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見掛け倒し上等

昔っからそうだ、見た目だけでモノを買う癖がある。癖というより性質か。
そんなわたしの今までで最も高かった買い物は、車だった。その何に惹かれたかというと、ヴィジュアルと音のみ。

その車は施錠と開錠の際、フロントライトがぱちぱちっと、まるで可愛いお目々が瞬きするかのようなリズムで点滅した。ウィンカーを出すと、これまたお茶目なサウンドが鳴った。バックする時も、抜かりのない音を出した。

車種はというと、MINIだ。
今やBMW傘下であるが、元々が英国車のMINI。本当はクラシックタイプのそれに乗りたかったけど、諸事情あって現行で発売されていたものを購入したのだった。もちろん、決して安くはない。数日迷いあぐねてローンで買った。
色は赤。目が興奮するような鮮明なレッドだった。

話には聞いていたけど、メンテ代はいちいち高くついた。ガソリンはハイオクを呑み込むし、ちょっと走ればすぐ残量メーターの目盛りが減る。車検はもちろん、タイヤにも部品にもすべての消耗品に割高なお金がかかる、お目の高いワガママなお姫様のような車だった。

それでも、どうしても可愛かった。このお姫様の瞬きがいちいち堪らなかった。割高なコストを支払っても更に上回るキュートさと言っていい。実際、あの車を買って後悔したことは一度もなかった。むしろ、買ってよかったと何度も思った。白のメジャーな燃費のいい国産車が後々得なのはわかっていたけど、どうしても選べなかったのだ。



このようにわたしは車に限らず、世の中にあるすべてのプロダクトをそのようにして買ってしまう習性がある。これはおそらく不治の病だ。だけど治す気もサラサラない。

モノを買うというのは、極めて日常的な行為だ。だけどそれを見れば、その人が大事にしていることは大体わかる。価格を第一に考える人もいるだろうし、機能性やメンテの楽さが最優先の人もいるだろう。その中でわたしは、見た目を一番大事にしている。姿形の美しさやバランスはもちろんだけど、作り手の製品への美学やこだわりも大事。そこに独自性や可愛さまで加われば、ノックアウトされる確率は一層高まる。とはいえ好き放題に選べるほど裕福でもないので、結局は兼ね合いもあるのだけど。

それでもこう思う。
見掛け倒し上等だと。

見かけで選んで何が悪い。
この考え方についても、直す気などサラサラない。
だからわたしはヴィジュアルで人を好きになることに対しても、一切の否定がないのだ。(関係ないか)








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