J2第6節 ヴァンフォーレvs大宮アルディージャ

前節完敗を喫した甲府。
ホームに迎える相手は2位大宮。
こちらも前節敗戦を喫したが開幕からは4連勝。
また失点も僅かに2。
堅守で間違いなく強い相手。
前節とは違いボールを持つ時間は長くなるだろう。
その中でアグレッシブに戦いたい。

近年の対戦ではホームでは甲府が勝ち、アウェイでは勝てない。
また、ここ5年は1点差以内での試合が続いており接戦が予想される。

1.新井ロール

スタメンはこちら。

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甲府は前節と同様に3バック採用し、7人を入れ替えた。
一方の大宮は4人の入れ替え。

立ち上がり甲府にいきなり変化が見られる。
ボール保持時と非保持時の立ち位置を変えてきた。

保持時

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非保持時

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保持時の立ち位置の狙いは戸島の背後とボランチの背後。
新井を戸島の背後に侵入させ、両ボランチを1列上げる形となる。
ベティスでバルトラがこのような動きをすることからバルトラロールと呼ばれることもある動き。
甲府版は新井ロールと呼ぼう!

ここから相手をズラしていき相手のDFラインの背後の攻略あるいは両ワイドに仕掛けさせる形を作りたい。
泉澤、ドゥドゥ、バホスの良さをブロックを組む相手に対しても引き出す狙いが見える。

一方非保持時の狙い。
WBが最終ラインに吸収され5バックを形成する。
またシャドーの2人がボランチ脇に降り54でブロックを組む形となる。
甲府といえばこの形とも言える見慣れたブロックの組み方となる。

2.ボランチの最適解

J1で54ブロックで引いて守っていた時とは異なり今節の形としては昨シーズンのやり方に近く、ボランチのアグレッシブさが目についた。
本来であれば最前線のバホスから規制をかけ奪いどころを決め取りに行きたい。
しかし、バホスに常にファーストプレスを期待するのは無理がある。
そこでボランチが相手DFラインまでプレスを掛けるシーンが多々あった。
野澤、武田のコンビはチャレンジ&カバーの意識が高く前節再三使われていたボランチの背後も消すことができた。
また、相手DFラインにプレッシャーが掛けられない時には54でブロックを組みスペースを与えないやり方にシフトする。

一方攻撃面では苦労する。
大宮のハイプレスに効果的な球出しができない。
また、新たな試み新井ロールも逆に狙い所にされてしまう。
DFラインからのビルドアップが改善されれば武田、野澤のフリーランニングや攻撃陣の個の能力をより発揮できる。

武田と野澤は今節、攻撃では苦労したが、守備ではチームを引き締める役割を担った。
守備の安定感、アグレッシブさ。
攻撃のフリーランニング。
武田の大きな展開と野澤のシュートチャンスを産み出すパスワーク。
ボランチコンビの最適解は武田、野澤のイケメンコンビではないか。

3.伝家の宝刀

後半開始すぐに試合はCKから動く。

キッカーは内田ではなく藤田。
2試合連続となるCKからのアシスト。
そして3試合連続でCKから得点を奪った。

こちらが昨シーズンのセットプレーからの得点比率。
64ゴールの内15ゴールがセットプレーから。
23.44%の割合であった。

そしてこちらが今シーズンのセットプレーからの得点比率。
まだ6試合9ゴールでしかないが内5ゴールがセットプレーからとなる。
55.56%の割合と昨シーズンから飛躍的に伸びている。

金沢戦で小柳がマイクの後遅れて入る形
ヴェルディ戦で今津がゾーンで守る相手に対して遅れて勢いつけて入ってきた形
そして今節デザインされた形
キッカーの質、トレーニングからの準備、相手の分析これらがハマって得点を稼げている。
近年攻守両面でセットプレーがウィークポイントとも言えたが今シーズンはどちらも今のところストロングポイントとなっている。

4.堅守復活

先制後、明確に攻める大宮と守る甲府に分かれる。
甲府もただ引くだけでなく両ボランチを中心に相手ボールホルダーに積極的にプレッシャーを掛けていく。

試合後の伊藤監督のコメントより
「(ボランチが相手のボランチに対して前に出ていく場面やボランチがバックパスした時に対して二度追いやプレスをかける場面など)ここ数試合それを取り入れながらやっているので、今日の試合ではしっかり面を作ってボランチが出ていけたかなと思います。(武田)将平と野澤(英之)のところはハードワークして90分戦い続けてくれました。守備の締めという意味では2人は貢献度は高いと思います。 」

また、今節の甲府は両シャドーのプレスバックも速く、しっかりと帰るべき場所に戻っている。

試合後の伊藤監督のコメントより
「前節、サイドハーフの裏を取られて押し込まれた場面があったので、サイドハーフの戻る場所であったり、切り替えてプレッシャーへ行くのか、それとも早くオーガナイズを組むのか、そこの選択は選手たちが良くやってくれたと思います。特に今週はサイドハーフの(泉澤)仁とドゥドゥへは、ミーティングの中で「戻って来て欲しいところ」や「早く立ち位置を取ること」を意識してもらい、トレーニングさせました。その通りしっかり戻ってきてくれたことで、引き締まったゲームになったので素晴らしかったと思います。 」

この2つのコメントからもわかるように今節の守備は伊藤監督が狙いを持ち準備してきた形を選手がピッチで表現したと言える。
監督の狙いがハマり、前節までの課題であった2ライン間と左サイドの裏のケアにも成功。

63分に大山が入りより大宮の一方的な展開となる。
甲府のボランチの圧力もありなかなかボランチから展開できなかった大宮。
大山が捕まらない立ち位置を取り少ないタッチでボールを動かしてくる。
70分過ぎから右サイドから対角の翁長へのロングボールを増やし揺さぶりをかけてくる。

一方甲府は75分に山本を投入し野澤を1列上げより守備を固めに入る。

79分に奥抜が左サイドで仕掛けてFKを獲得。
今試合初めてゴールに向かって仕掛けたシーンではなかったか?
82分には高田も投入。
Jデビュー戦となるドリブラーの登場。
甲府のブロックを壊しにかかる。

ロングスロー、CK、流れの中から前線目掛けて放り込んでくる大宮に対して跳ね返し続ける甲府。
今シーズンの甲府はクロス対応には強さを見せる。
大宮の猛攻を凌ぎ切った甲府。
甲府といえばという堅守が復活した。

5.あとがき

今シーズン初の完封勝利。
戦前の予想通り1点を争う展開となり近年の対戦結果通りホームの甲府の勝ちとなった。
前節不甲斐ない敗戦を喫した中、メンバーを代えたとはいえ3日で守備を立て直したことは見事と言える。
ボランチの安定がチームの安定に繋がることを証明した試合でもある。
連戦が続くことから毎節武田、野澤のコンビを組むことはできない。
前節出場した中村、山田の成長がチームの躍進には必要である。
また、今節DFラインからのビルドアップ、勝っていたからとは言えDFラインが下がり過ぎてしまったことは課題として残った。
ビルドアップが得意な中塩が控えてはいるが、今節出たメンバーも含めより技術を高めていきたい。
また、全体を通して狙いを持ちアグレッシブに守れていたとは思うがDFラインが下がり過ぎてしまったことにより終盤は押し込まれ続ける展開となってしまった。
全体を高く保ち相手をゴールから遠ざける守備で逃げ切れるようになりたい。
勝ちの中に課題ありとなった試合はチームの伸び代を感じるゲームでもあった。
順位は10位とはいえ昇格圏内の2位との勝ち点差もわずか3。
勝ち点を重ねながら課題を1つずつ解決していくことが出来れば楽しみなシーズンとなる。

MOM 武田将平
野澤とのコンビで試合を引き締めた。
今節は守備面での貢献度が高かった。
スイッチを入れる役となりブロックを組んでからも背後を突かれることはなく野澤と共に2ライン間を封じ込めた。
攻撃面では前半前線に飛び出す形もいくつか見られ、チームとして安定してビルドアップがこなせるようになりボールを持てる展開となればより存在感を高めていくことだろう。

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