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【セッションレポート】脱・働く#4 — ドラッカースクールが教えるセルフマネジメント


人々に「はたらく」を自分のものにする力を(GIVE PEOPLE THE POWER TO OWN THEIR WORK-LIFE.)をミッションに掲げるパーソルキャリア株式会社。 2020年5月7日、起業家や政策担当者など多様なイノベーター達をつなぐ「Venture Café Tokyo」と共同で、トークセッションシリーズ「脱・働く-POWER TO/THE PEOPLE-」の第4回を開催しました。

これからの時代の新しい「はたらき方」はどうあるべきか。旧来の働き方からの脱却「脱・働く」をテーマに掲げ、第4回目は「アップデート」をキーワードにトークを実施。『ドラッカー・スクールのセルフマネジメント教室 ―― Transform Your Results』の共著者であり国内の第一人者でもある稲墻聡一郎氏をお呼びして、予測不能な時代を生き抜くヒントについて語っていただきました。

◆「脱・働く-POWER TO/THE PEOPLE-」について

不確実性の時代とも称される今。技術進化や人口動態の変化により、あらゆるゲームのルールが加速度的に大きく変わりつつあります。それに伴い、社会保障制度や終身雇用など戦後期に構築された様々なシステムも「制度疲労」に直面しているように思われます。
我々はこの来るべき時代において、どのようにはたらき、生きるべきなのでしょうか?

本シリーズではその考えをもとに、様々なステークホルダーを招きながら皆さんと繰り返し対話の場を持つことを通じて「日本らしい“はたらく“のその先」について議論を深めることを狙いとします。

1. 組織中心の時代から自分の人生を舵取りする時代へ。「脱・働く」を目指して

中山氏:パーソルキャリアの中山と申します。まず、今回のセッションの意図について説明させていただきます。

これまでの日本では、「会社や組織の中で、個人として何をするか」という考え方が中心にありました。しかし、これからはもっと自由に、誰もが自分の人生を舵取りする時代になるのではないかと考えています。

そこで私たちも人材業を営む身として、より個人が活躍できる世の中にするために力を尽くしたく「GIVE PEOPLE THE POWER TO OWN THEIR WORK-LIFE.」をミッションとして策定しました。このミッションに共感してくださったのが、「Venture Café Tokyo」のみなさんです。

個の時代が訪れるなかで、私たちはどういうマインドやスキルを持つべきか、改めてこのセッションを通じ、みなさんと一緒に考えていけたらと思います。

モデレーター:この「脱・働く」トークセッションでは、パーソルキャリアさんと我々「Venture Café Tokyo」がコラボし、これからの生き方やマインドセットを徹底的に議論していきます。そして「脱・働くとはこういうことですよ」と示すだけではなく、参加していただいたみなさんと共に考える対話の場にしたいと考えています。

第4回となる今回は「ドラッカースクールが教えるセルフマネジメントのすすめ」がテーマです。ここからは「Venture Café Tokyo」ディレクターの藤田さん、ゲストの稲墻さんにバトンを回します。よろしくお願いします。

2. 今、自分に起きていることを理解する「瞬間のマネジメント」

藤田氏:「Venture Café Tokyo」でディレクターを務めている藤田と申します。大学でビジネスデザインやリーダシップをテーマに教えながら、Venture Café Tokyoでイノベーターのコミュニティをつくる仕事をしています。

私の卒業校は稲墻さんと同様、アメリカのクレアモントという場所にある大学院大学です。2004年に卒業後、スタートアップの企業などを経験し、2011年に独立。稲墻さんと「Transform LLC」を立ち上げました。

本日は稲墻さんから話してもらいつつ、随時コメントや質問を入れて進行したいと思います。では稲墻さん、よろしくお願いします。

稲墻氏:改めまして、稲墻聡一郎と申します。今日は藤田さんと「ドラッカースクールが教えるセルフマネジメント」をテーマに話しつつ、みなさんに簡単なエクササイズをしていただいて、インタラクティブに進めていければと思います。どうぞよろしくお願いします。

私は現在「Transform LLC」でセルフマネジメントのプログラムやコンサル、コーチングをベースに仕事をしており、組織やチームのマネジメントにも取り組んでいます。

キャリアはIT企業の人材開発部門からスタートしました。8年ほど会社員として過ごしながら2003年に人材開発系ベンチャー企業を立ち上げ、現場統括や役員を経験後、2011年に独立。それから約2年半語学とお金の準備をして40歳で留学し、ドラッカースクールに通い始めました。

当時私は、「誰かを何とかする・変わらせる」もしくは「環境を自分のいいように変える・整える」ことがマネジメントだと思っていました。ところがスクールでは「それはマネジメントのひとつの側面にすぎず、さらに自分自身が何を見て何を感じているか、どう行動してどんな結果を得ているのかを明確に理解できていない=セルフマネジメントができていないと、他者に対するマネジメントは成立しない」と教わったんです。

大事なのは、まず自分自身に起きていること・体験していることを自覚すること。今この「瞬間」をクリアにしないまま過去の体験や思い込みから動くと、今までと同じパターンの未来が作り出されてしまいます。

「今の自分の瞬間を明確に理解し、そこから新しい選択肢を作り出していくと、新しい行動・結果を生み出すことができる」というのがセルフマネジメントの根本的な考え方で、その重要性に気づきました。

3. 瞬間の3要素「身体感覚」「感情」「思考・ストーリー」

稲墻氏:今、自分を形作る「瞬間」には3つの要素があります。1つ目は「身体感覚」。心地よい感覚かもしれませんし、どこかが痛くてずきずきする、重たいといった不快な感覚かもしれません。2つ目は「感情」。ポジティブなものからネガティブなものまでさまざまありますが、いろんな感情が瞬間瞬間に起きては消えていっています。

3つ目は「頭の中に浮かぶ思考やストーリー」。今までの自分の経験からくる考え方や価値判断を指します。この3つの要素が自身の「今」のなかに脈々と流れ込んでいます。

これらを分解し、クリアにすることが大切です。たとえば、自分がネガティブな状態だと気づいたら、脱するために何か違うことを始めてみるといった行動ができます。自分の状況を理解することで、新たな選択肢を生み出すことができるんです。

藤田氏:自分が体験している3つの要素をきちんと観察することで、一定の道から逸れて変化をつけられるんですよね。だからこの間、稲墻さんと「これは、パワーオブザモーメント(瞬間のパワー)と言った方がいいよね」なんて話していたんですけど。

稲墻氏:ただ、「瞬間瞬間に起きていることに気づいてくださいね」と言っても案外難しかったりします。今まで気付こうとする習慣がなかったからです。そこで今日は、2つだけ「感情」に関するエクササイズをやってみましょう。まず、この3日間で自分が体験した感情を思い出して、書き出してみてください。1分時間をとります。

(1分経過)

では、今何個書けたか、チャットボックスに共有していただけますか?

(数字を読み上げる)

ご協力ありがとうございます。ほとんどの方は3個、多くて7~8個程度ですね。実は本来、自分の感情や自分に起きたことにクリアであれば、10個以上は出てくるものなんです。どれだけ自分の瞬間瞬間で起きていたことに無頓着・不感症かをわかっていただくためのエクササイズでした。

4. 感情の4象限から、パフォーマンスの上がりやすい瞬間を見つける

自分の感情がわからないと、自分の思考がどこから来ているかを分析できません。そこで、きちんと感情を理解するために、ここでは「感情の4象限」について説明します。

例えば私たちの感情は大きく「ポジティブなエネルギーをもった感情」「ネガティブなエネルギーを持った感情」に分けられると思います。さらにそのエネルギー値が高いか低いかという基準を含めると、4象限に分けられます。

この4象限の中で、自分が今どの領域にいるのかを考えてみましょう。疲労困憊でエネルギーが全くないネガティブな状態なのか、やる気があって挑戦値にあふれている状態なのか。自分の状態に気付くと「自分はどこの領域にいきたいのか」あるいは「どうやったら今の領域に留まれるのか」といったことが見えてきます。

成果やパフォーマンスの観点でいくと、一番成果が出やすいのは右上です。やる気、挑戦心があって、調和が取れている状態だと行動も前向きになります。

2番目にパフォーマンスが上がりやすいのが、左上だと言われています。これは怒り、防衛的な強いエネルギーで何かをやり切るイメージ。ただこれは、中長期的に見ると左下にいってしまうので、あくまでも「短期的にパフォーマンスが上がる可能性がある」という感じですね。

また、左上の状態、ないしは左下の状態からいきなり右上の状態にいけるかといったら、そうではありません。まず怒り・苛立ち・不安の状態から右下、自身をリラックスさせる、緩ませるを経て右上にいくと言われています。

このように自分の感情の流れを知ることができれば、いろいろ戦略が立てられます。ドラッカースクールでは自分の状態のログを1ヶ月取り続けたので、いろんな発見がありました。毎日起きたことをメモにとってアウトプットするのはすごくいいことだと思います。

藤田氏:漠然と「見る」というよりはなるべく言葉にして自分が今どういう感情なのかを掴んでいくと、成果が出やすいパターンが少しずつ見えてくるというわけですね。

稲墻氏:おっしゃる通りで、エネルギーが高いとき・リラックスしているときはアイデアが浮かんでくるので、そこから行動すると成果が出やすいといったパターンが見えてきます。逆に結果が出ないパターンもわかってくる。
藤田氏:僕も家で本を読みながらメモを取ってインプットしているときや、反対にリラックスしたりしているときって、アイデアがすごく出ますもん。それがアウトプットにつながるかといったらそうでもなくて、そのまま寝ちゃったりもするんですけど(笑)

逆に左上の状態のときは「やってやろう」と行動を起こせたりする。「右下だから成果が出やすい」と決めつけるよりは「左上と右下を比べると、自分は左上の方がエネルギーを持っているのかな」と客観的に自分を観察するとおもしろいと思います。

5. 自分の身体感覚を把握する

稲墻氏:もうひとつ、自分はどんな身体感覚を持っているのか。それをちょっと揺さぶってみたらどうなるのか、簡単に体験していただきます。

では、立ち上がれる方は立ち上がって、大きく伸びをしたり、体を動かしたりしていただけますか?その動きを少し続けると同時に、その場で足踏みやジャンプをするなど、少し大きな動きをしてみてください。

そして動く前と後、実際にどんな変化があったかをコメントしていただけますか?「目が冴える感じ、肩が軽くなった、体の力が抜けました、スッキリしました」ありがとうございます。うれしいですね。
今、軽く動いていただいたのは1分くらいですが、1分あればスッキリできますし、自分の状態を変えられます。瞬間瞬間に起きていることを把握し「今日はだるいから運動しよう」としてみると、すぐにパフォーマンスを上げられるんです。

「スッキリする」「肩が軽くなる」などはパフォーマンスに直結します。それを無視すると、今まで通りのだるさが続いてしまう。それも、まずは自分の体の状態に気づくことから始まります。

今の自分が選択肢を作り、行動を作り、最終的に結果を作るんですけど、今起きていることがわかっていないと結果も見えない、ないしは同じものになってしまう。結果を変えるためには行動を変える必要があって、行動を変えるためには選択肢を広げる・変える必要があります。そして選択肢は、今この瞬間に起きていることから広げられる。「自分が何を見て聞いて感じているのか」「どんな身体感覚・感情があるのか」「どんな過去の体験に紐づいているのか」などをクリアにすることで道を変えることができるんです。

「自分自身の瞬間に気づいていること」がセルフマネジメントの基本中の基本であり、今日の一番大きなポイント。自分自身に気づいていないと、今までの無意識の習慣・感情・行動が可能性を制限して、結果を生み出せなくなってしまいます。自分自身に気づいていることってそれだけ大事なんです。
それから「自分の望む結果をきちんとわかっているかどうか」も大切。自分が望むものが何かわかっていないと、選択肢を作っても望む結果に近づくかわかりません。

2月末にプレジデント社から出版した『ドラッカー・スクールのセルフマネジメント教室』に、より実践的な内容が入っています。Transform LLCでプログラムとしてもやっています。かなりしっかりしたセルフマネジメントを実践し、自分のものにしていくプログラムです。ご興味があればぜひご覧になってみてください。

モデレーター:私の出身校であるバブソン大学では「起業するならアクションしなさい。そのためにはいったい何をしたいのか考えることからスタートし、学びながら前に進んで行きなさい」という教えがありました。まず自分を知ることから、学びもスタートするんですね。本日は、ありがとうございました!

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次回のセッションは、『ジョブ型』は本当に解決策か?〜雇⽤システムから未来の『はたらく』を考える〜

脱・働く第7回となる 8月27日(木) 19:00–20:00 (オンライン)は、「『ジョブ型』は本当に解決策か?〜雇⽤システムから未来の『はたらく』を考える〜」をテーマにセッションを行います。ぜひお気軽にお申し込みください。


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