J2第19節 ファジアーノ岡山vsヴァンフォーレ甲府

前節首位長崎に勝ち、3連勝とした甲府。
今節はアウェイ岡山に乗り込む一戦となる。
離れていた上位3チームの背中が少しずつ見えてきたがこういう時の甲府は危険。
アウェイ岡山という難敵との対戦、油断せず勝ちきり上位追撃へ大型連勝の足掛かりとしたい。

一方の岡山は現在17位。
今回の連戦は1勝1分2敗と黒星が先行している。
18試合で15ゴールと得点数がリーグで20番目と勝ち点を伸ばさせない要因となっている。

直接対決の成績はリーグ戦では5勝3分3敗と勝ち星先行。
アウェイでも2勝3分1敗とこちらも勝ち星先行もここ3戦は勝ち無しとなっている。

1.切り替え合戦

スタメンはこちら。

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甲府は前節から9人の変更。
契約の関係で武田が出られないが野澤が脳震盪から復帰。
その中で注目は宮崎純真。
今シーズン初先発となる。
小林の怪我もあり右のWBでの先発となるが初めてのポジションであり、守備面での不安感は拭えないが献身性は元々備えている選手だけに周りがどのように動かしてあげるかが鍵となる。
得意のドリブルで積極的に仕掛ける姿勢を見せたい。

一方の岡山は5人の変更。
注目は赤嶺真吾。
今シーズン2度目の先発出場となる。
得点力に苦しんでいる岡山だが、現在エースのイヨンジェが負傷離脱中の模様。
前線からの献身的な守備や起点になる部分では、イヨンジェの代役となる働きはできるだけに得点に関わる部分で貢献できるか注目となる。

前半は岡山が風上、甲府が風下となる。
風が強いだけにいかに利用できるかが鍵となりそう。

風上を利用し長いボールを蹴り込んでくる岡山。

一方で甲府は今節も可変しながら、後ろからビルドアップして前進を狙う。
今節見られた可変は4パターン。

① 343の形を維持したまま

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② 野澤を1列下げ今津、中塩を外に出す

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③ 野澤を右SBの位置に降ろし3バックが左にスライド

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④  3バックの真ん中がボランチに上がる形で左上がり 

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④は試合終盤でメンバーも変わっていたことから①〜③で見られたことを①を例に説明したい。

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立ち位置で相手に優位に立ちたい甲府だが、岡山のハイプレスの前に正しいポジションに適切なタイミングで入れない。
マイクが孤立すると収められないからか相手ボランチを挟むような形でマイク、太田、中山が近い距離で構える。
しかし、全体的にポジションが低くDFラインと駆け引きする選手がおらず、相手にコンパクトな形を取られる。
その結果、中盤での奪い合いが増え、切り替えてはまた切り替えるという行ったり来たりの展開が増える。

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一方で相手のハイプレスを回避できた時にはポジションも取れており相手がボールを奪いにくる矢印をひっくり返せるためチャンスは作れていた。

15分の宮崎のシュートの場面はその典型例。
52秒頃より。

甲府としては切り替え合戦は望まず、落ち着いて相手を見て崩していきたかった。

2.セカンドボール

行ったり来たりの展開をより好んだのは岡山。

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甲府は前線からプレッシャーをかけるが連動できない。
そのため前線はプレッシャーには行っているが、強度が低く規制がかからないため自由に蹴られてしまう。
特にポープウィリアムのキックは厄介で、精度もキック力も高くDFラインを押し下げられる。
こういう時に武田が代わりにプレッシャーに行き、穴を作らないようにしていたが、今節は不在を感じる展開となった。
蹴られるとDFラインは下げざるを得ず、一方で中盤から前はプレッシャーに行っているためギャップが生まれ、セカンドボールの回収で後手を踏む。
また、このロングボール戦法がより機能した要因は2トップの献身性が大きい。
赤嶺、齋藤共に後方より蹴られるロングボールに対してがむしゃらに競りに行き、プレッシャーに行き、甲府DFラインに自由を与えない。

試合後の太田選手のコメントより。
『プレッシャーに行っても裏返されるところがあったんで、チームとして(プレッシャーを)掛け切れずにリズムをつかめなかったところがあった。でも、それは分かっていた部分もあったから、セカンドボールをみんなでマイボールにできていれば、ああいう展開でもこっちのペースになったのかなと思うんですけど、セカンドを拾い切れなかったところがあるかなと思います。』

試合後の有馬監督のコメントより。
『前半はしっかりと相手の嫌がる背後をついていきながら、いい距離感でセカンドボールを拾って押し込むところから入ることができた。』

試合後の伊藤監督のコメントより。
『相手のロングボールのセカンドボールっていうところで、ちょっとセカンドボールを取れない時間が前半にありました』

セカンドボールを拾えないこと、マイボール時に時間が作れないことでどんどんと押し込まれていくが、岡山の決定力に助けられる流れとなる。
しかし90分通して押し込まれ続けたわけではない。
特に前半の飲水タイム後は連動してプレッシャーに行けていた時間もあった。
この時間を長くできるかが、セカンドボール争いで後手を踏まないためには必要となる。

岡山は後半途中からパウリーニョが怪我より復帰したが、この先中盤の強度はより高まるだろう。
また、イヨンジェが戻ってくれば決定力の向上も見込める。
元々シーズン前の期待値が高かったチームだが、後半戦J2リーグを掻き回す存在となるかもしれない。

一方の甲府は対ハイプレスの課題は残ったままとなった。
セカンドボールの回収も依然として課題となる。
武田がいればなんとかなるが、1人いないだけで課題が残るようではチームとしてリーグ戦を戦いきれない。
3連勝の要因となった位置取りの速さ、ハイプレスを誰が出ても高いレベルで発揮できるようにチーム力を高めることが課題解決に繋がる。

3.希望

チームとして苦しんだ試合であったが中山、宮崎が戦力として計算が立つことを証明した試合であった。

試合後の伊藤監督のコメントより。
『先発した宮崎(純真)ですとか、途中で交代しましたが中山 陸でしたりとか、若い力の躍動感がすごく出たゲームだと。それが1つ、僕にとってみたら収穫だったと思いますし、今後も彼らに期待できるかなと思います。』

試合後伊藤監督も触れているように中山、宮崎は今後も期待できる活躍を見せた。

まずはハイライトから見ていく。

①52秒頃、②2分23秒頃より。

①の場面から見ていこう。
岡西から始まり、左サイドでビルドアップして、右の宮崎まで運びシュートを放った。
中山が絡んだのはマイクの落としを受けたところ。
降りてきて、マイクのポストプレーに絡むタイミングが見事であった。
パスがズレていなければ山田が運んで出したラストパスを中山から演出していたかもしれない。
宮崎はこの場面では左サイドのビルドアップ時に、最初から高い位置を取っていた。
攻撃を期待されWBでの起用となった中で攻撃的な姿勢を示せており、最後のシュートも打ちきる姿勢も見事であった。

続いて②の場面。
起点は相手のゴールキックを宮崎がカットしたところから。
積極的に前に出る姿勢からドリブルで運びパスを出したが合わなかった。
1度ボールを奪われるも、連動したプレッシャーからボールを奪い返し、中山がドリブルで相手をかわし、スルーパスを出した。
お互いの持ち味が出た場面となった。

中山陸は出るたびに成長が見られている。
デビュー戦となったヴェルディ戦は、ゴールに繋がるパスは出したが守備の立ち位置に戸惑い試合に入れてはいなかった。
水戸戦、琉球戦はほとんど出番は無かった。
愛媛戦では、フィジカル面での成長が見られ、ボールに触れる回数は増えたが低い位置でのプレーが多かった。
群馬戦では高いポジションを取れるようになり、攻撃に関わる回数は増えたが決定機なパスは出せなかった。
今節は上記のハイライトシーンだけでなく、前半にも太田へスルーパスを出していた。
一歩ずつ着実にJリーグの舞台でできることが増えてきた。
才能開花まであと少しだ。

そして宮崎純真。
初めてのWBでの出場とありポジション取り、プレッシャーをかけるタイミングに戸惑いが見られた。
攻撃面では自慢のスピードとドリブルは健在で十分にWBとしても戦力になる。
ドリブルや積極性は見せられた。
現状でもスーパーサブとして計算はできるが、シュートやクロスといったゴール前での精度が磨かれればよりこわい選手となり、出場時間も増えるだろう。

まだまだ連戦が続くシーズンだが、この2人はどこまで成長できるか楽しみな存在となってきた。

4.守護神

今節の主役は両GKであった。

試合後の伊藤監督のコメントより。
『評価するというよりも助けられた、今日の勝ち点1のMVPは岡西だと思う。4試合連続でゼロで抑えることは大事なこと。 』

ポープウィリアムのシュートストップシーン。
①52秒、②1分30秒頃、③2分23秒頃より。
岡西のシュートストップシーン
④2分47秒、⑤3分14秒、⑥4分8秒頃より。

まずはポープから。
①の場面。
上述のように岡山のハイプレスを回避した甲府の見事な連携から宮崎のシュートという場面。
寄せの速さ、ポジション取り、シュートを撃たれるまでの我慢、弾く場所と強さ。
シュートストップに必要な技術が詰まっていた。
寄せが遅れていたら、ポジションを誤っていたら、先に動いていたら空いている場所に流し込めていた。
また、シュートに対しては太田とマイクが詰めていただけに弾き方を間違えていても得点を奪えていただろう。
どれか1つでも欠けていたら失点していた場面である。
続いて②の場面。
この場面はポジション取りと動かなかったことによりシュートセーブに繋がった。
最後は③の場面。
こちらは寄せの速さとポジション取り。
結果として太田は追いつくのが精一杯になり、シュートはポープに防がれた。

ポープウィリアムはシュートストップだけでなく、上述のようにキックでも貢献していた。
キックの精度、キック力に加え、シュートストップの技術も高く素晴らしいGKであった。

一方で岡西はどうか。
まずは④の場面。
新井のクリアミスが後ろに流れ、赤嶺が飛び込んできた。
クリアに対しても反応せず我慢できており、そのおかげで後ろに流れてきたボールに対して反応ができた。
また、相手が飛び込んでくるので怖いと思うが、勇気を持って飛び出しセーブした。
我慢と勇気が必要なプレーであった。
続いて⑤の場面。
逆サイドから振られ、カットインされてと動かされながらもシュートに対して準備ができていた。
次に⑥の場面。
この場面は勝ち点をもぎ取ったシュートストップ。
まずクロスに対して高いポジションを取っている。
前に出れないと判断し、ポジションを取り直した。
そして折り返されたボールをヘディングされたが左手一本で防いだ。
細かなポジション取りと反応で防いだ。

河田が怪我をした当初不安に思った人も多かったのではないだろうか。
今シーズン始まる前リーグ戦での出場は2試合でいずれも4失点。
開幕戦では良いパフォーマンスを見せていたが、レギュラーとして長いシーズンやっていけるのか不安はあった。
しかし、今ではなくてはならない存在にまでなり、河田と対等にポジション争いができる。

昨年就任時の山岸範之GKコーチのコメントより。
『安定感、安心感のあるゴールキーパー育成を目指し、選手と協力し合っていきたいと思います。』

岡西自身の努力は間違いないのだが就任2年目のシーズンだが、山岸コーチとの出会いも大きかっただろう。
就任時のコメント通り、岡西は安定感も安心感も備えた守護神へと成長した。

GKが活躍する試合はつまらないと思いがちだが、1つのミスで信用を失ってしまう難しいポジションでもある。
だからこそGKで勝ち点を稼いだことを喜ぶことも必要ではないだろうか。
今節の岡西とポープウィリアムの活躍は見事な活躍であり、彼らの活躍が試合を面白くした。

5.あとがき

戦前の予想通り苦しい試合となった。
岡山のハイプレスとロングボールで押し込んでくる戦い方に、3連勝中機能していたハイプレスと位置取りが封じられ、なかなか良さを出せない試合となった。
一方でこれで4試合連続の完封となった。
それ以前は9試合連続で失点を続けていたことから考えるとプラスに捉えて良いだろう。
また、中山や宮崎も試合の中で自分の持ち味を出し勝負できる力も付いてきた。
モヤモヤ感が残る試合ではあるが5連戦最後であり、直前2試合で大きなエネルギーを使ったことを考えると及第点と言えるだろう。
1週間空いてまた5連戦がやってくるので選手、スタッフにはゆっくり休んでいただきたい。
また京都戦から上位を追いかけて行こう!

MOM 岡西宏祐
岡西の活躍なくして勝ち点は稼げなかっただろう。
セーブ数は5を数え、決定的なシュートストップもあり完封に貢献。
河田の怪我もあり今シーズン初めてレギュラーとして戦っているが河田の不在を全く感じさせない活躍を披露している。
幾度となく岡西に救われているシーズンだが今節も救われた。


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