見出し画像

J2第27節 FC町田ゼルビア戦 レビュー

中断明け白星の無いチーム同士の一戦。
どちらがきっかけを掴む試合となるか。
✳︎先日投稿させていただいたプレビューにおいてスタジアム名を間違えてしまいました。
町田サポーターの皆様申し訳ありませんでした。

1.スタメン

甲府
前節から2人を変更。
野津田と山田のボランチを代え、メンデスと中村を起用した。
メンデスはが出場停止明け、中村が19節山口戦以来の復帰となった。
新井が2年ぶりにボランチでの先発となる。
また、ベンチには三平が中村と同じく山口戦以来の復帰となった。

町田
前節と同じスタメン、ベンチ入りメンバーとなった。
同じメンバーとなったが、SBは左右を入れ替えた。
泉澤対策で奥山を当ててきた。
ベンチには昨シーズンまで甲府でプレーした太田とドゥドゥが入った。

2.繰り返し

立ち上がりからコンディションの差は明確であり、町田がボールを握る入りとなる。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『前半から入りで押し込まれていることが多かった。』

伊藤監督のコメントにもあるように立ち上がりから押し込まれる形となり、2分にはファーストシュートを町田が放つ。

甲府の泣き所である荒木の背後、メンデスの横のスペースへ吉尾が流れクロスを狙うがメンデスの足に当たる。
そのこぼれ球を高江がダイレクトでミドルを放つが、河田が反応し防ぐ。
直後のCKの流れも含め、セカンドボールへの反応や前への推進力に大きな差が見られ町田が押し込んでいく展開となる。

すると4分に町田が先制する。

可変で上がった山本が町田のプレスをいなしながら長谷川にパスをつける。
このボールを収めきれなかったところを高江に拾われ、平戸へと繋ぎ長谷川とのワンツーで抜け出す。
この際、ビルドアップのために小柳とメンデスが引いた位置にポジションを取っていたこともありライン間がポッカリと空いていることとなる。
そのため平戸のドリブルに対し、ボールへの寄せが甘く自由に右足へ持ち変える時間を許し狙いすましてシュートを打つ余裕を与えてしまう。
前回対戦と同じように立ち上がりに失点を許す。

試合後の山本英臣選手のコメントより。

『自分たちの力のなさが立ち上がりに出てしまった。』
『たらればになるが、前線から圧力を掛けたかったがワンタッチやフリックで中を使われて難しいと感じた。耐えることを選択したが、勢いを出す前にやられた。』

コンディションの差は立ち上がりから明確ではあったが、失点の要因はコンディションよりも力の無さではないか。

失点後も町田が圧倒的にボールを握り、押し込んでいく。
中島が裏へ飛び出すことで深さを作り、長谷川が自由に動き回ることでボールを引き出していく。

町田のビルドアップに対し、甲府はリラ+シャドーの選手でCBを牽制しWBが町田のSBを捕まえにいきたいが、SHが高い位置で張ることで甲府のWBが縦にスライド出来にくい状況を作る。
敵陣に入っていくと町田はSBが高い位置で幅を取る形へと変えていく。

立ち上がりから何もできなかった甲府だが、10分を過ぎた辺りから少しずつボールを持てるようになっていく。
今節も甲府は山本が中盤に上がり、泉澤をサイドに開かせる形でビルドアップを行なう。

町田はビルドアップに対して、積極的にハイプレスは掛けずブロックを敷き構えながら同数で嵌め込み牽制を掛ける。
中島と長谷川が中盤へのパスコースを消しながら立ち位置を取るため、ブロックの中にパスが通せず外回りにボールを持つ時間が多くなる。
また、平戸が高めのポジションから外を切りながら前に出てくることで甲府の左サイドへ誘導していく。

試合後の山本英臣選手のコメントより。

『すごく堅いブロックを町田が4-4で作っていて、中につければチャンスがあるかと思ったが、出すボールも受ける人もいなくて用意したものが出せなかった。』

山本のコメントにある出す人は山本自身が起点となり行おうとしていたが、受け手として中央に立ち位置を取っていた新井や中村、長谷川といった選手にボールが入る形は少なかった。

中央を経由できない甲府だが、20分近くになるとボールを動かしながら山本を中心にピッチを広く使い、町田を揺さぶっていく。
押し込む形を作ると須貝が高い位置を取り、荒木がインサイドに入る形で厚みを作る。

だが、ボールを持てるようにはなったがサイドを打開することができない。
頼みの泉澤が奥山に封じられたこともあり、町田の守備ブロックを脅かす攻撃には至らない。

試合後のランコ ポポヴィッチ監督のコメントより。

『甲府さんの一番のストロングポイントは、サイドで泉澤選手が相手を剥がして、前で数的優位を作る攻撃です。その一番のストロングを抑えることを考えていましたし、非常にマサが良い仕事をしてくれたと思っています。』

試合後の奥山政幸選手のコメントより。

『相手のストロングポイントである泉澤(仁)選手をケアすることが一番の役割でした。』

中央を消しながら左サイドへと誘導させ、泉澤に対して奥山が蓋をすることで突破を許さないことでボールを持つだけの時間が続く。

泉澤を封じられるたことで甲府はシュートが打てずに飲水タイムを迎える。
飲水タイムを経て甲府は4バックに変更する。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『気持ちの面を含めて攻撃的にする。積極的に(前に)出ていこうとすることが必要だと思った。』

前線の人数を増やすことで積極性を出していくために布陣を変更する。
この変更を機に切り替えの速さが増し、ボールを失ってもすぐに奪い返せるようになったことで町田陣地でプレーする時間は増えていくがシュートが増えていかない。
33分頃には長谷川と中村のポジションを変え、状況を打破しようと試みる。
だが、38分にワンチャンスを町田にものにされ、追加点を許す。

GKの福井まで荒木がプレスに行ったところから始まった場面。
結果としてその荒木の空けたスペースを崩されての失点となったが、前に出てプレスを掛けに行くことへのリスク管理が足りていなかった。
4バックへと変更しており、3バックと同じ感覚で守っていたのではないか。
泉澤が本来は奥山にチェックに行くべきであった。
3バック時には荒木が後方の吉尾を捨てて出て行ってもメンデスがスライドしてカバーできるが、4バックであれば中央を空けることとなるだけに外を捨てなくてはならない。
荒木が出ていくならば他の選手が埋めなくてはならなく、あるいは4バックであることを考えると荒木が出て行かないようにコントロールしなくてはいけなかった。
当然練習では4バックも試してはいると思うが、リーグ戦ではほとんどやっておらずその弊害が出る形となった。

リードを広げた町田はボールを持たれても無理には取りにいかず、スペースを消すことでミスを誘いカウンターへと出ていく。
完全に町田がゲームをコントロールする形で前半を終える。

立ち上がりの失点、リスク管理を怠っての失点と前回対戦の繰り返しのような前半となった。
セットプレーから失点を重ねてきたことも含め、悪いことは繰り返されるが良いプレーは続かない。
これが上位に付いていけなくなった要因だろう。

3.力負け

巻き返しを図らなくてはいけない甲府は後半開始から小柳と中村に代えて野津田と宮崎を投入する。
これにより立ち位置も大きく変化を加える。

新井がCBに下がり、荒木と須貝のポジションを入れ替える。
山本と野津田がボランチを組み、泉澤と宮崎がサイドに張る形となる。

すると立ち上がりいきなり効果が出る。
左に回った須貝からのクロスに交代で入った宮崎が合わせるが、枠を捉えられず。
52分にはまた左サイドからチャンスを作る。

左サイドで泉澤が相手を引きつけ、須貝のオーバーラップを活かす形でサイドを攻略していく。
前半は奥山に対し、泉澤が一人で向き合う形が多くあったが須貝がオーバーラップすることで奥山に対して2対1の状況を作る。

だが、決めきれずにいるとまたも町田がワンチャンスを活かす。

一瞬足が止まった隙を突かれる形での失点。
甲府の選手がセルフジャッジで足を止めた隙を突き、吉尾がボールを拾いドリブルで仕掛けると長谷川へ横パスを送る。
フリーで走り込んだ長谷川が足を振り抜き、点差を3点に広げる。

試合後の長谷川アーリアジャスール選手のコメントより。

『(吉尾)海夏から良いボールが来ましたし、(平戸)太貴が左サイドにいたのは見えていたのですが、そこは気持ちで決めました。個人としてもなかなか点を取れていなかったですし、結果にこだわっている中で点を取れておらず、チームとしては3点目でしたが、個人として久しぶりのゴールだったので、素直にうれしいです』

点差が開き、焦りからミスが増えゴールに迫る形が作れない。
左サイドを泉澤で引き付け、須貝がオーバーラップする形は作るがクロスが合わずにシュートを打つまでには至らない。

飲水タイム明けの70分に甲府は山本とリラに代えて山田と三平を投入する。
三平にとってはJリーグ通算300試合目の出場となった。

73分に町田は中島と平戸に代えてドゥドゥと太田を投入する。
元甲府の選手が同時に投入される。

すると76分に太田とドゥドゥが決定機を作る。
高江からパスを受けた太田が荒木を交わし、シュートを放つが河田が防ぐ。
こぼれ球にドゥドゥが反応するも河田が再び防ぎ、難を逃れる。

左サイドからクロスに持っていく形はいくつか作るが、町田の足が止まらず切り替えも甲府を上回り隙を与えないことで左サイドからのクロス以外に形を作れない。
高さもあまり無い甲府としては単純にクロスを入れるだけでなく、マイナスへのクロスやグラウンダーのボールを入れるなど目先を変えたいところだが一本調子となってしまう。
また、三平がサイドに流れたり、ボールを受けに下がったりするとゴール前に誰もいない状況も生まれてしまう。

81分に甲府は泉澤に代えてバイヤを投入する。
最後に一つ形は作ったものの泉澤としては奥山に完璧に封じられる悔しい試合となった。

83分に町田は長谷川と吉尾に代えて水本とデュークカルロスを投入する。
これにより5バックへと変更し、無失点で試合を終えることを狙う。

86分にはペナルティエリア内でのミスから町田に決定機を与える。

メンデスのパスを奪ったデュークカルロスがそのままシュートを放つとメンデスに当たりゴール方向へと向かうが枠を外れる。

得点を取らなくてはいけない甲府はボールを動かしながら攻め手を探るが、町田の出足の速さを前にチャンスを作れない。

アディショナルタイムには町田が高江に代えて安井を投入する。

最後まで足を止めず走りきった町田が完勝を収める結果となった。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『シュート、セカンドボールの反応、戻るスピード、100%を出し切る気持ちのところを含めてやっていかないといけない。』

今節の出来は勝ちに値しないものであった。
目の前の試合で100%出しきる姿を次節以降期待したい。

試合後のランコ ポポヴィッチ監督のコメントより。

『パーフェクトに近い試合だったと思います。選手たちには良くやってくれたと伝えたいです。試合開始から最後まで主導権を握れた試合でした。こういった試合を目指してきました。甲府さんも強い相手ですし、そして上に行くためにも、お互いに負けられない試合だったと思いますが、こういった試合をきっちりと勝てたことも素晴らしかったです。中断明けで勝ち星から遠ざかっていた中で、どうしても勝ち点3が欲しかったですし、結果として、相手を上回って、勝ち点3を取れたことも良かったです。』

 ポポヴィッチ監督のコメントにあるように完璧な試合であった。
中断明け勝てていなかったことも甲府よりも順位が下であったこともこの試合の出来を見ると考えられないほど今節の町田は強かった。

試合後の奥山政幸選手のコメントより。

『90分間、前からプレッシャーを掛けに行くことなど、チームとしてやりたいことを前面に出せた結果です。結果と内容ともに、望んでいたものを出せたので、非常に充実感があります』

ポポヴィッチ監督同様、内容と結果に満足できていることが伺える。
奥山自身もいいプレーができたことも大きかっただろう。

試合後の長谷川アーリアジャスール選手のコメントより。

『前節の北九州戦で逆転負けをしたことで非常に悔しい思いをしましたし、順位が近い相手に対して、どれだけできるかという意味でも今日は大事な試合でした。そういったゲームを3-0で勝てたことが非常に良かったです』

前節の悔しい逆転負けを晴らす快勝となった。
前半戦に続き、町田の思い通りの展開となり隙も見せず甲府に勝ち目は無かった。
打てる手は打ったが、単純な力負けである。

4.MOM

奥山政幸
完勝を収めたチームの中では最も地味な存在だったかもしれない。
だが、泉澤対策で右SBに起用したポポヴィッチ監督の期待に応え見事に泉澤を完封。
後半は須貝の攻撃参加から突破を許す場面も見られたが、ポポヴィッチ監督が課したタスクを最も遂行したのは奥山であっただろう。

5.あとがき

前半戦での対戦時に何もできなかったことに比べればできることは増えたかもしれないが、スコアは大きな差がついた。
山本が前節終了後に100%を出せば勝てると言っていた。
果たして100%出せた試合だったのか。
3−0で勝っていた町田の方が球際でのバトルで最後まで戦い続けていた。
ワクチン接種の関係もあり、コンディションが良くなかったことは事実としてあるだろう。
だが、それ以前の問題ではないか。
ネガティブなことは言いたくはないが、今節のような出来ではどことやっても勝てないだろう。
コンディションが悪くとも闘える選手はいるし、悪い中でもやれることはあったはずである。
また、他のチームは同じような状況でもやっている。
J1に初昇格した時もJ1に食らいつくために必死に守っていた時も闘う姿にサポーターは魅了されてきたはず。
「甲府の漢なら魂込め闘え」
この試合の不甲斐なさ、悔しさをきっかけとしてもう一度這い上がって欲しい。

町田は甲府相手にシーズンダブルとなった。
試合後ポポビッチ監督がコメントしていたように完璧な試合であった。
90分通して運動量が衰えず、最後まで走り切ったことが中断明け初勝利に繋がった。
この内容を続けていければ今後勝ち点を伸ばしていくだろう。
きっかけとできる試合だったのではないか。

悔しさが湧いてこないほどの完敗であった。
酷い試合はシーズンの中にもいくつかはやってくるもの。
8月が最悪な月であったと切り替えるしかない。
次節はもっと強い相手となるが、ホームで負けるわけにはいかない。
クラブ会員しか入場できない一戦であり声援も送れないが、手拍子等できることでチームをサポートしたい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?