J2第24節 ツエーゲン金沢vsヴァンフォーレ甲府

前節またしても引き分けに終わり、5試合連続引き分けとなった甲府。
9月は3勝6分と9戦負け無しで現在5位につけている。
今節はアウェイ金沢での一戦となる。

金沢は9月は絶好調の福岡に敗れた以外は負けていない。
2勝5分1敗と負けないチームであり、甲府と似たように勝ちきれていない。
3試合連続完封中と守備が堅いチームだが、得点は1点しか取れていない。

前回対戦はホームで2対1と勝利を挙げている。
直接対戦の成績は3勝1分1敗で現在4戦負け無し中であり、金沢ホームでは甲府の2勝となっている。

負けないチームになった9月。
勝ちきれるチームになるための10月にしたい。
5連戦第3ラウンド最終戦は弾みをつける一戦としたい。

1.「きる」力

スタメンはこちら。

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甲府は前節から9人変更。
前回対戦より6人変更となった。
注目は中山陸。
今シーズン7試合出場しているが、デビュー戦となったアウェイでのヴェルディ戦は守備でのポジション取りに苦労していた。
そこから2試合は5分に満たない出場。
初先発の愛媛戦では下がってしかボールを受けられなかった。
次の群馬戦では高い位置でボールを引き出せるようになった。
岡山戦では得意のスルーパスを出せるようになり、新潟戦ではゴールまであと一歩に迫った。
毎試合一歩一歩確実に成長してきている。
今節は結果を残す試合としたい。

一方の金沢は前節から1人変更。
前回対戦から6人変更となった。
注目は石尾崚雅。
開幕から全試合フル出場を果たしている20歳の選手。
フィールドプレイヤーでフル出場を果たしているのは群馬の岡村と石尾のみ。
セレッソ大阪のU18から加入し2年目の選手だが柳下監督の信頼を勝ち取っている。
超過密日程の今シーズン、全試合フル出場できるタフさ、前回対戦時に見せたバホスに負けないスピードが特徴の選手である。

今節のボール保持時の立ち位置はこちら。

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人を捕まえて守りたい金沢だが、マークすべき相手が定まらない立ち上がり。

試合後の廣井選手のコメントより。

『立ち上がりから人を掴むのが難しくて、良いリズムとはなかなかいかなかった』

マンツーマンで人を捕まえたい金沢には可変の効果はあった。

試合後の柳下監督のコメントより。

『対戦チームもポジションや選手を変えてくるので、こちらもそのすべてのパターンに対して「この時はこう」と全部伝えられません。
大まかに、後ろに後ろは3枚、4枚とか、前に2枚、1枚、という場面の対応は伝えていますが、そのパターンのトレーニングをする時間はないので、確認くらいになっています。そこを、選手たちがゲームの中で状況を見ながら守備ができるようになれば、そんなにバタバタせずにやれると思います。」

このコメントを見る限り、金沢はあまり甲府のスカウティングはして来なかったのではないかとも取れる。
試合により立ち位置は変わるが、ビルドアップ時に433化することと押し込んだ後は5トップ化することはどの試合でも行っている。

しかし、10分過ぎにはマークすべき相手も決まる。

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試合後の柳下監督のコメントより。

『ただ、前にも言いましたがうちの選手たちは、自分のマークが決まったらそれぞれ責任を持ってしっかりと守備できるようになっているので、なかなかボールを奪えなくても、ゴールを守る、得点を奪われない、ということはなんとかできてきていると感じています。』

マークが決まる前に得点を奪えれば試合を優位に進められたかもしれない。

最初のチャンスは19分の荒木のシュートの場面。

起点は今津のサイドチェンジから。
磐田戦では得点に繋がるロングパスも出しており、今津からの展開というシーンも増えてきている。

次のチャンスはこのシュートから得たCKから。

ゴール前での混戦だがGKの白井に阻まれる。

しかし、ミスから先制を許す。

相手CKの流れからカウンターを仕掛けたが、太田の横パスが短く相手に奪われ逆にカウンターを食らってしまった。
シュートを打ちきらなくてはいけない場面だった。
数的同数だったため、小柳の対応も身体の向きを変えていれば防げた場面とも言えるが、そこは個人の課題。
攻撃をやりきれなかったことはチームとしての課題。
この場面のようにリスクをかけて攻撃に出た場合は、攻撃をやりきらないとカウンターを浴びるリスクは増える。
しかし、この場面あのパスが繋がっていればビッグチャンスになっており、シュートまで完結させていればいいカウンターだったという見方になる。
得点と失点は表裏一体である。

試合後の伊藤監督のコメントより。

『CKからのカウンターで失点した場面はリスクマネージメントやセキュリティ、守備のところがちょっと薄かったと思います。』
『CKから入ってカウンターに入ったところでパワーを持って出ていって、やり切れず、最後、掻っ攫われた。リカウンターを喰らった。リカウンターを喰らうと崩れるところ。ある意味そこでやられた。チームの若さというか、若い選手が出ていたので、“イケる”というのの逆を取られた。』

試合後の長谷川選手のコメントより。

『相手のカウンターのところで、相手のボールが緩んだのでこれは奪えるなと思いました。
奪ってからは僕の前にいた選手がボールを取りにスピードを上げてきたので少し剥がして、クリアしようかなとも思ったのですが相手の選手が思っていたより離れていて、(加藤)ムツくんを見たらムツくんの前にスペースがあったので出せるなと思って出しました。』

試合後の島津選手のコメントより。

『加藤陸次樹選手が前向きでフリーでボールを受けたので、僕は前にアクションを起こそうと思いました。
タイミングよく相手の背後にボールを出してくれて、キーパーが前に出てきているのも見えていたので、あとはしっかりとキーパーをかわして決め切るというところを考えてシュートを打ちました。』

中途半端では失点に繋がってしまうことがわかった失点場面といえる。
また、チャンスに決めきれないと試合を難しくしてしまう。

失点後からビルドアップの形を変更する。

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新井をアンカーに上げる形の可変に変更する。

前半のシュートは10対1。
より多くのチャンスを作り、シュートを放ったのは甲府であったがスコアは0対1。
攻撃をやりきること、シュートを決めきることが求められる。

2.シンプルさ

後半開始から太田に代わってドゥドゥを投入する。
新潟戦でも同様の交代を行ったが、その時とは異なり左シャドーに入り中山が右へ。

ハーフタイムの伊藤監督のコメントの1つ「ミドルシュートを打とう」からすぐに追いつく。

試合後の小柳選手のコメントより。

『ゴールはラッキーというか。前期も古巣戦で決めていた中で、そういうイメージがある中で決められたのは良かった。だからこそ逆転して勝ちたかった。』

アンカーに新井が入ったことにより小柳、今津の前方にボールを運ぶスペースが生まれた。
そのスペースを上手く利用し、小柳が思い切り良く足を振り得点に繋げた。
CBが運ぶこと、シュートコースがあれば足を振ることの大切さがわかる得点。

前線で起点を作れない金沢は60分に3枚代え。
島津、杉浦、加藤に代わって金子、山根、ルカオを投入する。
64分には窪田に代わり高安を投入し前線を総入れ替えする。

後半に入りコンビネーションから右サイドを崩し、ドゥドゥの個人技で左サイドを攻略するもクロスが合わない場面が続く。

試合後の伊藤監督のコメントより。

『我々がネット揺らせていないのは回数を増やしていかないといけない。ちょっとアバウトでもゴール前に入れていかないといけない。綺麗に崩そうとしているところがある。フットボールをしようと選手はアグレッシブにやってくれている。そこから一つ壁を乗り越える、点を取るために個人でひとつタイミングを外すとか、クロスをピンポイントで合わせるとか、パワーを持って入るところ、ここはちょっと足りないのかなぁというのは正直な感想です。足を振るところ、シュートに行く意欲を含めてトレーニングをしないといけないし、意識も変えないといけない。 』

飲水タイム明け甲府は勝負に出る。
荒木、ラファエルに代えて泉澤と松田を投入する。

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松田を右のWBで起用し、須貝を左へ。
左のシャドーに泉澤という形に変更した。

しかし、直後にその松田のスローインを受けたドゥドゥのリターンが合わず相手ボールのスローインとしてしまう。
そのスローインから勝ち越しゴールを奪われる。

試合後の小柳選手のコメントより。

『チームのやり方的にはリスク管理を怠らず、入ったところをつぶしにいかなければいけない。個人的にはあそこで裏を取られたりしたら失点につながってしまう。』

試合後の伊藤監督のコメントより。

『後半、同点になってから我々が攻撃をしているところでのスローインからやられた所も同じような状況。相手の個の力もあるが、我々が攻撃をしているところの守備のマネージメントがちょっと薄い状況があった。』
『2点目も後半いい状態のときに、これから逆転するというときに、攻撃をしていた(泉澤)仁からチェンジサイドをして右サイドからクロスが当たってと…いうところだったと思うんですけど、そこで相手ボールになって、スローインでそのまま縦を突破された。改善できるところでもあり、意識が低かったところがあると思います。ゲームを重ねていくために、しっかりしたセキュリティをかけないといけない。』

試合後の柳下監督のコメントより。

『ボールを奪ってからの切り替えの早いカウンターでゴールを狙って、今日はルカオが非常に良いタイミングでシュートを打ってゴールを決めましたが、今までと今日の試合との違いは決めるか決められないかじゃないかなと思います。』

2失点とも防げた失点。
伊藤監督のコメントにあるようにリスクマネジメントや守備のセキュリティを疎かにしてしまった。
守備には一定の成果が出ていただけに攻撃に意識が傾いてしまっていたのかもしれない。
また、小柳は2点とも絡んでしまったが普段はやらないようなプレーであったように思う。
3試合連続の出場、この5連戦では4試合目の出場と疲労が溜まっていて判断が鈍ったのだろう。

一方で得点というのは綺麗に崩さなくても取れるものである。
思い切って足を振ること、縦につけて背後に抜け出すこと。
後半生まれた2得点はいずれもシンプルな形からの得点であった。

3.500試合と1試合

81分に中村、中山に代わって山本とメンデスを投入する。
山本にとっては甲府での500試合目、メンデスにとっては甲府でのデビュー戦となった。

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山本を3バックのセンター、メンデスは最前線での起用。
メンデスの最前線での起用の狙いはパワープレーであった。

しかし、なかなか割り切ってメンデスに放り込むことができない。
なりふり構わず得点を奪いに行く姿勢を見せたベンチと積み上げてきたものを出そうとしたピッチ上の選手たち。
勝てていないことからの焦りかと思うが、勝てていないからこそ意思疎通は重要となる。

山本はJリーグ通算500試合達成時に、甲府で500試合出たいと言っていたが今節の出場で達成。
勝ちで祝いたかった。

メンデスは甲府に加入後初出場となったが本職ではないFW起用。
それでも高さは見せ、シュートも2本放った。

試合に出場したということはコンディションが上がってきた証拠であり、次の5連戦では本職のCBでの起用も見られるだろう。

4.幻想

「いいサッカーをしている」は幻想である。
現実は勝ち点3を取ること、得点を奪うことが目的である。
いいサッカーをすることではない。
この5連戦内容はどの試合も良かったと言える。
が手にした勝ち点はたったの4。
内容と結果が見合っていないと言える。
だからこそ勝てない時の「いいサッカーをしている」は幻想でしかなく、これに囚われていては本来の目的を見失ってしまう。

伊藤監督のコメントより。

『まったくもって私の責任だと思うし、勝ち切れなかったことはチームとして反省すべき点。2020年は全体のチームにこういうゲームが多いというのはあるし、我々も一つ連勝すれば順位は上がる。勝って波に乗ることが必要になると思う。前の連戦ではしっかり勝点をとれたこと、これは自信を持っていいと思う。引き分けが多かったことは反省して、もっとアグレッシブに戦わないといけない。ネットを揺らさないと勝てない。次の5連戦に向けてリスクをかけてでも点を取りに行くところをチームとしてやっていきたい。』

しかし、今取り組んでいることは間違っているのだろうか?
内容が良くても勝てなくては意味がない。
それでもドゥドゥにフィニッシュから崩しまで依存すること、メンデスをパワープレー用員としたことは正しかったのか?
決めきれないからこそ最後の部分を個の力に依存してしまっている。
それではこれまで積み上げてきたものが台無しとなる。
伊藤監督のリスクをかけてでも点を取りに行くというのは、個人に依存してオープンな撃ち合いをということではないはず。
今の立ち位置にこだわり、いかに優位性を持てる場所を攻めていけるかが重要となる。
チームとしてチャンスは作れている。
焦れずに今の形を積み上げていき、チーム全体として最後の質や精度を高めていくことや丁寧なビルドアップからの攻撃だけでなく、単純にDFラインの背後を狙う変化をつけることが勝てるチームに変わるために必要となるのではないか。

5.あとがき

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痛すぎる敗戦。
これで6戦勝ちなしとなった。
昇格へ向けてという観点では、いいサッカーはしているが勝てないではダメである。
しかし、J1時代の守ってカウンターしか無い形からの脱却を望み、チームを作り直している途中と考えれば着実に成長はしている。
昇格に育成、スタイルの構築と望めるほどの余裕のあるチームでは無い。
ましてやシーズン前主力のほとんどが移籍した。
それでもこの難題に挑戦をしている。
間違いなく選手、スタッフは歯痒く悔しい思いをしている。
私たちにできることは信じ、後押しをしてあげることだけである。
次の試合まで1週間。
上位陣との連戦で連勝し、もう1度這い上がろう。

MOM ルカオ
途中出場から決勝点を挙げた。
得点だけでなく山根と共に途中出場から起点となり、時間を作った。
スピード、パワー、決定力を兼ね備えた素晴らしいストライカーであった。

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