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緊急事態宣言の効果はあるのか?東京都と大阪府の実効再生産数の推移を確認してみる

 緊急事態宣言、まん延防止等重点措置は、感染拡大か縮小かを表す「実効再生産数」の推移に本当に影響を与えているのだろうか。

 昨年12月から今年4月までの東京都と大阪府における実効再生産数の推移を比較してみた(グラフは東洋経済オンライン特設サイトより)。
 通常、緊急事態宣言や重点措置の実施を事実上決めてから、法律上の正式な開始まで数日間のタイムラグが生じる。
 「アナウンス効果」を重視するのであれば、「知事が政府に発動を要請したとき」や「政府が発動を決定したとき」を起点として検証した方がいいであろう。
 そして、そうした効果が実際に表れてくるかどうかは、約2週間後の数値の変化を見なければならない、ということを多くの感染症専門家が口を揃えて説明してきた。
 それを踏まえて、この実効再生産数の推移を見てみよう。

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 まず、1月の東京・大阪の実効再生産数はいずれもピークが1月10日で、その後に急減して1月16日以降は1以下の縮小期に入った。実効再生産数が減少したタイミングは、東京都が政府に緊急事態宣言を要請し、政府が宣言を行うと決定してから1週間足らずと早い。

 次に、大阪府が重点措置を要請したのは3月31日、政府が決定したのは4月1日だが、実効再生産数のピークは3月31日で、その後は減少の一途をたどっていた。減少ペースを見ても、重点措置の効果が表れるはずの4月中旬の前と後でさほど違いは見られないようにみえる。

 東京都が第三次緊急事態宣言を要請したのは4月22日で、そこを起点にしても効果が表れるタイミングは5月5日ごろになるはずだ。
 しかし、東京都の実効再生産数も、4月20日すぎから徐々に下がってきているのである。

 こうしてみると、緊急事態宣言と実効再生産数との間に、事実上の「相関関係」を見出すことも困難ではないかと思われる。
 実際、私たちは、緊急事態宣言を出していなくても、実効再生産数が低下し、感染縮小に向かう場合があることを、昨年夏に経験している。

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(2020年7月前半は、2週間近く1.5を超えた時期があった)

 昨年4月の第一次緊急事態宣言でも、東京都の実効再生産数のピークは宣言を出すかどうか全く決まっていなかった3月29日で、その後は減少に転じていた
 そして、緊急事態宣言を出した後に、実効再生産数の減少ペースが加速したということもなかった(このことは「新型コロナ対応・民間臨時調査会 調査・検証報告書」でも確認されている)。むしろ宣言の効果が表れてくるはずの4月下旬から5月上旬にかけて、一時的に実効再生産数の下げ止まり現象がみられた(大型連休明けに再び大きく減少した)。

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 もちろん、以上は、あくまでグラフを見ての暫定的な分析に過ぎない。
 また、各自、各種の感染予防策を否定する趣旨でも全くない。

 「緊急事態宣言で人の流れを減らせば感染拡大傾向に歯止めをかけられる」というのは、きちんと検証されていない素朴な信念に過ぎないのではないか。そうした政策で人為的に抑制することは可能なのか、という疑問を提起したに過ぎない。

 厳密には、緊急事態宣言やそれに関連する様々な規制・対策措置が、実効再生産数の押し下げに寄与する要因となっているのか、寄与するとしてどの程度寄与しているのか、を分析する必要があるのであろう。
 昨春の第一次緊急事態宣言も含め、専門的な観点からの詳細な分析が待たれるところだ。

 

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