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弦音・鳴弦

「ツルネ」シーズン2
弓道のカッコよさを余すところなく描いてくれて、もう感謝しかない。
よくぞここまで細かく表現してくれたなと、アニメを見て感謝の念が沸いてくるのは初めてです。

ツルネとは、弦音のことです。矢を発した時に鳴るつるの音。
その矢が的にあたった時の音が、的音まとおと
2つで1つの組のような音なので、中らないとカスっという残念な音になります。
弦音は人によって、そのときの調子によっても変わります。
的音は矢の勢いや強さ、的のどの部分に中るかでも変わるのですが、アニメの中では、試合中の一人づつの弦音や的音がちゃんと違っていて、素晴らしい・・と思いました。

「音」も「言葉」も、人を不快にするものと癒すものがあり、太古から弓に霊験れいげんを見るのは、その姿、形の美しさのためだ。真の美しさの前では人は邪心を失くし、美しい弦音つるねは人を癒す波長を持つ。
鳴弦めいげん-喜びの音。
すべてをリセットさせる、ゼロに還す音。

「ツルネ2」綾野ことこ著(京都アニメーション)

そういえば鳴弦めいげんといって、弓に矢をつがえず、張ったつるを手で強く引いてビーンビーンという音を出す儀礼があります。
源氏物語(漫画のほう・・「あさきゆめみし」)の中で、病気の祈祷のときにやってる場面があったのですが、もともとは誕生儀礼として平安時代に始まったとか。
天皇の日常の入浴時に行われたり、病気や不吉な出来事があった際の、穢れや魔を払うためにも行われたようです。

原作をぱらぱらと読み返していたら、いい言葉がたくさん書いてあったなと、あらためて気づきました。

・・大きく引分ひきわけ、弓の中へ体を入れていく。満ち足りた丹田たんでんからそっと息を洩らす。すると、的自身が射手いてへ寄ってきて同化する。的は私で、私は的。個の境目の薄れた大いなるわたしは弓を引く。
天地左右に伸びる十文字を描いた。

肉体を研ぎ澄まし、極限の集中状態に入るには、頭の中に言葉があると邪魔なのだ。思考が肉体の活動を妨げる。そして、頭の中をからにする手助けとなるのが深い呼吸だ。息とともに、「思い」を体の外へ出してやる。

「ツルネ2」綾野ことこ著

もうひとつ、アニメのほうにはない面白い会話が。

「・・・古来、会話は癒しだったんだよ。言葉の成り立ちは諸説あるんだが『オ』は大を、『コ』は小を表していて、オもコも人の耳にとまって『オト』と『コト』になった。『オト』には理念や概念などの意味はなく、『コト』にはある。心の語源は『ココルー凝る』なんだよ。心とはもともと重いもの。凝り固まった心を解き放つ、手放すのが『話す』なんだ。」
「弓道の『離れ』とも繋がりそうだ」

「離れ」とは、矢を発射すること。
射手いては、弓を引き絞った状態「かい」で死に、「離れ」で再び生まれるのだそう。
一射絶命いっしゃぜつめい」という言葉があるけれど、この1本しかないと思って命をかける、という心持ちで引くということです。
そこまで思って引いたことはなかったなぁ・・・。

弦音のシーンばかり集めた動画がありましたが、著作権がアレでは?と思ったので、公式PVで弦音が入っているものを。

「ツルネ」シーズン2は来週が最終回。しっかり録画します。

*3月いっぱいGYAO!で全話無料配信しているようです。


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