじめずにふわふわと浮いている歯がひとつ。
抜歯の後を縫われたんだけど、その糸黒かった。口の中に黒い糸があるの、ちょっといい。今のわたしの口の中には黒い糸があるぞ!

もう五月なのびっくりだ。終わるときはいつもあっけない。新人公演もまだあんまり終わった感じがしてないのに、新歓公演も終わってしまった。終わりってなんだ。終わった、って心から実感したことがもしかしたら一度もないかもしれない。いつも、立っていた地面がじわじわと溶けていくように物事が終わる。終わった、って思えたらきっと気持ちがいいんだろうな。

はるまきごはんを聴いて、最果タヒを読んで、手紙魔まみを開くたび、中高生の時のわたしがでてくる。雪舟えまは大学生になってからの方が沁みる。くどうれいんさんのエッセイも、たぶん今ぐらいからの時期が一番よく読めるんじゃないかと思う。スピッツも大学生になってから聴きだした。椎名林檎はもう少し早くから聴いてたかった。
中高生の時の感覚が気づいたら薄れていて、そのことに焦るというよりかは、薄れていくことに気が付かない自分にいつも焦る。昔はたぶんちょっと不幸せだった。今はあまりにも幸せが溢れすぎている。とてもありがたいしこのままずっといたいと思うけど、頭が悪くなっていきそうで少しこわい。

図書館で大きな声で笑う人の気が知れない。人との距離を体にしみこませたい。面白いことを言う人が好き。その人にしか言えないことだって思う時、一番どきどきして、目を見て、大好きだって思う。

書庫の位置がわからなくてはにかむお兄さんが可愛い。
書庫まで案内してあげた時の、知らない人同士のちょっとした世間話。もう多分二度と会わないっていう人と話すのが、楽で、寂しくて、好き。バイトってそういうのにうってつけだと思う。この間バイト中(宿泊業)、ここに今日泊まりに来ているお客さんとはきっともう二度と会わないんだって急に思って、働きながら一瞬泣きそうになった。逆もまたしかり。旅先で出会ったお姉さん。幸せですように。
泣きそうになってばっかりの毎日だけど、泣きそうになるのが一番気持ちいいし生きてるって思う。

ひとつひとつ区切りをつけるために、一度完全なエゴで作品を作ってみたい、と思った。




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