J2第37節 ヴァンフォーレ甲府vsモンテディオ山形

7戦負け無しながら、2戦続けて勝てていない甲府は山形をホームに迎えての一戦となる。
攻撃陣に怪我人が増えている現状であるが、勝つしかない残り試合。
まずは山形に勝利し、次の試合へと繋げていきたい。

一方の山形は前節金沢に4-0と快勝を収めた。
2位福岡に引き分け、首位徳島には敗れるもシュート数は徳島の倍放っていた。
順位は7位とはいえ、今J2で最も強いチームの1つであることは間違いない。

前回対戦はドゥドゥが負傷退場するアクシデントもあり、1-3と完敗を喫した。

1.ハイテンション

スタメンはこちら。

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甲府は前節から5人、前回対戦からは5人変更となった。
注目はハーフナー・マイク。
9シーズンぶりに復帰したがここまで得点は取れていない。
甲府史上初の日本代表選手となった甲府のレジェンドの一人。
誰もがマイクのゴールを待ちわびている。
小瀬でマイクが得点を決める姿が見たい。

山形は前節から1人、前回対戦からは4人変更となった。
注目はヴィニシウス・アラウージョ。
ここまで12得点を挙げているが、11得点は後半戦に入り挙げている。
シーズンを折り返して以降、最もこわいアタッカーの一人となっている。

立ち上がりから強度の高いプレッシャーをかけ、テンション高く甲府が試合に入る。
キックオフの流れから荒木がプレッシャーをかけボールを奪い、松田がファールを受ける。
FKは変化をつけ、CKを獲得。
そのCKから甲府が最初のシュートを放つ。

中山のCKからこぼれ球を荒木がミドルシュート。
甲府と同様にゾーンで守る山形だが、ゾーンの隙間に中村が入り込むが惜しくも合わず。
クリアは荒木の前にこぼれるがシュートは枠の外へ。
ゾーンの隙間、セカンドボールとゾーンで守る弱点を突いた形からシュートシーンを演出した。

ハイプレッシャーで山形に自由を与えず試合を進める甲府だが、ミスから山形に最初のシュートを許す。

中塩のパスが武田に合わず、
人の配置でのミスは無く、パスがズレてしまった場面ではあるが武田に通っていれば相手のプレッシャーを回避できていた。
中塩、内田、武田、中山で菱形を形成しており、中山へのパスコースは消されているも中塩には内田と武田と選択肢は2つ持てていた。
中塩でなければ武田へのパスは出せないが、あとは通すための質を高めるだけである。
通ったことを見越して見てみると武田を中心に2つの菱形ができていることもわかる。
中村、小柳、今津で形成するものと中村、中山、マイクで形成するもの。
右サイドでは中村、松田、小柳、今津でも形成されておりピッチ上の至るところにできているのがわかる。
パスを繋いでいくためには三角形や菱形を形成し、ボールを持つ選手に複数の選択肢を与えることが必要となる。
当然ボールに持つ選手周辺だけに作ってもボールが動けば、その先でも同じようにできていなければ意味がない。
そのためにはボールが動くたびに、人が動くたびにポジション修正を行わなくてはいけない。
今の甲府はまだ考えながらポジションを取っている段階である。
似たようなサッカーを志向しているチームでは首位の徳島やJ1では横浜F・マリノスやサガン鳥栖などが挙げられる。
徳島はロドリゲス監督になって4年目のシーズンでJ2を制覇できるとこまできた。
横浜は前任のモンバエルツ監督が3年間かけて若返りを進めながら土台を作り、ポステコグルー監督2年目でJ1優勝を達成した。
鳥栖は金明輝監督がアカデミーから作りあげてきたが、監督就任2年目で形になりかけている。
アカデミーから作りあげてもすぐには結果は出ていない。
甲府も同様に時間のかかるチャレンジをしている中で終盤まで昇格の可能性を残していることは評価されるべきことである。

守備時はいつものように541でブロックを作るが、プレッシャーの強度はいつもよりも高め。
ボール保持時は433へ可変することが多かったが、今節は442に近い形を取る。

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甲府は自陣からビルドアップし、1度は失うもプレッシャーをかけたところから相手のミスを誘い決定機を迎える。

藤嶋が2つシュートストップを見せた。

この場面でも見られたが、甲府は山形のボランチとSHの間のスペースを中山と松田が活用し、相手のプレッシャーを剥がしていく。

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試合後の石丸監督のコメントより。

『中盤、相手の可変のところで、数的優位を、ボランチが相手のボランチにマークするのか、シャドウの選手、後ろの選手がマークするのかが曖昧で、前半の頭から、ボールを追い込んでいるところでも取り切れない、そういう局面の弱さが随所に今日は出ました。』

13分には甲府が連動したパス回しからシュートシーンを演出する。

スローイングをマイクに当てたところから中村、武田、内田と経由し最後は中山がシュート放った。
マイクのパフォーマンスに厳しい声もあるようだが、この場面のようにターゲットマンとして周りがサポートを速くできれば活かす方法はある。
身長の大きさが目立つ選手だが決して競り合いが得意な選手ではない。
動ける範囲が狭いことはネックとなるが、足元のパスを入れることができればポスト役として機能する。

甲府のハイプレスに対してショートパスで前進をしたい山形だが、マイク+1人(松田、武田、中村)で形成する第1列のプレッシャーラインを超えられない。

試合後の石丸監督のコメントより。

『基本的に甲府さんがやっているシステム自体に、ボランチがプレッシャーを掛けに行くところで、ギャップが開いてくるのは話していました。真ん中のスペースを活用出来ると思うので、別にこの自分たちのオーガナイズ自体はそんなに問題がなかったと思います。センターバックがもう少し運べたら、完全に相手を外す、ワントップ自体を外し切ることは可能だったのかなと思います。情報的に言うと、そこまで来ないだろうというのはちょっと選手には話してしまったところの、仕打ちを食らったかもしれないです。逆に来てくれるのは、いつも言っているようにスペースが後ろに空くということは常に共有している部分です。逆にもっと外してゴール前まで行けるかなといる思惑はあったのですが、途中で引っ掛けられる、質も、距離感も若干ちょっと、運べないというところもあって距離感が伸びたという部分はあります。』

石丸監督がコメントで述べているようにCBが運ぶことができていれば、ラインは超えることができ甲府のボランチが前に出ることで空けたスペースを突いていくことができていただろう。
しかし、山形としては想定以上の強度で甲府がプレッシャーをかけてきたことにより前線にロングボールで逃げるしか無くなってしまう。
山形としては前線に高さが無いため、ボールを収められず甲府に押し込まれる時間が続く。

山形は小松がドリブルで運ぶことで、ボランチの背後を突くパスを起点にFKを獲得する。

キッカーはヴィニシウス・アラウージョ。
ここまで見せ場を作れていないヴィニシウスだが、シュートは枠の外へ。

甲府がハイテンションを保ち、試合を優勢に進めた。

2.安定感

試合後の石丸監督のコメントより。

『ゲームの中でも前半の入りがもう今までの中で非常に悪く、そこで失点をしていたら、3点、前半でも3点取られていたのではないかというゲームでしたが、ラッキーなことに、相手のミスもあって助かって、膠着状態になりました。』

試合後の中山選手のコメントより。

『前半の立ち上がりはチームとしてプレスを掛けて良い形でプレーできたけど、飲水タイム過ぎからミスが増えた。』

飲水タイムを経て山形が息を吹き返す。
流れがいい時間に得点が取れず試合の流れを明け渡す今シーズンの課題を露呈してしまう。
徐々に山形は早いテンポでパスを繋ぎ、甲府のプレッシャーを剥がしていく。
セットプレーも連続して獲得する流れを作るも、甲府は今津を中心に決定的な場面は作らせない。

39分には松田、荒木、中村と連動してプレッシャーをかけるも山形が剥がし、チャンスを作る。

上記の石丸監督のコメントにあったようにボランチがプレッシャーを掛けに行ったところで、ギャップが開き、真ん中のスペースを活用してシュートまで持ち込んだ。

試合後の今津選手のコメントより。

『安定感はある程度あったと思いますが、サイドチェンジのボールの質や相手の守備を崩す一発があれば良かったと思います。ボールを奪ったあとの切り替えのスピード、起こしてはいけないミスや勝負どころのプレーはやっていかないといけない。そういうところは前節の京都戦でもあった。』

今津のコメントにもあるように安定感のある前半は過ごしたが、得点を奪うための課題は多く残った。

3.膠着

お互いに選手交代無く迎えた後半。
最初のチャンスは甲府。

内田からのクロスをペアルティエリア内でマイクが収める。
荒木、武田と繋ぎ、もう一度内田のクロスに中村が飛び込んだ。
マイクを活かす形から連動し、CKを獲得した。

後ろからボールを繋ぎ前進を図る甲府に対してプレッシャーをかけ、ショートカウンターを狙う山形という構図で後半は進む。

甲府はまたもマイクを起点にしたプレーからチャンスを作る。

この場面のようにマイクに収めた後いかに速くサポートできるかが重要となる。
クロスからマイクが潰れた後もしかり。
この場面では山形の選手の反応の方が勝っていた。

山形がハイプレスからショートカウンター。

中塩から中村へ通したパスだが、後ろからプレッシャーをかけられている状態でターンをしようと試みたが相手に奪われてしまった。
この場面は小柳に下げることでプレッシャーに来た小松の背後にいた松田に縦パスを通しスピードを持った攻撃を仕掛けられた。
このような細かい判断はチームとしてまだ改善の余地がある。

64分に中山とハーフナー・マイクに代えて宮崎とラファエルを投入する。
続けて山形が小松と加藤に代えて本田と末吉を投入する。

お互いに決定的な場面は作れず膠着した展開で試合は進む。

4.勝ちきるために

試合後の本田選手のコメントより。

『あの流れのときに入って、少し流れを変えなきゃいけませんでした。僕のプレースタイルとしては攻撃で流れを変えるというよりは、守備のところでしっかりボールをとって流れを変えなきゃいけない仕事ですけど、そこまでうまくいかなかったかなと。もう少し守備でハメて、高い位置でボールをとったりして自分たちの時間を増やしたかったんですけど、なかなか流れが変えられなかったなという印象です。』

最初の交代でより効果を発揮したのは甲府。

途中出場の宮崎がチャンスを作る。

中村のサイドチェンジから宮崎がドリブルで仕掛け際どいクロスを上げた。
ドゥドゥ、泉澤が不在の中ドリブルで打開できる選手は宮崎以外にいない。
宮崎も怪我明けのため長い時間の出場は厳しいかもしれないが、途中出場から切り札としてチームを活性化させたい。

75分に山形はヴィニシウスと南に代えて大槻と前川を投入する。

甲府は77分に中村に代えて山本を投入する。
これで14試合連続の出場となった。

試合終盤まで苦手とするオープンな展開にはせず試合を進める甲府だが、決定的な場面を作り出せない。
一方で山形も甲府の運動量の落ちないプレッシャーの前にシュートまで行けない展開が続く。

選手交代が機能しない山形だが、84分に渡邊に代えて中村を投入する。

クロスが増える展開となった甲府は86分に荒木に代えてメンデスを投入する。
4バックに変更し、メンデスを前線に入れる。
前線に怪我人が相次いでいる影響が大きいが、点が欲しい状況でメンデスを前線に入れる選択肢しか持てないのは非常に苦しい。

それでもパワープレーからチャンスを作る。

藤嶋の落球からラファエルのシュートは枠に飛ぶも力なくクリアされてしまう。
安定してプレーしていた藤嶋だが、ハイボールには弱さを見せた。

その後もスコアは動かずスコアレスドローに終わった。

試合後の伊藤監督のコメントより。

『ゲームの流れや作り、そういうところで勝ち点3を取れないとは思いません。しかし最後のクロスの質、ゴール前での落ち着き、ゴールネットを揺らすための足の振りや勇気、強引でもゴールネットを揺らすための動き、ここが浮き彫りになっていると思いますし、ストライカーが得点を取れていないので、勝ち切れていないゲームが続いていると思います。ストライカーで出た選手たちは結果を出すため、すごく献身的にやっていますが、落ち着いて最後のクオリティを出すというところが一番足りないところだと思います。決定率を上げるためのゴール前の落ち着きがチームとしても個人としても必要だと思います。』

試合後の今津選手のコメントより。

『僕たちは勝点3が必要な試合という中で、無失点で終えたが、何回かあったチャンスを決め切れずに厳しい。』

試合後の中山選手のコメントより。

『決定的なパスが持ち味なので、もっとボールに絡むべきだったと思います。シュートを打った場面もありましたが、決め切れなかったので練習不足です。』

勝ちきるためには得点を取らなくてはならない。
チームとしてシュートの精度だけでなく、クロスの精度やパスの質とシュートに至るまでの過程にも課題は残した。
ドゥドゥや泉澤、金園がいないから点が取れないのか。
個人に頼るサッカーからの脱却を目指しているが、まだまだ伊藤監督の目指す形は完成できていない。

5.あとがき

3戦続けて悔しい引き分けに終わってしまった。
これによりJ2優勝の可能性は無くなった。
次節にもJ1昇格の可能性が絶たれる状況まで追い込まれた。
それでもピッチで選手たちが見せたサッカーは決して悲観するような内容ではなかった。
確実に成長し、積み上げてきている。
開幕前には残留争いも覚悟しなくてはとクラブ側から発言があった中でのシーズン。
今までのサッカーとは全く異なるスタイルに挑戦し、若手も育てながら現在5位と素晴らしい結果を残している。
残りも6試合と少なくなってきたが、1つでも多く勝ち、1つでも上の順位で悔いの残らない戦いを期待したい。

MOM 野田裕喜
熊本と共に甲府を完封した。
クリア数は11と両チームトップの数を記録した。
序盤の甲府の攻勢から終盤のパワープレーまで甲府攻撃陣を抑え続けた。

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