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J2第26節 ジェフユナイテッド市原・千葉戦 レビュー

中断明け3戦目はジェフ千葉との一戦となる。
ホームで勝ちを収め、巻き返しのきっかけとなる一戦としたい。

1.スタメン

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甲府
前節から5人スタメンを変更。
山本が怪我からの復帰戦、須貝がプロ入り初のスタメンとなった。
開幕から出場を続けてきた関口が初めてメンバーを外れた。

千葉
前節と同じスタメンとなった。
前節負傷交代した矢田だが、今節もスタメン出場。
ベンチには伊東が12試合ぶりのメンバー入りを果たした。

2.二転三転

前節新潟相手に良い試合をした千葉は立ち上がりからその流れと勢いを持って試合に入る。

試合後の尹晶煥監督のコメントより。

『前節はすごく良かったと思いますし、今週のトレーニングでも選手たちのコンディションは良かったのでそのような選択をしました。』

千葉はシンプルに前線に入れていくことで甲府陣内でプレーする時間を多く作っていく。

最初のチャンスは千葉。

櫻川へロングボールを入れるとセカンドボールの争いに勝った田口がミドルシュートを放つ。
シンプルに櫻川の高さを活かす攻撃は迫力があるが、今節の千葉はボール保持が増える試合となる。

試合後の尹晶煥監督のコメントより。

『相手にとってはホームゲームですので、もう少し前から守備をしてくると予想していました。しかし前線からのプレッシャーはそれほど厳しくなく、こちらが敵陣に進入してからボールに対して厳しくアプローチする守備をしてきました。それに対してこちらはウイングバックを高い位置に置き、2シャドーが相手の間のポジションに顔を出してパスを受ける形を作ろうとしていました。(熊谷)アンドリューと(田口)泰士には「自由に動きながらボールを動かす」という指示を出していたのですが、そういう部分ではうまく崩せた場面もあったと思います。』

甲府が前からプレスを掛けて行かないこともあり、千葉はボールを動かし攻め手を探っていく。

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DFラインが大きく開き、熊谷がボールを引き出しに降りてくる。
尹晶煥監督のコメントにあるようにWBは高い位置で張り、シャドーがライン間にポジションを取りボールを動かしていく。
ビルドアップの起点となるのはチャンミンギュ。
積極的に縦パスを前線に差し込み、甲府ディフェンスを押し下げていく。

試合後のチャンミンギュ選手のコメントより。

『ミラーゲームだったので相手を揺さぶる横パスだけになってしまうと相手のプレッシャーを受けやすいので、そういう部分を回避するために、もちろんチャンスを作るためにも縦パスを積極的に入れていきました。』

一方の甲府は山本が中盤に上がる形で可変し、ビルドアップを行う。

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左サイドでは泉澤、右サイドでは須貝がサイドに張り、野津田と長谷川がリラに近いポジションを取る。
左サイドはこれまで同様にローテーションしながら、荒木がサイドに張り泉澤がライン間でポジションを取る形も見せる。
右サイドでは須貝がインサイドに入っていく姿勢を見せていく。

13分には甲府が決定機を作る。

千葉がプレスを掛けてきたが、須貝の所に末吉が食いついたことでできた背後のスペースを長谷川が突きチャンスを演出。
リラが背後へ飛び出す動きを見せたことで新井一輝が吊られ、野津田が空くことになったが福満が一瞬迷った隙を突き泉澤が抜け出す。
新井章大にシュートを止められたものの、千葉を崩し決定機を作る。

続けて18分にも甲府に決定機。

オフサイドのようにも見えるが、小柳がボールを運んだことで千葉のDF陣は意識が前に向いた所へリラが背後を取り裏へ抜け出す。
シュートブロックに来たチャンミンギュを冷静に交わし、シュートを放つがここも新井章大が防ぐ。
この場面では山本が中盤に上がらず、小柳がサイドにスライドする形でビルドアップし、千葉の背後を取る。

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状況に応じてビルドアップの形を変えられるのが甲府の強みではある。

徐々に千葉のプレスが弱まる中で甲府が押し込んでいく展開となる。
前節の千葉は新潟相手にハイプレスを掛け続け、新潟のビルドアップを阻害していったが甲府はシンプルに背後を突くことも見せるためハイプレスを掛けることで連動しDFラインを上げると裏を取られるリスクもあり構えて守る時間も増やす。

ボールを持つ時間が増え出したことで攻撃に人数を掛けられるようになった甲府は25分にPKを獲得する。

左サイドでの繋ぎから山田を経由し、中央に入ってきた須貝がペナルティエリアに侵入するとチャンミンギュが引っ掛けPKとなる。
この場面はこれまで起用されていた関口であれば、大外でクロスを待っていたのではないか。

試合後の須貝英大選手のコメントより。

『サイドの選手は張るだけでなく、中に入って相手の脅威になることが大事になると考えています。
(PK獲得の場面は)中に入っていく良い判断ができて、ファーストタッチが決まってPKを取れた。良い判断だったと思う。』

須貝が違いを見せたことがPKに繋がった。

千葉相手であることから野津田にリベンジの時と思われたが、キッカーはリラ。
新井章大が反応し、手に触れるもゴールネットを揺らしリラがの試合連続ゴールで先制に成功する。

試合後の尹晶煥監督のコメントより。

『早い時間帯に失点してしまい、難しい試合の始まりになってしまいました。最初から主導権を握って相手を崩せた部分もあったのですが、あの失点で難しい試合になってしまったと思います。』

先制したことで甲府はより重心を下げたことで、千葉はボールを保持しながらもチャンスを作れない。
難しい展開となったと尹晶煥監督はコメントしているが甲府としても難しい展開となってしまう。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『相手を押し込みながらゲームを運べていましたけど、1点取ったことによって比重が後ろに下がってしまいました。それによって相手のやるべきことがはっきりし、ロングボールに対してのセカンドボールという構図が出来てしまったと思います。』

リードをすると重心が下がり、相手に押し込まれる展開となるのはこれまでにもあった。
引きすぎてしまいボールを奪いに出て行けず、一方的にボールを持たれる展開となる。
引いてスペースを消すことでブロックの外を回させる時間は多く、危険な場面は作られないが逆に千葉としては割り切りやすい展開となり、千葉の流れへと変わっていく。

44分にはシンプルな攻撃から千葉に決定機。

中盤でセカンドボールを拾うと背後を抜け出した櫻川へロングボールを送る。
抜け出した櫻川だが、シュートは河田が防ぎ同点とはならなかった。
40分を過ぎた辺りからシンプルに櫻川を使っていく形を増やしたことでシュートチャンスが増したが、決めきれず。

前半はこのまま甲府が1点をリードして試合を折り返すこととなった。
千葉の流れで始まり、甲府がペースを掴むと先制に成功するもリードしたことで重心が下がり、千葉に再度流れを許す。
主導権が行ったり来たりする前半となった。

3.悪夢

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『我々が得点した後から相手がロングボールを多用した中で、セカンドボールを拾えなくて押し込まれる状況がありましたが、後半に入って、セカンドボールを拾って攻撃に繋げる事、カウンターで得点を取り切りたいということがありました。』

伊藤監督はセカンドボールを拾い、カウンターで追加点を取り勝ち切ることを目指すが、後半に入っても流れは変わらず、千葉が甲府陣内でボールを保持していく。
展開は前半と変わらないが、前半の終了間際にも見せたようにシンプルに櫻川をターゲットに前線にボールを入れていくことで甲府のブロックの中にボールが入る回数が増えていく。

後半も最初の決定機も千葉。

千葉のビルドアップに対し、甲府がプレスを掛けにいきDFラインが押し上げた瞬間に背後を突くパスを出され福満がシュートを放つが河田が防ぐ。
下げたボールに対し、DFラインを上げることはコンパクトなブロックを形成する上で不可欠だがボール保持者に対してプレスが掛からなければこのような形は作られてしまう。
DFラインを上げるならプレスの強度を上げなくてはいけなく、掛けきれないなら低いラインを設定し構える守備を行う必要がある。
中途半端になることが一番危険である。

ボールを奪えず、取りきれてもカウンターに繋げられないことで千葉が一方的に押し込んでいく展開となる中、64分に甲府が先に選手交代を行う。
リラに代えて宮崎を投入する。
得点を決めたリラだが、流れの中ではチャンミンギュの前にボールが収められず起点となりきれなかった。
有田ではなく、宮崎を投入したことで前線でボールを収めることよりもカウンターの鋭さを増すことを狙う。

だが、66分に甲府にアクシデントが起きる。
中盤でのボールの奪い合いで接触した山田が負傷し、交代を余儀なくされてしまう。
代わって野澤が投入される。

追いかける千葉は71分に2人の交代を行う。
末吉と矢田に代えて安田とサウダーニャを投入する。

75分に宮崎のパスカットからカウンターを仕掛け、得たCKの流れから甲府に決定機。

泉澤が仕掛ける体制に入ったことで千葉は人数を掛けて対応するが、野津田がサポートに入り千葉ディフェンスの逆手を取る。
ホールで前を向いた野津田がクロスを入れると残っていた新井が合わせるが、枠を捉えられず。

直後にシンプルなクロスから櫻川がヘディングシュートを放つが、力なく河田が防ぐ。
サウダーニャを投入したことでターゲットが増え、迫力が増してくる。

今度は甲府がチャンスを作る。
78分に泉澤の仕掛けから決定機。

先程と同じように福満と向き合う形を作るが、長谷川の立ち位置が良く新井一輝をロックすることでカバーに入れない形を作る。
ドリブル突破からエリア内に侵入し、シュートまで繋げるが新井章大が防ぐ。
起点は河田から。
バスケットのチェストパスのような形から素早く野澤に繋ぎ、宮崎が前線でつぶれながらボールを残し長谷川から逆サイドへ展開し、先程の動画の場面へと繋げた。
GKから素早く繋ぐことで相手の守備が整う前に素早い攻撃へと繋げたが、宮崎の動き出しが速いことも要因である。
遅攻が多い甲府だが、前線の動き出しが遅いことも攻撃が遅くなる要因でもある。
宮崎のようにわかりやすく動くことはビルドアップを行う後方の選手の助けにもなる。

81分にも甲府に決定機。

この場面もCKの流れから。
足元で受けていた泉澤が今度は裏を取り、新井章大と一対一となるがこのシュートも防がれる。
CKを獲得したのはまたも宮崎だが動き出しの速さだけでなく、攻撃をやり切る姿勢が甲府のカウンターに鋭さを加える。

次々にチャンスを作られる千葉は83分に見木に代えて船山を投入する。

86分には甲府が最後の交代を行う。
野津田に代えて浦上を投入し、守備を固める。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『追加点を取って2-0まで持っていくというプランは持っていました。ただあれだけロングボールが来るということ、櫻川選手、サウダーニャ選手という前にポストプレーが出来る選手がいるので、カウンターで押し込みながらもう一回ゲームをコントロールし2点目を取りに行きたいというプランはありました。そういうチャンスがあった中で決め切れなかったこと、これが要因だと思います。』

チャンスを作りながらも決めきれずにいるとアディショナルタイムにまたも悲劇が待っていた。

チャンミンギュは宮崎の上からヘディングを叩いているが、宮崎としてはより厳しく体を当てていくことが必要であっただろう。
だが、失点の原因を個人に向けることやゾーンではなくマンツーマンにすべきという以前に終盤にセットプレーを与える試合運びの拙さを改善しなくてはいけない。

試合後のチャンミンギュ選手のコメントより。

『自分のミスで相手にPKを与えてしまいましたが、その後も絶対に諦めないという気持ちで戦っていました。最後は練習どおり、チームとして練習でやってきた形、自分は当てるだけでいいような素晴らしいボールが入ってきました。』
『ゾーンの良し悪しがあると思うんですが、そのウィークポイントになるところを突いていこうという意識を共有していました。直前のセットプレーで田口泰士選手がヘディングシュートを打ったシーンがあったと思いますが、(得点できそうな)雰囲気はあったと思います。』

チャンミンギュのコメントにあるようにゾーンで守るチームにとっては良いボールが入ってくれば失点のリスクは高まる。
この直前にも質の高いボールが入っていたが、千葉の選手の質が上回ったと言える。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『我々に身長が低い選手が多いこと。セットプレーの為だけに身長の大きい選手を入れることも考えましたけど、どちらかというとカウンターで取りに行きたいと考えたので、ウィークなところでやられてしまったなと。そこを改善していくことと、5枚の交代枠をスタッフと話しながら最善の判断をしていますが、久々に一発で取られたこと、ここを改善しなくてはいけないと思います。今までのセットプレーは一発では無く、セカンドボールやニアでフリックされた後の詰めでやられているので、もう一回チームとして積み上げていくしかないと思います。そこに尽きると思います。セットプレーに関してはまだ未完成のところもあるので、選手と話しながらウィークの部分をどう消していくか、トレーニングしていきたいと思います。』

この場面はゾーンの外から勢いを持って入ってきたチャンミンギュに強く叩かれたことが失点の要因であるが、ゾーンで守る限りは致し方ない部分もある。
3試合続けてセットプレー絡みの失点を喫しているだけに、改善は必要となる。
伊藤監督はセットプレーは未完成のところもあるとコメントしているが、今シーズンはすでに26試合戦っており、中断期間もあった。
ましてや就任3シーズン目である。
まだ完成していないは通用しないのではないか。

追いつかれた甲府は小柳を前線に上げ、勝ちを目指すが千葉に決定機を与えてしまう。
ハイライトには無かったがサウダーニャが荒木を引きずりながら突破し、クロスを入れると櫻川がフリーでボールを受けトラップするがシュートは枠に飛ばず。
流し込むだけの場面を作られ、失点していてもおかしくなかったが甲府としては救われる格好となった。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『やはり1-0で勝っている状況の中でも、もう少しボールを握ることや押し込んでサッカーをすること、ボールを取られた瞬間にダイレクトプレッシャーを掛けて自分たちのボールにすることなど、ちょっとした隙を改善していかないといけないと思います。2点目を決め切るチャンスもありましたので、決めていれば勝ち点3を手繰り寄せられたかなと思います。』

試合後のウィリアン リラ選手のコメントより。

『リーグ戦の中断期間があって、われわれはあまり良くない波になっている。2試合連続でゴールを決めているが、チームの結果が一番大事。われわれは良い試合をしているがもう少し集中しないといけない。』

ちょっとした隙と共に捉えているようだが、この隙は開幕当初から持ち続けているように思う。
中断期間を経てできたものではなく、果たして改善できるものなのか。

試合後の須貝英大選手のコメントより。

『大ケガから試合に出られるようになって感謝したい。本当に治るか不安に思うこともあったが、スタメンで90分プレーできたことはうれしい。思い切ってプレーしようとしたが勝ちたかった。これからにつなげる試合にしないといけない。』

須貝の活躍はチームにとってプラスとなるだろう。
大学時代に負った大怪我から復帰を果たし、初先発を勝ち取った今節。
WBは開幕から関口と荒木が出場を続けてきた中で、2人との違いを見せ得点に絡んだ。
地元出身の選手として今後、活躍が期待される。

試合後の尹晶煥監督のコメントより。

『こういう試合で先に失点してしまうと厳しい展開になります。失点せずに主導権を握る試合をしなければいけないと思います。今日はいろいろなバリエーションやコンビネーションプレーも出たと思いますが、もう少し細かいプレーも必要になってくると思います。選手たちはとても激しい試合をしてくれたのでお疲れさまと言いたいし、しっかり休んで次の試合に備えたいと思います。』

千葉としては先制を許し、苦しい試合となったという認識のようである。
押し込んでいた時間も多くあったが、先手を取られていればより厳しい試合となっていたかもしれない。

終盤の悪夢のような失点で勝ち点2を失うこととなったが、終わってみれば負けなくて良かった試合であったのかもしれない。
共に決定力不足が今節の結果に繋がった。

4.MOM

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新井章大
今節はGKの活躍が目立った試合となった。
甲府が勝っていれば河田を選出していただろう。
新井が決定機を一つでも決められていれば甲府が勝ち点3を掴んでいた可能性は高かった。
新井の活躍で最小失点に留めたことが最後の得点に繋がった。

5.あとがき

悔しく、気持ちが折れる試合となった。
千葉にも言えることだが、チャンスで決めていれば勝っていただろう。
これで磐田との差は10に開き、中断前に4連勝で詰めた差は無くなった。
気持ちとしては昇格を諦めたくない気持ちはあるが、数字上は現実的ではないように思える。
仮に昇格ができなくても応援する気持ちは変わらず、私自身は昇格が全てではないとも思っている。
それでもまたJ1で戦う姿を見たいという思いは持っているが、上がってすぐに落ちるのもまた辛いものもある。
今はクラブの土台を作らなくてはいけない時期であり、その上で昇格を目指す難しい状況にもある。
そこを理解した上で応援しなくてはいけない。
どんな結果に終わろうともクラブが今シーズン掲げたスローガン「未来へ」繋げていかなくてはいけない。

千葉としても中断明け勝てていない。
前節ほど内容は良くなかったが、今節はいくつも決定機があった。
チャンスで決め切ることが今後勝ち点を伸ばしていくのに必要だろう。
個々の能力は高いだけに噛み合えば勝ち点を増やしていくはずだ。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
甲府も千葉も次こそは勝ちましょう!

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